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孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑦「軍争」篇 ~先手を取れ~

軍争篇では、

「先手を取れ!」

「風林火山だ!」

といったことが語られています。



先手を取ることで、初めて攻撃が可能になります。

先手を取るためには何をすべきなのか、知っておきましょう!



先手を取るためには

「迂を以て直と為し、患を以て利と為す」

遠回りの道を近道として、憂いごとを有利なものに変えていく

軍争とは、

「有利な態勢で戦うために、戦地に先に到達することを競う行為」

を指します。



卓球で言うなら、

「大きくバックスイングを取るために、コースを読んで先回りすることを競う行為」

です。

ここを制した人が、ドライブを打てます。



これがまぁ難しいわけです。

相手が何をしてくるか、分かっていないといけませんから。



でも、やらないといけません。

そのために使うのが、

「遠回りの道を近道に変えること」

です。



卓球用に言い換えると、

「遠いコースを狙うこと」

です。



例えば、回り込んで打てば、フォア側がガラ空きになります。

なので相手はフォア側を狙ってきます。

それを最初から見込んで、一気にフォア側に移動しましょう。

見込んでさえいれば、間に合わないはずがありません。



見た目は遠くても、頭の中の意識がフォア側にあれば、それは近道なのです。



間に合わないときは、見込めていないときです。

「あっ!フォア側に打ってきた!」

と思ってから動き始めても、時すでに遅し、万事休す、一巻の終わり、後の祭りなのです。



また、わざとどこかをガラ空きにすると、相手はそこに打ちたくなります。

それを見込むのです。



フォア側からバックサーブを出せば、バック側がガラ空きになります。

一気に回り込めますね。

見込みさえあれば、これは近道です。





さらに、

「相手のやりたいことを利用する」

という作戦もあります。





例えば、相手がフォアクロスのフリックをよく使うとき。

フォア前にナックルサーブや巻き込みの横上などを出して、ややバック側に寄って構えます。

相手は、

「よっ!待ってました!」

と、ここぞとばかりにフリックをしてきます。

フリックをしやすいサーブがフォア前に来て、しかもフォアクロスはガラ空きです。

全ての要素が揃っていますから、そりゃフリックをやりたくなります。

それを見込んで、相手が打つ瞬間に一気にフォア側に動きます。



もし、最初からフォアに居てしまうと、相手に狙いを気づかれて、バック側に打たれるかもしれません。

敢えて「ガラ空きにしておく」ことで、相手を誘導できるのです。





次にもう一つ使えるのが、

「憂いごとを有利なものに変えていくこと」

です。



自分の弱点を、むしろ利用してやるのです。



例えば、自分はバックハンドが苦手で、それが相手にバレたとします。

すると相手は、バック側に多く打ってきます。

どこに打ってくるか分かっているなら、狙えますね。

回り込んでフォアハンドで打つのです。



このように、自分の弱点すら、利用することができます。

自分の弱点がバレなければそれはそれで良いし、バレたらバレたでコース取りの判断材料にすれば良いのです。





以上のように、一見こちらの不利な状況を演出し、相手をそこに誘導する。

それを見込んで一気に動くことで、軍争を制することができるのです。



風林火山!

「分合を以て変を為す者なり。」

分散と集中を用いて臨機応変に戦う。

相手を知るために、いろいろなことを試します。

そして狙いが絞れたら、それに集中して一気に攻撃します。

このような分散と集中を巧みに使い分けていくのです。



それを表したのが、この有名な文言です。

「疾きこと風の如く、
徐なること林の如く、
侵掠すること火の如く、
動かざること山の如く、
知り難きこと陰の如く、
動くこと雷震の如し。」

風のように迅速に進撃し、
林のように静まって待機し、
火が燃え広がるように一気に侵攻し、
山のように堂々と居座り、
陰のように実態を隠し、
雷のように突然動き出す。

武田信玄でおなじみ「風林火山」です。

実は、

「風林火山陰雷」

なんです。



静かに虎視眈々と、情報を集め、狙いを定める。

そして、攻めるとなれば一気に行く。



卓球での勝負のコツも「風林火山」なのです。



「気・心・力・変」で制する!

「其の鋭気を避けて、その惰帰を撃つ。
此れ気を治むる者なり。」

敵の気力が鋭い時を避けて、気力が落ちた時を狙って攻撃する。
これが気力によって制するやり方である。

相手の気力が鋭いと、いろいろなことをやってきます。

容赦なくコースを突いてくるし、容赦なくドライブを打ってきます。

この状態で、こちらから攻めるのは難しいです。



相手の気力が落ちると、無難なことしかやってこなくなります。

コースも単調になりやすいし、繋ぎのボールも多くなります。

こうなれば、こちらから攻めるのは易しくなります。



つまり、相手の気力が鋭ければそれを落としにかかり、相手の気力が落ちれば攻めにかかれば良いのです。



では、相手の気力を落とすにはどうすれば良いでしょうか。



相手が勢いに乗っていて気力が鋭いなら、やることを変えましょう。

「勢」篇でやりましたが、勢いに乗っているときは、打つ準備がしっかりできているときです。

相手が勢いに乗っているということは、こちらのやることが相手にバレています。

コース、回転、レシーブ技術…

使っていなかったものを見せることで、相手の意識を分散させましょう。



相手が開き直っていて気力が鋭いなら、相手が勝ちを意識するのを待ちましょう。

まず大切なのは、

「同点は仕方ない」

と覚悟することです。

リードを守ろうとする保守的なプレーは、開き直っている相手にとってはカモです。

ループドライブや横回転系のレシーブなどを使って、打ちミスを誘いましょう。



それでも同点になってしまったら、仕切り直しましょう。

まずは、局面が変わったことを相手に気づかせてあげます。

間を取ったり、得点板を見たり、「同点!同点!」と言ってみたりします。

その上で、焦らずじっくり戦いましょう。

相手はもう開き直れないので、今度はこちらがリードするチャンスです。

1点を焦って、攻め急ぐ必要は無いのです。


「治を以て乱を待ち、静を以て譁を待つ。
此れ心を治むる者なり。」

整然と統率された状態で、混乱して統制を失った敵を待ち受ける。
これが心理状態によって制するやり方である。

相手が混乱して統制を失っているなら、それに乗じて得点を荒稼ぎしましょう。



相手が緊張してラケットが振れていないなら、それを利用します。

相手のドライブが入らないなら、ツッツいて打たせます。

相手が入れるだけになっているなら、コースが単調になっているはずなので、狙い打ちします。

相手がレシーブを恐る恐るやっているなら、3球目で攻撃する仕草を見せて、プレッシャーをかけます。

回り込んでバックスイングを大きく取れば、相手は「ヤバい!打たれたくない!」と思って余計にビビってくれます。



相手が攻め急いで力んでいるなら、打ちミスを誘います。

下回転か、上回転か。

フォア側か、バック側か。

より相手が打ちミスをしやすいボールを送ってあげましょう。


「近きを以て遠きを待つ。
此れ力を治むる者なり。」

戦場の近くで遠くからやってくる敵を待ち受ける。
これが戦闘力によって制するやり方である。

卓球は、基本的には前陣にいる方が有利です。

なので、相手を下げさせることを考えます。



その方法は一つ。

「左右に振り回すこと」

です。



両サイドに動かしたり、バックサイドとバックミドルに動かしたりできると、相手は下がっていきます。



こうなると、相手は中陣からドライブ、こちらは前陣でブロックをしていても、攻めているのはこちらです。

中陣からのドライブよりも、前陣でのブロックの方が、威力は高いのです。



そして、相手が下がったら、基本的にはバック側に打ちます。

中陣からのバックドライブは激ムズなので、おそらく相手は繋ぐことしかできません。

ブロックにしろ、ドライブにしろ、とりあえずバック側に打っておくのが無難です。

そして、相手の意識がバック側に寄ったときだけ、ガラ空きのフォア側に打ちます。



また、緩いボールも有効です。

中途半端に強いボールは、むしろ中陣の相手にとっては合わせやすいです。

なので、打つならしっかり打つ。

そうでないなら、緩いボールで前に落とす。

これくらいのメリハリが重要です。



下がっている相手には、こんな感じで戦います。

大事なのは、決め急がないこと。

無理せずしっかり繋いで、行けるときを選んで決めに行きましょう。


「正々の旗を邀うること無く、堂々の陣を撃つことなし。
此れ変を治むる者なり。」

整然と旗を立てて向かってくる敵には迎撃せず、堂々とした布陣の敵にも攻撃をしない。
これが変化によって制するやり方である。

相手の攻撃の態勢が整っていると、ブロックはなかなかできません。

相手の守備の態勢が整っていると、ドライブはなかなか決まりません。



こんなときに、一生懸命ブロックしようとしても、一生懸命ドライブしに行っても、いつまで経っても上手くいきません。



「なんか、ずっと同じパターンでやられちゃいますぅ!」



という人は、これをやってしまっています。



本当にすべきなのは、まず相手の態勢を崩すこと。



フォア側を狙い打たれているなら、バック側に打てばいい。

ツッツキを狙い打たれているなら、ストップやフリックをやればいい。



ブロックで待たれているなら、ドライブのコースを変えてもいいし、緩めのドライブを打ってみてもいい。



別のボールを見せることで、相手の意識を分散させてあげましょう。


⑥「虚実」篇 ~弱点を突け~【後編】
⑧「九変」篇 ~柔軟に対処しろ~【前編】
その0「孫子の兵法とは」

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