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ちゃんぽんを食べる。 2020年8月9日

 遠くからする猫の「ひじき」の鳴き声で目が覚めた。「起きろ」ということらしい。
 熱中症はすっかり治まった。
 白湯をレンジで温め(昔なら「チンして」で通じた)、食パンをトースターに1枚。焼きあがったらピーナッツバターを隅々まで塗って食べる。最近の朝の楽しみ。
 妻は合奏練習、父は散歩。今日はバスの乗務開始が早い。インスタントのコーヒーを入れ、すぐにパソコンに向かう。
 来週中に回答をお願いしている部決の連絡メールが取次から来ていた。リモートワークなのだろうか。土曜日に仕事をされているとは。感謝。
 メールの返信と仕事のスケジュール修正。

 さて、原稿でもと思っていたら、悪い癖でついついネットを見てしまう。
 ふと、ニュースで長崎原爆の日の記事に目が留まり、投下時刻の記述を見て時計に目をやると、ちょうど11時2分だった。背筋をそっと伸ばす。
 わたしには身近に被ばくをした人はいない。広島や長崎にも直接縁がないけれど、はじめて原爆の恐ろしさと、戦争の悲惨さ、理不尽さを知ったのは、小学校1年生の時、書店員だった母が買ってきてくれた「はだしのゲン」だったことを思い出した。

 そうこうしているうちに依頼が来ていたツイッターのアドレス変更処理をしなければならないことを思い出す。
 作業を始めてすぐに問題発生。設定されているメールアドレスは既に使われていない廃止したドメインのもの。確認と承認のメールがそこに送られるので、変えようがないことに気づく。
 しばらくして引き継ぐ予定のNさんから電話。「なにかツイッターで作業されていますか?」という質問。
 なぜ分かったのだろう……堂々巡りを繰り返して、ああ、先ほど新しく入力したNさんのメールアドレスあてに連絡が行ったのだと気づく。
 しかし、途中でキャンセルしたのに、連絡が行くとは。ツイッターもセキュリティにはかなり神経をとがらせているようだ。
 新たな所有者がスマホで電話認証をする(個人を特定できる状態にする)と、パスワードのリセットでメールアドレスも変更できることが判明。Nさんに処理してもらい、無事アドレスは変更できたとのこと。

 ツイッター対応で、出勤前に食事をする時間がなくなってしまった……。
 急いで風呂に入り、マイボトルに氷と冷えた麦茶を注ぎ、とりあえず空腹を満たすために(?)「パルム」を食べる。近年我が家のお気に入りのアイスで、「あずきバー」と人気を二分している。
 ネコたちと父に「行ってくるよ」と言うが返事はない。みんな寝ている。平和な証拠。
 車のドアを開けるとサウナ状態。運転席のドアを開けたまま、後部座席のドアを勢いよく5回ほど開け閉めする。こうすると中の熱気が一気に抜けて、冷房の効きも早くなる。
 一般道も首都高も空いている。ラジオの道路情報で東名は9キロの渋滞。例年の数十キロの渋滞が再びニュースになるのはいつのことだろう。

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 駐車場で担当車両の点検。天気はいいけれど、海を隔てた木更津の景色はなんとなく霞がかかっている。
 事務所の模様替えも終わり、ようやく落ち着いた感じ。どこに何があるのか自分が把握していない。行ったり来たり。
 点呼係に伝える本日の注意点は「鶴見駅付近、自転車歩行者の動向」。最近かなり気を付けているのは、乗降発進時の後方からの自転車。すぐに発進せず、確認しながら間を置くリズムを体得しようと最近トレーニングしている。自分は路線時代は普通にできていたのだろうか。
 川崎臨海周辺も今日は車が少なく走りやすい。運行するのは昨日に引き続き鶴見界隈がメイン。休日ダイヤなので比較的待機時間が長い。そして本を持ってくればよかったと後悔する。
 待機時間に時折せんべいを食べる。今晩の計画のために控えめに食べる。

 夜に一度、浮島へ戻る。気がつけばすっかりエアコンの効きがよくなっていた。運転席は三方がガラスに囲まれ、熱を持つ機器類もあるので結構暑いのだが、客席側は窓を開けていてもかなり涼しい。細かく調整。
 国道409号線の殿町付近。横断歩道の中央分離帯の退避場所に頭を抱えるようにうなだれて座っていた学生らしきジャージ姿の女性、わたしが来た道を戻るときも同じ場所でずっと地面を見つめていた。
 その姿は、ゴーギャンの名作『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』に出てくる老婆の姿とそっくりに見えた。

 本日の乗務も無事に終え、日が変わる前に車で会社を出る。首都高湾岸線を下り、大黒線から横羽線に入り東神奈川で降りる。実は昨夜もバスの仕事が終わり、たどったコースだ。
 最近始めた、寄り道をして自宅へ帰るというささやかな気分転換で、20年前、高校時代の友人たちと夜中によく通った「西海(さいかい)」という中華料理店がふと気になり、昨夜立ち寄ってみたのだ。
 昔と変わらず明かりが灯る。うれしかった。
 よし、食べて帰ろう! と思ったら、こともあろうことに小銭しか持っていなかった。
 コンビニに行き、ATMでお金を引き出そうと思ったら、なんと時間外で引き出せず。昨夜の悔しい思いを今夜こそ晴らそう、朝からずっとそのことばかり考えていたのだった。

 迎えてくれたのはたぶん昔からいた親父さんだ。もう一人の店員さんはどうだったろう。
 長崎ちゃんぽんと半チャーハンのセット、そして焼き餃子を頼んだ。この真夜中に。病み上がりのスタミナ補給と心の中で言い訳する。
 1人だけいたお客さんはすぐに店を出ていった。昔ならこの時間はもっと人がいたはずなのに。客1人の店は、テレビの音と厨房の換気扇の音だけが大きく聞こえる。なんとなく落ち着かない。

 久しぶりに目の前に置かれた長崎ちゃんぽんとチャーハンは、昔と同じ、濃すぎず優しい味がした。柔らかめで少し皮の厚い餃子もいっしょだった。
 わたしが食べ始めたら急に客が入り、テーブル席はすべて満席。昔の賑やかさに戻ってうれしくなった。そしてなにより落ち着く。
 店のテレビでニュースを見ながらふと、今日の原爆の日を思い出した。
 偶然には違いないのだけれども、長崎ちゃんぽんを食べている自分がとても不思議に思えて仕方なかった。

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