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ジョブ理論で考える星野リゾート

最近の仕事や、マーケティング部の先輩の話、ジョブ理論に関する本、マーケティングに関するノートなどから、

ジョブについて、考える重要性を実感しまして、サービスが解決しているジョブについて考える習慣を作っていきたいと考えています。

その第一弾として、今回は「星野リゾート」を取り上げたいと思います。

・目指すもの
・解決しているジョブ(WHO + 不)
・ベネフィット
・RTB (POD)

といった観点でまとめていきます。

■1. 星野リゾートが目指すもの

他の産業にはできない「世界の人たちを友人として結んでいく」という旅の魔法をかけること

以下の星野リゾートの企業情報を読むと、

100年後に旅産業は世界で最も大切な平和維持産業になっている

という仮説があると書いてあります。旅産業を通じて、世界平和に貢献していきたいという大きな野望が読み取れます。

もう少し具体的にすると、

旅を通じて、
・その国、その土地の文化や豊かさを感じる
・その場所に住んでいる人と触れ合い、友人になる
を実現することで、

世界の人たちを結び、平和な世界を作ることに貢献する

ということを目指しているのです。

だからこそ、後ほど書く内容とも被りますが、
・その土地の社員を雇う(その土地の人と触れ合うため)
・その土地の社員がコンセプトを考える(その土地の文化や豊かさを表現するため)
・その土地の職人や企業と連携する(その土地の文化や豊かさを表現するため)
などを、経営に組み込んでいるのです。

■2. 星野リゾートが解決しているジョブ

- 2-1. そもそも旅とは

星野リゾート・リート投資法人のIR情報によると、旅に関して

「旅」はいにしえより、人の心を謙虚にし、癒し、コミュニティを活性化させ、新しい発見を伴う冒険や、歴史を変える新しい気づきを私たちにもたらしてくれました

*IR情報:https://ssl4.eir-parts.net/doc/3287/ir_material_for_fiscal_ym/92381/00.pdf

といった内容が書かれています。

旅が与えてくれるものとして、

・心を謙虚にする力
・癒し
・コミュニティの活性化

が挙げられています。

- 2-2. 星野リゾートでの旅で解決するジョブ

1つ目だけ、どんなジョブを解決するのかを考えるのが難しかったのですが、2つ目以降を紐解くと、

②星野リゾートでの旅を通じて、癒しを提供する

WHO:現代社会の中で何かしらで疲弊している人
不:非日常を求めて旅行に行っても、日常(仕事、他人との繋がりなど)から完全に離れることが難しく、結局忙しい毎日から解放され身も心もリラックスできない

今の世の中、様々な情報にアクセスしやすくなったり、様々な生き方があったり、人とのつながりが便利になったりしている中で、ストレスを感じやすくなってしまっています。

それに本当の癒しを提供してくれているからこそ、人気が出ているのかなと思います。

③星野リゾートでの旅を通じて、コミュニティを活性化する

星野やリゾートは、「旅育」という発信をしています。

旅を通じて、最小単位のコミュニティである家族を活性化することも目指しているのが分かります。

そこでどんなジョブを解決しているのかを簡単にまとめると、

WHO:共働きに加えて子育てもしていて、疲弊してしまっている両親
不:
・本当に子供のためになる子育てができていない(五感を刺激することで得られる、知る喜びや学ぶ楽しさを教えられていない)
・元気に子育てをする為にも、リフレッシュするために旅行に出かけるが、常に子供と一緒にいる必要があり、上手にリフレッシュできない
・子どもを友達や自分の親に預けて、旅行に行くこともできるが、子育てを任せてしまっている罪悪感を感じてしまう

ということなのかな、と思います。

星野リゾートの旅で、子供と一緒に学びながらも、両親だけの時間を過ごしリフレッシュすることもできるので、元気な状態で子育てができるようになるのです。

■3. ベネフィット

②星野リゾートでの旅を通じて、癒しを提供する

・星野リゾートの非日常的な空間で、その場所でしか体験できない自然や文化、時間を感じることで、その場所に没頭することができる。それによって、完全に別世界に迷い込んだ気持ちになって、身も心も完全に解放されてリラックスできる。

③星野リゾートでの旅を通じて、コミュニティを活性化する

・日常と異なる環境で、様々な人と出会う旅によって、子供の五感を刺激し、「なぜ?」「どうして?」という疑問を与えることができる。そして、子供と一緒に答えを導き出すことで、子供自身が「知る喜び」「学ぶ楽しさ」を知ることができる。
・旅の中で、子供だけで旅先を楽しむ時間を設け、親は日常(子育てや、仕事など)から解放されてリフレッシュすることができる。

旅の中で、「子供と親」「親(パパとママ)だけ」「子供だけ」の時間を過ごすことで、家族というコミュニティを活性化してくれる。

■4. RTB(POD)

なぜ、星野リゾートがこれまでに述べたベネフィットを提供し、理想とする旅を実現できているか、について考えていきたいと思います。

主に以下の3つによって、実現できているのではないか、と考えます。

1. 日本の良さ「ホスピタリティ」の追求
2. その土地でしか体験できないものの提供
3. 周りの世界から隔離された空間

- 4-1. 日本の良さ「ホスピタリティ」の追求

旅を通じて、その国、その土地の文化や豊かさを感じる

を感じるためには、まず日本の文化や豊かさを感じてもらう必要があります。日本の文化や豊かさの根本にあるものは「おもてなし」という言葉に表されるように「ホスピタリティ」であると考えているようです。

そのため、星野リゾートでは、それを感じてもらうための工夫が経営に組み込まれています。

・CS調査は「成績通知表」ではなく、「毎日の健康診断」を目指して運用

顧客満足度調査(CS調査)の目的は

お客様の声をサービス水準の向上(=そのお客様の次回の滞在、あるいは未来のお客様へより良いサービスを還元提供すること)につなげること

参考記事:顧客満足度を軸としたサービス経営~星野リゾートの事例

であって、結果を査定して、それで終わりというツールではないのです。

「毎日、健康診断」として用いる=毎日、PDCAサイクルを回す

参考記事:顧客満足度を軸としたサービス経営~星野リゾートの事例

ということです。データ分析やコメントを通じて現状を把握し、提供すべき価値を検討し、その効果を検証するという、地道な積み重ねをしています。

・お客の「気づき」を集めるのが社員のミッション

そして、全体の顧客満足度を軸としたサービス経営を支えているのが、社員の働きかたになっています。

星野リゾートで働く社員のミッション=お客の「気づき」を集めること

参考記事:星野リゾートのブランディングから学ぶ!〜理論の実践とは〜

であり、CS調査だけからでは得られないような気づきを得て、サービス改善に生かしているのです。

会社全体の経営方針と、サービスと提供する社員の働き方によって、日本の「ホスピタリティ」を感じさせることができているのです。

- 4-2. その土地でしか体験できないものの提供

星野リゾートは大きく5つのブランドを提供しています。

・星のや:圧倒的非日常感に包まれる、日本発のラグジュアリーホテル
・リゾナーレ:洗練されたデザインと豊富なアクティビティをそなえる西洋型リゾート
・界:地域の魅力を再発見、心地よい和にこだわった上質な温泉旅館
・OMO:寝るだけでは終わらせない旅のテンションを上げる都市観光ホテル
・BEB:居酒屋以上旅未満仲間とルーズに過ごすホテル

これら国内外に45施設を展開する星野リゾートでは、各施設、地域に伝わるお祭りや伝統文化など、それぞれの地域魅力に触れる提案を大切にして運営しています。そういった運営によって、その土地でしか体験できないものを提供し、その土地とのつながりを生み出しているのです。

他にも一つの例ではありますが、星野リゾートが提案する「地域恩返し旅」というのがあります。

星野リゾートでは、訪れるゲストへのおもてなしとして、客室内の設えやアクティビティ体験といった形で、地元企業や伝統工芸の作家、職人の方々には、多くの協力をいただいてきたそうです。(その土地ならではの体験につながっています)

こういったお世話になった地域の方々に恩返しできるよう、地域経済の回復に貢献する取り組みを提案し、さらにその土地ならではの体験ができるようなものを用意しました。

例)

・旅のテンションをあげる都市観光ホテル「OMO7旭川」では、ご近所の美味しい逸品をホテルで出前をして楽しめるサービスを提供
・沖縄の贅沢を集めた、海岸線に沿うリゾート「星のや沖縄」では、滞在中に沖縄の文化体験を用意
・日本旅館「星のや東京」では、気軽に遠出することが難しい今、舟の上で解放的な雰囲気を楽しみながら旅気分を味わってほしいという思いから、1日1組限定で提供

- 4-3. 周りの世界から隔離された特別な空間

いくつか例をあげていきますが、

・「コンビニ」「ポスター」「テレビ」「生活用品」など日常にあるものから離れられるような空間設計
・「日常の空間」から離れて行く感覚が得られるような演出

などによって、周りの世界から隔離された特別な空間を作り上げています。

・鬼怒川

・コンビニもないくらいの場所でしたが、館内だけでもゆっくりと過ごる。
・広告のポスターも一切貼っていないので、色々な物に囚われることなく自分だけの時間が楽しる。
・現実逃避させてくれる。

参考:ユーザーの感想・考察

・トマム

・大雪原の中にそびえ立っている。
・トマム内は自然やアートに囲まれていて、別世界に来たかのようなワクワク感が感じられる。

・軽井沢

・受付:受付から宿泊部屋までは約2km離れている。受付から客室までは、「 星のや 軽井沢 」の車で移動。そのドライブは森の中を走っていき日常を忘れるための準備とした演出。
・部屋:ほとんどのホテルや旅館にある時計とテレビがない。生活感のある冷蔵庫やカップなどは隠す収納がされている。部屋の中でも非日常的な空間を演出する工夫がある。
・食事プランがない:それぞれの時間を大切にしてもらうため、時間に縛られない自由な滞在を楽しんでもらうための工夫。


■5. 最後に

今回、自分で初めてサービスが解決しているジョブを詳しく調べてみました。サービスのコンセプトや、実際に提供しているサービスを詳しく調べていき、どんなジョブを解決しているのか仮説を立てていくことによって、集めていく情報が繋がっていくような感じがしました。

星野リゾートの提供しているサービスが、つながって見えて、さらに魅力的に思えるようになりました。早く星野リゾートに行って体験してみたくなりました。

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