見出し画像

ウツと“生きる”と中国と~中国とカエルのお腹~

眠るのが怖い。
眠ると確実に悪夢を見て自分の叫び声で目が覚めるのが毎日の習慣になっている。
休んでいるのに、かえって疲れてしまうのである。

誤解のないように

ふと前回の文章を読み返して、誤解を招くかもしれないので書いておこう。

▶前回の文章
ウツと“生きる”と中国と~努力できない人間と努力の定義~
https://note.com/tabito_china/n/n4b5d084487bc

私が「うつ病」になったのは上海が悪い、と言いたいわけではない。
正直に言えば、上海での生活に対してネガティブな思いが湧くことも多い。
特に症状が本格的に発症してからは、それを上海生活のせいにしたことも一再ではない。

ただ、冷静に考えられる時はそのポジティブ、ネガティブの双方に思いを巡らせることもある。

上海での生活は、当然のことながら異文化での生活である。
その中ではどうもできない要因によるストレスやプレッシャーを感じてしまうのだが、それらを「自分が我慢する」ことで過ごしてしまった。
結果として「うつ病の種」を自分の中に植えてしまったのではないか、と考えるようになっている。

なので、ある意味「自業自得」なのである。
その自業自得の結果、「中国とは」、「上海では」、「そこで生きる人とは」、そして「そもそも生きることとは何なのか」などにより深い思考を巡らすきっかけにもなっている。

そうした内容が「これから中国でキャリアを積もう」とか思う人にとってのなんかの参考になれば幸いである。

上海でカエルのお腹を膨らませる生活に疲れる

さて、上海生活。緊張感のある生活だったように思う。
それが何かと言えば、常に「肩肘を張っていないといけない」というもの。

前回書いたように、とにかく「経済的に向上を求め続けなくてはならない」。
そのためには自分自身がデキる人間、少なくとも「デキる人間と思われ」なければならず、

「自分がイヤな思いしたら、やり返さないと舐められる」
「こういうブランドを身に付けないと他人に舐められる」
「常に自分が強いイメージを与え続けないと舐められる」
と、とことんまで「舐められる」ことに恐怖する社会なのである。

そうしないと、自分が低く評価され、経済的な成長が見込めないと考えてしまう。
とにかく人よりも強く、人を押しのけてでも自分の状況を改善させることが

「資源有限」
社会でよく言われた言葉である。
会社の資本だって有限であり、「分け前」を得られる人数は限られているということ。

そのためには自分を大きく見せなくてはいけない。

笑い話だが、履歴書の経歴なんかも、とにかく盛る。
ホントかどうかもわからないビッグプロジェクトに参加して活躍したかのような書き方をしないといけないと指導されたし、そういう履歴書を多く見てきた。

こういう状況だったので、面接などでは人材の合う合わないがわからず、試用期間でないと本格的な判断ができなかった記憶がある。

自分にはそれが、昔聞いた童話の「カエルのお腹」にしか思えなかった。
「ほら、俺のお腹のほうが大きいだろう」と常に自分を膨らませている。
そしていつか、限界が来て弾けるのではないか、と思っていた。

そもそも子供のころから「人より一歩引いていろ」、「分相応でいろ」ということを徹底して教え込まれた私としては、まさに真逆の事を求められていたわけである。

同時に、「給料で努力したかが判断される」、「結論として(どんなに結果が出ても、さらに上と比較されるため)努力していない人間と見なされる」、そして「ダメ人間、生きている価値がない存在」とのラベルが貼られる。

自分自身も「自分はダメな人間である」と信じるようになる。

そういう状況下で、同時に「優秀な人間のふりをする」、「自信ありげに“何でもできるという”」という相反する行為を同時にやることは不可能である。

でも、やらなければ認めてもらえない。
何をしても認めてもらえない生活は、やはり苦痛である。
認められないばかりか、常にネガティブなことを言われ続けなければならない。

抜け出すには、自分を大きく見せ、強く見せ、優秀な人間のふりをして、「あとは野となれ山となれ」の気持ちでいなくてはならない。

不安、緊張、恐怖。
そんなものと常に一緒にいる生活だったのだなぁ、と今になって思う。

今でも仕事ではそれが尾を引いている。
業務でポジティブな評価、簡単に言えば褒められても
「自分、そんなにデキる人間でも、優秀でもないのになぁ」
「褒められるほどの出来だったのかなぁ…」
と不安というか、後ろめたい気持ちになってしまう。

でも褒められないと褒められないで、「自分はやっぱりデキない人間なんだ」と落ち込む。

ヒジョーにめんどくさい屈折した人間になってしまった…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?