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「山の暮らしも楽じゃない」

世界一周247日目

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広場で無料のWi-Fiを発見した。

ここがツーリストに対して開けているのことが分かる。

みんなベンチに座って5ルピー(8yen)の朝のチャイを飲んでいる。もちろん手にはスマートフォン。僕も周りの人たちと同じようにチャイをすすりながら、ベンチに座って旅先でのネットを堪能して過ごした。


ここはウエスト・ベンガル(なんで東に位置するのに「west」っていうんだろう?)ダージリン。

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そう紅茶で有名な土地だ。
確かにここはインドだ。だが、今まで旅してきた「インド」という感じは全然しない。ネパールで見たような僕たち日本人ととてもよく似た顔の人たちの姿をここでも見ることができる。それにインドのガツガツした雰囲気や、人で溢れた混沌とした感じもない。どこか違う国にやって来たようにさえ感じる。

僕が泊まっている宿「HOTEL NOLING」の下にある(この宿は2階にレセプションがあるのだ)カフェのおっちゃんが僕に周辺マップをくれた。それを頼りに栄えた方向とは反対へと行ってみることにした。サブバッグにギターを抱えて、アップダウンを歩いて行く。

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すぐ真横には大きな山が。その山肌に沿うようにして家が建っている。

これはもしかしたらトレッキングなんじゃないかな?ネパールから来たばかりの僕はそんなことを思った。

山で暮らすのは大変だろうと思う。寒いし、移動も不便だろう。ここで暮らす人の気持ちとは別に、よそからやって来た僕は山の暮らしを見るのが好きだ。住居が寄せ集まったごちゃごちゃした感じや、ベランダに置かれた鉢植え。
狭い通りでビー玉をはじいて遊ぶ子供たち。ニワトリとヒヨコがせわしく餌をついばんでいる。

山道は一方通行。どこかで戻る道があればいいんだけど。来た道を戻るのはちょっと面白くないな。

「ここからぐるっと回って宿のある場所まで戻りたいんだけど、この先の道で戻れるかな?」と訊きたいのだが、微妙なニュアンスではどうも英語にしにくい。

身振り手振りでガキんちょたちに尋ねてみたが、返ってきた答えは「Can you speak english?」だった。

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地図まで見せて、なんなら地面にUターンの矢印まで描いてみせたのに、彼らは僕の質問の意図を分かってくれなかった。「戻るんなら来た道を引き返すんだよ?お兄さん、バカ?」とでも言うように。

僕とガキんちょたちの平行線をたどるやりとりを見かねた、旅人のロマンを少しは理解してくれるであろうお姉さんが「この道を一時間以上歩かないと、戻る道にはぶつからないわ」と教えてくれた。

のどかな人のいない静かな山道。
自然と鼻歌が出る。いや、ふつうに唄っている。

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「おっ!なんかいい感じの曲ができそうかも!」と途中に見つけた休憩所のようなところで思う存分大声を出して唄った。日本だったら間違いなく苦情のくるレベルで。

しばらくして、自転車に乗って学生たちがやって来た。

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最初は近くから僕のノートやらギターを面白そうに眺めているだけだった。僕がギターを貸してやると、もうそこにコミュニケーションが成立する。たぶん、僕がここでギターも持たずにぼっとしているだけだったら、彼らは素通りするだけだっただろう。ギターという楽器を持っているだけで、コミュニケーションのチャンスがぐっと広がるのはどこの国だって同じだ。彼らはたどたどしい英語を喋ったが、そんなことは関係ない。

音楽が人を繋ぐ。
平和を訴えたアーティストたちは音楽のこの可能性に懸けたのかもしれない。


彼らが去っていった後、しばらくギターを敷いていたが、歌詞もコードも思い浮かばなくなってしまったので、僕は来た道を引き返すことにした。

雲が山の間を流れ、太陽が覆い隠されてしまうと一気に寒くなった。

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チョーラスタ広場にも冷たい風が吹き抜け、バスキングのレスポンスも全然なかった。

そうだよな。こんな寒くちゃ誰も音楽なんて聴きたがらないもんなぁ…。寒い場所に来るとシャワーを浴びる気になれない。どういうわけだか、部屋に干したスイム・タオルがなかなか乾かない。

山の暮らしも楽じゃあない。
毛布を膝にかけて日記を書くと、僕はさっさとベッドに横になった。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。