「海外でバスキングすること」
世界一周133日目(11/8)
「や!」
「やっ...!!!」
「やったぁああああああ〜〜〜〜っっっ!!!」
ついに僕は念願の「アレ」を手に入れた!
そう、
インドビザ(シングル)だ。
ここまで地味に長かった...。
ラオスから戻ってきた初日には宿や航空券の手配を済ませ、
30分の時間制限つきのオンラインフォーム作成で、そのプレッシャーからパスポートの番号を間違ってフォームを作成するというやってはいけないミスをし、
インド領事館につっかえされ、
タイのビザランためにラオスまで行かなきゃいけないかもなと旅ノートとにらめっこしたり、(金曜日に提出しても一週間で戻ってきた)
パーイにショートトリップしに行ったり、
チェンマイのショッピングモールやナイトマーケットでしぶとくバスキングしたり、
クソ長い、それでいて充実した12日間だった。
さてと、残すは漫画を描いてしまうことだ。
今のところ「一カ国1短編ルール」は達成できている。タイへの入国は2回目だけど、前回は東側を攻めた。今回はチェンマイメインだからもう一短編描いてしまいたいところだ。それに描かないと上手くならないし、描かないでいるとなまるからね!「一日三日分」ですよね?細美さん?
本来だったら毎日でも描いた方がいいんだろうけどそれだと旅は楽しめない。「旅する漫画家」はバランスが大事だ。どんなに拙い漫画であっても一作品完成させるごとにちょっとずつレベルが上がっているのが分かる。前回うまくできなかったことが今回はちょっとだけできるようになっている。作業環境も大事だけど、やっぱり続けること。
僕はゲストハウスのテーブルを占有状態で(もちろん他の人が使うときはスペース空けますよ?)漫画の製作にあたった。
日が傾き自然光が少なくなってくると僕はいつものショッピングモールへギターを抱えて向かった。
昨日気づいたらいつも財布の中に入れているピックがなくなっていた。
ここではピック一枚30バーツ(94yen)。一食分の値段だ。
「マーフィーの法則」(って知ってる?)ならぬ「シミの法則」で言わせてもらえば、「大事な物ほどなくなりやすい。どうでもいいものほどしぶとく残っている」と法則に当てはめる事ができる。
お財布のコインを入れる部分には他にも、輪ゴム(露店でよく手に入る)やパックセーフについてきた南京錠の鍵(ほかにもストックが2コある)圧縮袋の口を縛るためのプラスチック(これもストックがある)が入っている。こういう物はまずなくならない。失くすまいと気をつけていてもある日突然、神隠しにでも会ったように姿を消してしまうのだからトンネルの向こうがわに行ってしまったのだと考えざる得ない。きっと二等頭のイカツい湯婆婆に「仕事をください!」と言ってるに違いないのだ。
ショッピングモールに入っている楽器屋さんで、弦とピックを2枚購入し、僕はいつもの場所でギターケースを置いて歌い始めた。ここで歌うのは通算4回目だ。ここは人通りもあるし、車の走行音に邪魔されずに歌う事ができる。同じ場所でやることためらいがないわけではない。
それなりに稼げているのは外国人としての物珍しさ的なアドバンテージとタイの人たちの優しさがあるから。でも同じ曲ばかりやっていたら飽きられてしまうだろう。持ち歌を増やしたいところだが、練習をしなければいけない。だが、今の僕にはそんな時間はない。ここで歌うことはチャンスでもある。この後の旅でこんなにもレスポンスがもらえる事はないだろう。音楽をかじった僕みたいな素人が路上で歌ってお金を稼ぐことに対して葛藤がないわけではない。こんなことしていいのだろうか?じゃあ反対にお金を稼いでいい人はどんな人だ?
バスキング(路上パフォーマス)を始めたばかりの僕は「お金をもらうこと」に対してあれこれ考える。では変に気遣ったり、自分を卑下して何もせずにいたら何もできない人間になってしまう。「やる」か「やらないか」で言ったら、やったほうがいいに決まってる。迷う前に行動!ダメだったらその時に修正!
『僕は飽きられていないか?』一体このショッピングモールに毎日どれだけの人が訪れるのだろうか?リピーターの人は一週間のうちに何回ここへ足を運ぶのだろうか?そんなことを考えながら僕なりにゆったりと歌い上げる。持ち歌の数が少ないなら歌い方でアレンジしないとな。
声だけは丈夫だと思っている。前日に大声を出し過ぎてちょっとくらい喉が枯れていても寝て起きればたいていは回復している。とうのも中学校、高校と「シャウト系の部活」に僕は所属していたからだ。
中学校の時の卓球部は名前から想像できないかなりの体育会系。技術もさることながら声で相手を圧倒することが求められた。ほら、卓球の女子選手が得点を決めると「サァーーーーッッッ!!!」って言うように。
入部前に校庭のすみっこで校歌をシャウトさせられた笑。そんな部活だった。そんな中学時代の部活体験からか、高校でハンドボール部に入部した僕は大声は「出さなくちゃいけないもの」ではなく「出すもの」 になっていた(ただしキー高め)。
何度も何度も声を枯らしたことによって、喉が鍛えられたのだろうか?お酒の飲み過ぎや風邪を引いた時くらいにしか(その時は悲惨も悲惨なんだけど)声は枯れないようになっていた。前日、ソンテウやバイクの走行音にもめげず3時間くらい歌ったのにも関わらず、特に問題なく歌うことができている。
今日のバスキングもそれなりのレスポンスを得る事ができた。向かいの雑貨屋のおばちゃんが「明日も来るでしょ?私の娘連れてくるわ♪日本語を勉強しているの」と言ってくれた。
ギターの後にはハーモニカで簡単な曲を数曲と即興をやることにしている。
今日はお父さんに連れられたガキんちょが食い入るように見てくれたのでそれに応えようと必殺「ハーモニカ・ダンス」を披露する。瞬きひとつしないでお父さんにだっこされたままコインをギターケースに入れてくれた。僕はハーモニカを口に加えて両手てを合わせて「コップンカー(ありがとう)!」と言った瞬間、
「ガシャン!!!」
口に加えていたハーモニカが落下した。
壊れていないかチェックしてみると7ホール目を吹き込んでも音が出ない...。僕は3時間のパフォーマンスを終了して急いで楽器屋さんに持っていたが、お店のあんちゃんはハーモニカの修理の仕方なんて知らなかった。
この旅始まって以来のアガリと壊れた28ドルのハーモニカ。
僕の旅なんてそんなもん。
レスポンスをくれた人には感謝を。
一発で壊れたハーモニカには呪いを。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。