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「出会った人の分だけストーリーが生まれる」

世界一周278日目(4/2)

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「今日中に完成させる!」

漫画製作4日目。寝不足だ…。
だいたいは深夜2時過ぎまで僕はみんな寝静まった共有スペースで一人でパソコンをいじっている。こんなに毎日毎日日記書いたり、毎日日記を書いているのは
なんのためなんだろう?そんなことを思わなくもない。

かといって、いっつもパソコンを広げてるわけではない。宿に泊まっている人たちの話を聞かせていただく時だってある。昨日はカメラや電子機器を一切持たずにインドを旅している強者のお兄さんのお話を夜遅くまで聞かせてもらた。

「いやぁ、インドでiPhone使えるなんて知らなくてさー」と面倒くさそうに言うお兄さんの旅は、それはそれで面白そうに思えた。新しい駅に着いた時はとりあえず笑うらしい。「どこだよここ?」って(笑)。まぁ、そうなりますよね。

スマートフォンの登場以来、情報収集がかなり楽になったことは間違いないだろう。僕もiPhoneやパソコンなしで旅をすることを想像すると、そうとう苦労すると思う。「地球の歩き方」やクチコミ情報が大事になり、ネット屋を探してヒーヒー言ってるはずだ。時代や技術は進んでいくものだし、こういう「もしも」を想像するとは意味をなさないけど、iPhoneやパソコンを持たずに旅をしている人を見ると、彼らの旅はめちゃくちゃ刺激的だと思えることが多い。文字通り毎日が冒険だ。

先日ガンジス川で一緒に沐浴したユウイチさんは、カメラはいいものを持っていたが、iPhoneやパソコンは一切持っていなかった。「高校生の時にバイクで日本を旅した時の経験が忘れられないんだよ」と彼は言った。だこそ、旅には必要最低限の物しか持っていかないユウイチさんはそう言っていた。自分のスタンスをしっかり持った旅は僕にはとてもかっこよく思えた。

情報が手に入り過ぎてしまうと旅の鮮度は損なわれてしまう。情報を集めなくては得ることのできない素晴らしい経験もあるし、治安の悪い場所ではもちろん情報収集は不可欠になる。

どういうスタンスで旅をするか?
旅の哲学は僕の中でまだまだ続きそうだ。

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ボヤボヤする頭を抱えてモナリザ・カフェでクロワッサンを買って、作業場所にしているカフェへと向かった。

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ここのカフェには看板がない。

「ここのカフェってなんて名前なんですか?」と僕が尋ねると、お店のおっちゃんは「ナイス・カフェさ!」と言った。色々なカフェを追い出され、最終的に辿り着いたこのカフェ。名前も最高じゃねえかっ!

めちゃめちゃ熱い、20ルピーのブラックコーヒーをお供に、僕は漫画を描き始めた。

背景は昨日の続きからだったので、すぐに終わったが、例のごとくベタの果てしなさに心が折れそうだった。マジでベタだけはパソコン編集でやりたいよ…。ソフトもペンタブもなにも持ってないけど…。

漫画を完成させた僕は、モナリザカフェでチョコクロワッサンをほおばった。
甘い物が疲れた脳みそに染み渡る。ここのスタッフたちは僕が漫画を描いていることを知っている。お店にお客さんが半分以上いる時はスタッフの若いヤツが入店拒否をかましてくるが(マジウゼェ。もう使ってねえし)、ヒマな時は店頭にいるおじちゃんが「3時間でも4時間でもいていいぞ!」と声をかけてくれる。もうここで漫画を漫画を描くこともないだろう。たぶんモナリザ・カフェで飼っている狸のようなワンコは、どういうわけだか今日は撫でさせてくれた。


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漫画道具が入った手提げ袋を持って相撲のお兄さんたちがパフォーマンスを行ういつものガートへ。

ガート前の階段には僕と同じ宿に泊まっている人たちの姿を3人ほどみかけた。「メインガートの近くで相撲が見られるんですよ!」と宣伝をしてきたのだ。
だが、いつもは16:00過ぎには相撲が始まるのに、今日は30分以上待ってもお兄さんたちはやってこなかった。もしかして、今日はないのかなぁ?いやいや、昨日フナカワさんに会ったとき、列車のチケットがとれずにバラナシの滞在が延びたから明日もやるよと言っていたのだ。宿の人たちに宣伝してしまったので、少し気まずい。

「ちょっと向こうの方見てきますね」僕はそう言って、ガンジス川の上流の方へと相撲のお兄さんたちを探しに行った。途中声をかけてくるインド人たちに「「すぅ~~もぉ~~!!」って日本人三人組、どこいるか知ってる?」と声をかけるも、今日は誰も彼らの姿を見かけていないようだった。

半ば諦めかけた時、少し前の方から見慣れた姿が、

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「日本人?あそこにいるヤツらか?」

「あ!あれだよ!」

お兄さんの一人が僕に手を振る。

僕は宿の人たちにこのことを伝えようと足早に戻ったのだが、ガート前の階段には宿の人たちの姿は見られなかった。あちゃ~…帰っちゃったか。

いつもパフォーマンスをやっている場所は何かの設営が行われていた。そのため、相撲兄さんたちはさらに隣りのガートに移動してパフォーマンスをしなければならなかった。果たして人は集まるのだろうか?なんたって今日が正真正銘、最後の最後の取り組みだからだ。


それは杞憂だった。

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パフォーマンスが始まるとすぐに人垣ができ、お兄さんたちは役になり切った。まるでこれから神聖な儀式が始まるような気さえした。

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僕は今回もカメラマンを頼まれたので、iPhone4Sと5Sを片手に階段の上の方から撮影に臨んだ。

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なんだかんだで3回もお兄さんたちのパフォーマンスを見ているけど、今回はかなり白熱した取り組みだったと思う。飛び入り参加のインド人のお兄さんが体格の強いヤツで、なかなか決着がつかなかった。

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お兄さんたちは取り組みが終わった後、舞台挨拶の様に周りのインド人に閉幕の挨拶をした。

「これでインドで尻相撲が流行ったら面白いですね(笑)」

「今度バラナシ来た時に相撲やってたらビビるよ」

iPhoneをお兄さんたちに返して、僕は周りの観客と同じように階段に座り、しばらくぼっとお兄さんたちの後片付けを眺めていた。

ここで子供たちがどんなふうにして遊んでいるのかというと凧上げやクリケットとかそんなのだ。

「子供は飽きっぽいからね」とフナカワさんは言ったが、連日尻相撲のパフォーマンスを行い、ここで何かのムーブメントが起こったらそれはすげえことなんだと思う。

「じゃあ、そろそろ僕行きますね」

「うん。ありがとね」

「ありがとぉ~!」

満面の笑みを浮かべながら手を振るお兄さんたちの姿は僕を嬉しい気持ちにさせてくれた。

そんな風にして、僕は三人の尻相撲取りと別れを告げた。

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そのままの足で「ソナの何でも屋」にできたばかりの漫画を見せに行った。

いつものように向かいにある本屋ではキューさんとアカシが座ってお喋りをしていた。

「Is this me? very nice!!!」

「うわぁ~!これ超凄いね~!私、お母さんに漫画デビューしちゃった!てメールするわ!」

僕が完成原稿を見せると二人はとても喜んでくれた。キューさんは完成した原稿を一枚一枚iPhoneで撮影した。

帰ってきたソナさんに見せると言う。

僕の絵のレベルはまだまだだ。売り物になるまでにはもっと描かなければならないだろう。できたばかりの原稿に満足することなんてない。でも、やっぱり、こういうレスポンスがあると嬉しいのだ♪

「じゃ、続編もよろしく!」

「え…!!?まぁー、いつか(笑)」

思わず苦笑いしてしまう僕。どういうわけだか、僕よりも漫画のイメージができているキューさん。

応援してくれる誰かが想像する僕の未来。
旅する漫画家は僕だけのものじゃないのかもしれない。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。