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「人間交差点。ニューデリー」

世界一周284日目(4/8)

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日本人宿にいるとまったりと過ごしてしまうものなのだろう。

同じドミトリーのリュウさんはカザフスタンのビザ待ちのため、ここを動けないとい言う。コウスケさんに至ってはインドの時間軸の中で生活しているような気さえする。

「今日は何する予定なんですか?」

「なにしょっかな?分からん」

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ここはインドの旅、最終目的地ニュー・デリー。泊まっている宿は日本人宿サンタナだ。

僕はインド最後仕入れをしにコンノートプレイスへリュウさんと一緒に向かった。メインバザールから700メートルほどの距離だ。

リュウさんはサイクルリキシャーが二人で10ルピーだったら乗ろうと駅前のおっちゃんたちに声をかけていったが、どの漕ぎ手も一人20ルピーだった。「自己主張の強いヤツばかりだ」というリュウさん。

「3年前は10ルピーで行けたんだけどね」

リュウさんは三年前もインドを訪れたという。メインバザールは2011年に道路の幅を広げるために大規模な工事が行われたらしい。よく見るとノックアップ・ストームに削り取られたような建物がいくつか目についた。二人で10分ほどかけてコンノートプレイスまで歩く。

リュウさんはインドの秋葉原と呼ばれる電化製品街にメトロで行くらしい。ここでリュウさんと別れた。

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「Khadi」というインド・オリジナルのブランドを知ったのは、昨日の片手間の雑貨屋(本職はマッサージ屋)チャコ姉さんから教えてもらったからだ。値段も手頃で、インドらしからぬお洒落な感じが出ている。チャコ姉さんはバスタオルと一緒に売ると言ってた。チャコ姉さんに会わなかったら石けんを仕入れようななんて考えは浮かばなかったと思う。旅する雑貨屋がまた少し雑貨屋っぽくなってきたわけだ♪

店内は日本で言う「無印良品」のようなさっぱりとした清潔感を持っていた。調理に使う香辛料やシナモンも売っていれば、コスメティックもそろっている。僕は石けんを10個ほど仕入れたほか、ダスターとハンドタオルを仕入れた。

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コンノートプレイスで何やら炊き出しのような物がやっていた。
インド人の列に僕も加わってみた。

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プレートにカレーとプーリー、ちょっと甘いツブツブした物の三点にありつくことができた。何のお祭りなんだろうか?

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ちゃっかり横入りしてきたロシア人のカップルは僕が日本人だということを知ると「カワイイ~!」と知っている日本語を披露してくれた。えっと、僕の知っているロシア語ってなんだっけー?

そう考えているうちに二人はどこかへ言ってしまい、僕がようやく思い出したロシア語は「フクスナ(おいしい)」だけだった。



僕は宿に戻ると仕入れをまとめ始めた。

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今回の仕入れ量は今までとはわけが違った。4箱にもなるシーシャ、50組以上のスターライトカバー、かさばる布系も何点かある。5袋にまとめるのが限界だった僕はどうしようか考えた。郵便局までこの仕入れを持っていくのは骨が折れるぞ…。だが、待てよ!幸いこのドミトリーに貴重なヒマ人人材が2人。

「あの、今から郵便局に行くんですけど、手伝ってくれませんか?マンゴージュースが美味しいところがあるんで、それバイト代で!」

「あぁ、全然構わんで」

昨日サンタナにやってきた、ケンジくんにも手伝ってもらい、三人で仕入れを一階のレセプション前まで持っていた。

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「パーセル?」

噛みタバコを口に含んでモゴモゴしながら、ここのスタッフであるスワラジ(「ジ」は敬称)が尋ねてきた?

「あぁ、今から日本に送るんだよ」

「今日はガバメントの休日で郵便局は休みだ!カレンダーを見ろ!」

そう言われてカレンダーを見ると確かに赤い線で「8」と書かれていた。

「えっ!そんなの知らないよ!じゃあ明日は?」

「明日は選挙でお休みだ!」

ちょー…と
待て待て待て待てぇええええい!!!!

おれ、あさっての朝イチにメトロで空港まで行くんだぞ!今日、明日で郵送できないと死ぬ…。

「ど、ど、ど~~~したらいいんすかぁああああ!!!??」

「落ち着くんだ!個人経営のカーゴだったら大丈夫だ!」

「そ、そ、そ、それってどこにあるんですかぁああ~~~!!!」

あたふたしていたら、激近にありました(笑)

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サンタナから徒歩4分。これ… 一人で行けたかもぉ….。

郵送屋の兄さんは「よくきたね!」と言うように僕を出迎えてくれた。お店の壁に貼られた料金チャートを指でなぞって、いくらかかるか教えてくれる。国ごとに料金は異なり、ひとつの荷物に対して1,200円ほどかかる。それに1kgにつき232ルピー(393円)が加算されるのだ。

お兄さんは大きめの段ボールを持ってきたが、今回の仕入れはおさまりそうにない。それでも隙間なく箱に詰める様子は潔癖症で整頓好きの女のコのようだった。

できあがった箱はふたつ。
ひとつめの箱の気になる重さは…。

「13,05」

「え~と、13kg半ね~」

としらじらしくお兄さんが言う。

「待て待て!ってこれどう見ても13kgだろ?なんで13Kg半なんだよ!」

「いやいや13kg半っしょ!これから布でくるむんだ。13kg半!」

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よくわからないお店の決まりを並べやがって、食い下がる郵送屋の兄さん。

結局仕入れは2つに分けて日本に送ることに。

しかももう片方の仕入れにも「500g」加算されてしまった。お願いするところろをミスった感がハンパない。

総重量は16kgちょっと。郵送費は5490ルピー(9,309yen)。

あははは…。パねえ。

「さ、さあ!マンゴージュース飲みに行きましょう(かすれ声)」

メインバザールから折れ込むように曲がった道に続くローカルバザール。

そこにあるマンゴージュース屋さんは一杯15ルピー。大ジョッキだと20ルピーのはずだったのに、なぜかこの時は一杯10ルピーだった。うん、15ルピー浮いた。あはは。

宿に戻ると宿のスタッフさんにあの送料は適正価格だったのでしょうか?と尋ねてみた。

「だいたい6千円ちょとじゃないですか?」

はうっっっっ…!!!

「や、でも、16キロですよね?もしかしたらそのくらいかかる…かも?」

コーンノートプレイスでバスキングすれば少しは稼げたかもしれないのに!何でこんな時に限ってギターが手元にないんだ!!?明日修理から戻ってくるマイ・ギター!うう…。旅が続けられないかも…。



「あれ?」

思わぬ大出費に意気消沈していた僕に声をかけてきたのは、バラナシでお会いしたメヘンディ(ヘナ)・アーティストのMASUさん。

「あれ!MASUさん!ここに泊まってるんですか?」

「違うよー。てか今日バラナシ行くし。ねえねえ、それより、アツシくんって知らない?ロン毛のイケメンなんだけど!」

「いや、知りませんね。探してきましょうか?」

サンタナ・デリーはバラナシのように広い共有スペースがない。みんなが顔を合わせる機会は少ないのだ。僕も他の部屋に誰が泊まっているかは分からない。

「アツシさ~~ん」

少し大きな声で名前を呼ぶとすぐに返事が返ってきた。

「あ!は~い!」

出てきたのはノッポさんのような帽子をかぶり、僕より長くてお洒落にカールした髪の毛のお兄さんだった。二階の喫煙スペースでしばらくまったりしていると、アツシさんから「漫画家さーん。MASUさんが読んでますよ?」と声がかかった。

「私、7時の列車に乗ってバラナシに行くんだけど、それまでヒマなんだよね。だからそれまでどっか遊びに行こう」

ぎゃ、逆ナン!
い、いや、や、ったよ!お母さん!
僕も素敵ロン毛お兄さんの仲間入りだよぉおおお!!!


僕が心の中で有頂天になっているとMASUさんはそれを見透かしたかのように「アツシくんが私にとってどストレートなもんだからさ、逆に誘いずらいんだよね」と言った。

「ロン毛男子は神!」と断言するくらいのロン毛フェチのMASUさん。ふふ…。わかってマスよ。どうせ僕なんて都合のいい男なんですよね?
外のチャイ屋でヒマそうにしていた同じドミトリーにいる大学生の男の子も誘ってメインバザールを見下ろせる「CULUB INDIA」というカフェでソフトドリンクをすすった。

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旅の中で出会う日本人の話は面白い。その人の生い立ちや職業なんて訊かせてもらうと、こんな生き方もあるのかと感心するし、その度にインドという国の持つ面白さを噛みしめている。たとえ同じ場所に訪れていたとしても、その人にはその人のインドがある。

飛行機でラダックに行ってきたというMASUさんの話は面白かったし、やっぱりデリー入りした大学生たちは面白いようにボられている。やはり、インドはいつ来たって「出会いの地」なのだ。僕にとっては。

トータルで3ヶ月半に及びインドを旅してきた。その中で出会った人たちをメインバザールを見下ろせるカフェのテーブルで風に吹かれながら思い出していた。


「あッ!何あれ!行ってみようよ!」

MASUさんが言う。

メインバザールでは音楽と共にパレードのようなものが行われていた。

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「明日、あさっては選挙らしいですよ。夜8時以降は外出禁止だって言ってました」

「えっ!!?おれ明日の早朝出発なんだけど」

「大統領選挙だとか」

「マジっすか!!??」

ここにきてまさかの展開!無事インドを出国することができるのか!!??
待て!次回!


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。