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「旅する漫画家のエレバンでの一日」

世界一周305日目(4/29)

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アラームもかけていなので、二度寝から目覚めたあともしばらくの間ベッドの中でグズグズしていた。iPhoneのホームボタンを押して時刻を確認すると10:00。お寝坊ねぼすけ。シミズヨウスケ。そろそろ活動しよう。

と言っても、僕は観光に興味のあるヤツじゃない。世界各地の観光名所を訪れたい人なら今頃エレバン周辺の観光地はもう全部制覇しちゃって、『アルメニア物価も安いし、もうちょっとのんびりしようか?いつも外食だとあれだし、自炊でもする?』なんて言い出す頃だろう。

もしかしたら近所のボーリング屋さんでアルメニアの女のコといちゃいちゃしている頃かもしれない!くっそ!日本人ってだけでモテたりするからな!(特定の誰かをディスっているわけではありません)

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対する僕はというと、宿のばあちゃんや孫のアランとカルロスに(情報ノートには「ひまご」って書いてあったけど)「グッモーニン」と挨拶をして顔を洗う。いつものようにアランが僕の顔を見て発する言葉は「シミ、スケート?」だ。こんな幸せなスケートボードがあるだろうか?ってそう思うよ。

アルメニアでここ数日毎日ガキんちょたちに乗り回されているのはオーストラリア産のちいさなスケートボード、Penny Boardだ。日本で12,600円。僕の大好きなブルー。買った時はウィールが赤でスーパーマンみたいな色の組み合わせだったけど、日本を出発する直前に黒いウィールに買い直した。べアリングもPenny Boardの純正の物だ。

最初アランたち貸した時はいつぞや壊されるのかと半ば諦めていたけど、そんな簡単に壊れるようなシロモノじゃない。二回目以降はアランたちにPennyを貸しっぱなしにして僕は外に出かけるようになった。

ガキんちょたちにスケボーで遊ぶ一方、僕は小銭入れだけ持ってエレバン駅の目の前にある朝市へと出かける。自炊をするのはめんどくさい。だからせめてフルーツとかで栄養を摂取する作戦だ。

朝市では野菜をメインに様々な食べ物が売っていた。
この日僕が買った物はバナナとリンゴとデカいパン。それと近くでコーヒーを飲んだり。ピロシキも食べておく。朝からそこそこの出費だけど、いいのだ。朝は喰っておくのだ。

一旦リダさんちに戻って食事を済ませ、ようやく僕の活動が始まるわけだ。やることは沢山ある。



メトロに乗って向かった先はQueen Burger。僕がエレバンに来たとき初めて寄った店でもある。ここにはWi-Fiといい作業テーブルがあるのだ。

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ここのバーガー屋さんはコーヒー一杯しか頼まなくても、僕を追い出すようなことはない。お店の席数もあるし、意外にすいている。

うん。だってね日記とかブログとかアップできてないしさ、日記も書いてないし、こういう作業日だって大切だよね!マジこういう時間必要っしょー?

ってことで、この日は16時頃までは作業。

未だにブラインドタッチがうまくない僕だけど、一生懸命にキーボードを叩く。想像するのはタイプライター。僕は今執筆中。僕はアルメニアのカフェで小説を作っている売れない小説家なのだ。そんな漫画家にゆるされた妄想力を十分に発揮して僕はグダグダとした日記を書く。文書力って上がっているのだろうか?

やっぱ他の人のブログを読むと自分にはまだまだボキャブラリーが少ないような気がする。書いた日記もそんなに読み直したりしないしね。だからたまに読み直すと誤字脱字、変換ミスを発見するけど、それはご愛嬌だ。だってこれは一切の賃金が発生しない個人的な日記なんだから。だからさ、読んでくれる人にはほんと感謝っす。


そうだな。じゃあちょっと「サブちゃんの話」をしようかな?

や、別に書くことがないからとかそういうわけじゃないよ。僕だって書こうと思えばその日一日を短編小説並に書くことだってできるんだぜ?

サブちゃんはアルメニアのビザを3回延長したと言っていた

僕が彼に会ったのはベトナムのホイアンという町のユースホステルだった。僕の2つ下、同じ大学の出身だった。大学を休学して一年かけて世界一周をしたといういわば「旅の先輩」で僕はサブちゃんから沢山の話を訊かせてもらったもんだ。カメラの上手いヤツでね。

撮った写真は僕のなんかと比べ物にならないくらい綺麗でかっこいい写真ばかりだった。「世界はこんな光景で満ちあふれているのか?」そう思わせてくれる写真たちだった。カメラの性能を思うと今使っているCanon kiss X3の限界を感じずにはいられない。

そのサブちゃんがアルメニアで何をしていたのかというと、アルメニア美人と劇的な恋に落ちるとかそういうんじゃないんだ。日本語学校に行って、現地の学生たちと交流していたっていうんだよ。
さぶちゃんは頭のいいヤツだったたから、そんな沈没まがいなことはしなかったはずだ。きっとここに何か素晴らしい魅力を感じたに違いない。ここに1ヶ月以上いる意味。

僕はアルメニアのエレバンという町でそのことを考える。周囲の町に比べて異様に発展している。食べ物も安いし、市内だったら交通費も安い。メトロなんて25円で終点まで行ける。リダさんの家にいるぶんは宿泊費は400円もかからない。観光名所に行かなくたって、行ったことのない駅で降りて周辺を散策するだけでも面白いのだ。


こんな風に僕は
人にぺちゃくちゃとどうでもいい話を語って訊かせるのだ。

ごめん今日も喋り過ぎちゃったね。
「そういえばー、あなたはどんな人なんですか?」なんてこともしょっちゅう。

人から話を聞くことも大事だ。一時期病的に人の話を聞くのが好きだったどっかの小説の主人公のように。話すことよりも、話を聞くことによって得られることの方が多い。だからー、もしこの僕のたわいもない話のなかから君が何か面白いものを見つけてくれると嬉しい。



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16時をまわると僕はクイーン・バーガーを後にした。

コーヒー一杯で僕をいさせてくれる店員さんたちに軽くおじぎをして感謝の気持ちを伝える。彼女たちにそれの意味はたぶん伝わってないだろう。

『気持ち悪いアジア人が頭をさげたわよ!?何かしら??!!何かの呪いなのかしら!うひぃ~~~っっっ!!!気持ち悪い!』とでも思っているのだろうか?まぁそれは僕の被害妄想だ。明日も使わせてももらいます!


そして僕はバスキングの場所を探した。

サブちゃんが日本語学校に行ったけど、僕はバスキングだ。そして僕はまた別の演奏場所を探して町を歩き回った。行き着いた先は昨日の路地のもう少し先。

昨日の通りはシネマに面していたといえども工事中で、ロケーション的にはよくなかった。声をかけてきてくれた人が「やるんならあっちの通りだよ」と教えてくれた場所。通りの左右には高いビルが立ち、「NewYorkers」と書いたブランドアパレル店もある。こんなところで唄っていいのだろうか?

まぁ、ビビったところでしかたねえ。注意されたらやめればいい。怒られたら謝ればいい。ここで捕まることはないだろう?そして僕はバスキングを始めた。

持ち歌のほとんどは未だに日本語の曲だ。大好きなCaravanもどこで演奏するか場所を選ぶ。今回の演奏場所は最適だった。いい感じに建物に声が反響する。ちょっと迷惑かな?と思うくらい笑。いいのいいの!怒られたらやめれば!萎縮してんじゃねえぞ!

歌に集中やコードを抑える指に集中してしまうと人の反応が分からなくなってしまう。意識して人と目を合わせるようにする。

こんな場所で突然唄いだす日本人。

多くの人は僕に見向きもしない(60%)。
迷惑そうな顔さえする(5%)。
目が合うと笑い返してくれる人(30%)。
そして5%の声をかけてきてくれる人。

もちろんこの比率は国によって違う。

イランなんて声をかけてくれる人はもっといた。ここアルメニアで僕が出会ったのはノリのいい男の子たち。

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恰幅のいい一人が僕に「ギターを貸してくれ!」と言ってきた。

『何か弾けるのかな?』とギター貸すと、ろくすっぽコードも抑えられないのに、楽しそうになんちゃってバスカーを演じていた。友達はスマートフォンで彼を写真に撮り、僕もそれに習った。

そう言えば何人かは目の前のベンチで聴いてくれているな。
日本語の喋れる女のコにFacebookのアドレスを教えたりもした。日本なんかより大分積極的だ。インネーションも上手な女のコだった。それなのに、日本には行ったことがないと言う。


大学を卒業してIT関連で職探しをしている最中だとそうだ。日本のカルチャーが大好きで日本語の勉強を始めたと僕に話してくれた。

日本のポップ・カルチャーの影響は凄い。

「どうですか?アルメニアは?」

「いいところだね。物も安いしね」

「えっ?安いですか?高いですよ。特にエレバンは」

その一言に金銭感覚の違いを覚えた。

そうか、僕たちにとって物価が安く感じても、ここはアルメニアの首都だもんなぁ…。エレバンに暮らす彼女にとって、お金のやりくりをしていくのは大変なのかもしれない。僕も都心で一人暮らしなんてとてもじゃないけど、できないと思う。特にに「都心に住む」ということに対して魅力を感じないけどね。

路上にも出会いがある。稼ぎもそこそこだった♪

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宿に戻るとトモミさんがゴリスから戻って来ていた。

テーブルにはトモミさんの他に日本人の姿が二人。その二人はお母さんと大学院生の息子さんで旅をしているという面白い組み合わせの方々だった。海外旅行に頻繁に行くご家庭らしく、今回は3ヶ月という旅の期間だそうだ。

中国、インド、ドバイ経由でアルメニアに来たという。最終目的地はローマ。お喋り好きなお母さんの話ぶりを見ていると、パワーのようなものを感じた。トモミさんもゴリスの方で色々と楽しい経験をされてきたそうだ。そんな風にして僕の一日は今日も幕を閉じた。


「あれ!!??トモミさん、今どっからでてきました!!??」

「いやぁ、ドミトリー他の人が泊まっててね。
シミさんとルームメイトですよ♪」

「ぶはっっっ...!!!
(す、すいません、鼻血が…えっと、僕二日間シャワー浴びてないんだった…。体臭うかな?)」

トモミさんは明日の朝、グルジアに戻ると言う。
ホテル・ジョージアにキャリーバックを預けておいたそうだ。
僕も明日は早起きしよう。やることはいっぱいある。

電気を消したあとも離れたベッドの上には旅の会話が行き交った。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。