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「キール運河の分流 in ドイツ」

世界一周439日目(9/10)

夜中に用を足して

テントに戻ろうとすると、
友達が内側からテントを叩き
「Hey(ヘイッ)!」と言った。

誰かがテントに
ちょっかいかけに来たと思っていたようだ。

隣りに僕が寝ていないことには
気がつかなかったのかな?

それにしても「ヘイッ!」って(笑)



朝の目覚めはゆったりしていた。

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テントの入り口を開けると、空一面が白かった。

観光地っぽいところに来たのに、これかぁ…

自称漫画家の25歳と、

ソイツの旅につき合うために
日本からわざわざやって来た26歳は
公園で群れをなしているハトを追いかけ回した。

そしてコーヒーを湧かし、
その日一日の活動を開始したのだ。

デンマークでインスタントではない、
粉末のコーヒーとガスバーナーを買っておいた。

「こういう一手間かかることをすることで、
豊かな気持ちになれるよね」

と彼が言った。

朝一番に公園で飲むコーヒーは
どこのカフェでも売っていない
格別の味わいだった。

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食べ終えたリンゴの芯を
友達がごみ箱に放ると、
リンゴの芯は絶妙な放物線を描いて
スリーポイントシュートみたいに
ごみ箱の中に吸い込まれていった。

「おおッ!」
投げた本人も自分で驚く偶然。

「今日は何かいいことあるかも」。
僕はついそう思ってしまう。

昔船乗りだった友人の父親の
オススメということもあって
キール運河に来たわけだけど、
世界一の利用頻度を誇る運河には、
残念ながら僕たち二人は惹かれなかった。



運河へと続く小さな川の方が
僕たちにとっては魅力的に思えた。

マップアプリを頼りに、川まで歩いた。

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運河に垂直に交わるように流れる川は
自然公園のような森が囲んでいた。

中に歩いて行けば行くほど、
そのひっそりと静まり返った自然の持つ
独特の雰囲気を体で感じた。

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朝の散歩をしてる人もいれば、
バードウォッチングをしに来た、
カメラを持ったおっちゃんなんかもした。

ここではスノーバードと言う名前の青と
オレンジの鳥を見ることができるらしい。

この森にはカワウソも住んでいた。

カワウソと聞くと僕は
「ガンバとカワウソの冒険」を思い出す。
小学校の時に読んだガンバシリーズ。

アニメにもなった「冒険者たち」や
リスが主人公の「グリックの冒険」も
いい話だったな♪

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キール運河の分流は何キロも続いていた。

これを楽しもうと思ったら、
丸一日あっても足りないかもしれない。

適当なところで切り上げて、
僕たちは分流をあとにした。

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とりあえずハンブルグを目指してみよう。

ここからそう遠くない。
70kmくらいだろうか?

ヒッチハイクも成功しやすいだろう。


ヒッチハイクポイントはIKEA前の信号だった。

キール中央駅から歩いてIKEAを目指し、
ケーキやチョコレートとミルクをたっぷり入れた
コーヒーを摂取して、昼寝をすれば完璧だ。

友人はこの前デンマークの
ガーデンハウスでひいた風邪を
悪化させていた。
なんだか疲れたそうな顔をしている。

まぁ僕はずっと野宿しているから、
それに体が慣れたっていうのもあるんだけど、
日本から来ていきなし野宿だもんな。

知らないうちに体に疲れが
たまっているのかもしれない。



交通量が多くなるのは朝の10時まで、
そして帰宅ラッシュが始まる
15時から18時がベストな時間のようだった。

15時からヒッチハイクを開始するとして、
ちょっとIKEAでまったりすることにした。

軽食を取ると、
彼はテーブルにつっぷして仮眠をとった。

僕はテントのポールの一部が壊れてしまったので、
探しに行ったり(なかったんだけど)、
日記を一本書いて時間を過ごした。

まぁ、無理して体壊しても
旅が楽しめなくなっちゃうからね。
のんびり行こう。



15時前に僕たちはIKEAをあとにして、
近くでヒッチハイクを開始した。

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IKEAの敷地を直角に曲がるようにして、
道路はハイウェイへと続いている。

その手前に信号があるため、
ヒッチハイカーの姿を認識しやすい
ベストポジションらしい。

いつものようにサイトを頼りにして、
ここにやって来たわけなのだがー、

そこには車が止まる
スペースなんて存在しなかった。

いつものようにニコニコして
パフォーマンスみたいなヒッチハイクをしたが、
信号が切りかわったあと後続車
が次々にやって来るため、
車が止まるのは無理があった。

ドライバーからのレスポンスはいいのだが、
車が止まらない。

かろうじて一台車が止まってくれたが、
行き先はハンブルグではなく、
僕たちに
「違う場所でヒッチハイクをした方がいい」
と助言してくれただけだった。



ヒッチハイクできそうな
場所は三カ所ほどあった。

こういう時に意見が分かれると厄介だ。

友達はあっちの方が車線数が多いだの、
ナンバープレートなんか気にしても
しょうがないだの、正論を言う、

が僕としては、彼が言う場所とは
別の場所の方がいいように思える。

手分けしてヒッチハイクするわけにもいかない。

だんだんと笑顔がなくなってくる友人。

風邪で体がダルいのは分かるけど、
そんなあからさまに態度に出てたら、
車も止まってくれない。

と言っても、
「ほらほらやる気だせよ?」とか
「しっかりしろよ」とか言っても
効果がないことは分かっているし、
言ったところで空気が悪くなるのも分かっている。

やれやれ。まったく気遣いとは
めんどくさいものだ。


あっという間に
一時間が経過した。

二人でヒッチハイクを初めて最長。
『車なんて止まるのかよ?』って感じ。

「場所代えて1時間粘って
ダメだったら電車!」

そう友達を説き伏せて
僕がいいと思うヒッチハイク場所へと移った。

車の交通量は少ないが、
ナンバープレートが色々な土地から
来ている車が多いというのと、
やっぱり車が止まるスペースが
あるとうことが決め手だった。

多少強引にテンションを上げて、
ドライバーの手を降り続けること15分。


車が止まった。

中から眼鏡をかけた
優しそうな男性が出てきて、
「ハンブルグまで乗せていってあげるよ」
と言ってくれた。

よし!結果よければ全てよし!

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車を運転していた男性は、
仕事の傍ら社交ダンスをしている方だった。

途中、「用事があるから」と
僕たちをダンスの練習場
まで連れて行ってくれた。

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築100年以上にもなる歴史ある建物。

中にはここでダンスするペアの写真や
トロフィーが飾ってあり、
練習場はなんだか僕たちみたいな
バックパッカーが入っていいものだろうかと
思うほどしっかりしていた。

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練習場を見させてもらうと、
数組のペアが鏡に向かって練習していた。

すげえ。

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練習場の玄関のマットを交換するのを手伝い、
僕たちはハンブルグの中心地から
6kmほど離れた場所でおろしてもらった。

「何かあったら連絡しておいで」と言って、
ドライバーさんは僕に電話番号を
書いた名刺を渡してくれた。

やっぱりさ、
さっき1時間以上も待ったけどさ、
こうして人と出会えるってことは嬉しいよね。

僕と友人はバスに乗って
ハンブルグの中心地を目指した。



ハンブルグの街は発展した都会だった。

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街の中心には大きな噴水があった。

街のメイン通りには多くの人が出歩いており、
バスキングしたら稼げそうかもと思えるほどだった。


『ここに滞在したら
面白いかもしれない…』

だけど、僕たちの目的地は
別の場所にあった。

友達は風邪薬を買い、
マクドナルドや駅のフードコートを
点々として時間をつぶした後、
大使館が近くにある公園でテントを張った。

公園の裏には小道があり、
ホームレスだかジャンキーだか、
パーカーのフードをすっぽり被ったヤツが
路地に消えていった。

ふぅ...

なかなかに濃い一日だったね。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。