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「ウランウデの街は夕陽に染まる」

世界一周14日目(7/12)


自分のルールに固執することで損をしてることがある。

カフェで漫画を描きながら少し後悔していた。
「なんでイワンにお別れを言わなかったんだろう?」と。

世界一周の旅をしながらも漫画は描き続けようと決めていた。
『ロシアを出国する前に漫画一作仕上げる!』と自分に課しており、出国直前を控えた今日くらいしか作業できる日がなかったのだ。

僕はよく自分の決めたことを意固地に守ろうとする。

思い返せば、浪人時代も「これ以外の大学は受けない!」とか変に意地を張っていた。
(早稲田に現役合格した先輩から「文系数学は穴だぞ!」と得意でもない数学を選んでしまったこともあるが…。「数学が嫌いだ」と気づいたのはセンター試験直前のことだった)

周りを気にせず、
時に何かをないがしろにして
一つのことに集中できることはいいことなのかもしれない。

けれど、
どこかで自分が失いつつあるものが存在することも気の留めておきたい。



次の目的地はモンゴルだ。

だが、ここからどうやってモンゴルまで行くのか雲行きが怪しくなっていた。

宿に泊まっていた気の強そうなアメリカ人女子二人から「もしよかったら連れて行ってあげていいわよ?」とオファーをもらったのだが、高圧的な態度だったこともあり、僕はついていかなかった。

現在モンゴルはちょうどお祭りの季節とのことだ。
列車やバスのチケットはソールドアウトで唯一の越境手段はミニバスで国境付近の町まで行き、そこからヒッチハイクで国境を越えるというものだった。

モンゴルへは徒歩では入れない。一人でモンゴルへ入る、ましてやヒッチハイクだなんてハードルが高すぎる。

僕は不安と戦いながら「ファ◯ク!」と何度も呟きながらたった2ページの漫画を仕上げた。

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6時間、カフェのテーブルで粘りホステルのインターホンナンバーを入力すると後ろから誰か近づいてくる。

そこにはなんとイワンの姿が。

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「えっ⁈イワンだっっっ!
どーして!?今日出発するって言ってたじゃないか?」

イワンに話を聞くと、
今日はコンサートを見てきて、明日出発なんだとイワンは言う。

あはは。そうか。僕が誤解しただけだったんだね、出発の日が僕と一緒とは…それにしてもよかった。ちゃんと最後にお別れが言えて。

やっぱり、何も言わずに別れるなんて寂しすぎる。出会いと別れの連続が旅だとしても、僕はそのひとつひとつを大切にしたい。







ホステルに戻ると、少し騒がしかった。

なんとこれから「ポテト・パンケーキ・パーティ」が開かれると言う。

自分のオリジナル料理「ポテト・パンケーキ」をロシア中のホステルで作っちゃう、「"traveling cooker" キリル」がここへやって来たのだ!

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彼の旅の目的は100万枚のポテト・パンケーキを焼くこと。
そんな面白いことをしている旅人に出会えて僕はなんて運がいいんだと思わずにいられなかった。

ラッキーの連鎖はさらに続いた。
2人のフィンランド人と車をシェアしてモンゴルへ行けることになったのだ。

断っておくけど、僕は決して強運の持ち主ではない。
ただ、ちょっとした運命論者で、些細な出来事にも前向きな意味を見出してきただけだ。

めげそうになる時だって『これはきっと何かに繋がっているはずだ!』って信じてここまで生きてきた。物後に意味を見出すのはその人次第。他人にとってはなんともない出来事にちょっと敏感なだけ。頭ハッピーなだけだ。
(そうなるように努めているんだけどね)




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滞在3日目となって、途端にTraveler's House (今僕が泊まっているホステル)が居心地のいいものに変わった。スタッフと、ルームメイトと交わす自分の拙い英会話が心地いい。

最初は聞き取れないネイティヴイングリッシュが飛び交う環境で、ホステルの主(ぬし)的存在(一週間くらい滞在してただけだけど)アーリーばあちゃんのマシンガントークに思わず宿を代えたくなった。

だけど、思い留まった。
『ちょっと待てよ!これはチャンスなんだぜ!ネイティヴの英語に接する機会なんだから!留学だって『お金がない』とか諦めてきたじゃないか!』と僕は考え方を変えてここにいることにしたのだ。

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カヴァスを買いに外へ出ると静かになったショッピングストリートでは
アコースティックライブが行われていた。

写真を撮っていたはずがいつの間にか僕もギターをとって唄っていた。

建物に声が反響して音が夕闇に沈む街によく馴染む。

たぶん10ルーブルくらい稼いだと思うw。



"present for you!"

そこで弾き語りをしていたバスカー(路上パフォーマー)僕のために歌を唄ってくれた。

やっぱりここにいたことは意味があった。

そう思わずにはいられない。



素晴らしい仲間と楽しい夜を過ごし、僕は翌朝のモンゴルへの出発に備えてベッドに横になった。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。