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「ホームレスバックパッカー、罰金を喰らう in ドイツ」

世界一周433日目(9/4)

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なんと今日はデートの約束がある!

住所不定、無職、
自称「旅する漫画家」の
この僕に!!!


「 ムフフ...」

いつもの公園で目覚めて、
のそのそとパタゴニアのすぐ隣りにあるカフェで
アメリカーノのラージサイズをオーダーし、
充電をしながらFacebookを見ていたときのことだった。

写真家のメグミさん
から連絡をいただけたのだ。

メグミねーさんは東回りで世界一周をしていた。

その旅の途中にグルジアのホステルでお会いして、
それからスイスでニアミスし、
まー、このまま会えないのも旅だよねぁ

と思っていたのだが、

そんな
メグミさんから
連絡がきたのだ!

うっひょーーーー!!
いっつも一人寂しく野宿やってるけど、
こんなホームレスにも春がきたよぉ~~~!

おごってもらう気まんまんで
メグミねーさんとの約束をとりつけた。


18時にメグミねーさんが泊まっている
ユースホステルまで僕がお伺いするって感じだ。

一年間で世界一周を終えたメグミさんは、
一度日本に帰国したあと、
虎視眈々と準備を整え、
今日ベルリンへとやって来るそうだ。

世界一周の旅を終えてなぜドイツなのだろう?

プロの写真家を目指すメグミさんは、
ここベルリンでワーキングホリデーをする計画なのだそう。

年齢がたった僕よりひとつしか違わないのに
野心に溢れた方だ。

僕はまだまだハナクソアーティストだけど、
写真をやっているメグミさんに会うことで
いい刺激が欲しかった。

約束の時間まで行きつけのカフェ
「G&G」で作業して、メグミさんと
Facebookのメッセンジャーで連絡をとった。

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Googleマップでメグミさんのいる
ユースホステルまでの行き方も調べた。
電車で40分くらいの場所にあった。

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そろそろ時間だ行くとしよう。

僕はスクリーンショットで
googleマップが導きだした
そこまでの到達手段を送った。


メグミさんは

「どうせバレないから
無賃乗車で着ちゃいなよ!」

と僕に言った。


最近僕はブログを読んでくだすっている方から、
僕のちょくちょくやっている無賃乗車に対して
「ちゃんとした大人なんだから、ルールは守りましょう」
とお叱りのコメントをいただいていた。

まぁ、でもさ!

これからベルリンに住むメグミさんが
そう言ってるんだし、
タダ乗りしちまうか!


魔がさしたとは
まさにこのことだ。

僕はこういうズルはできない体質なのだ。
それを自覚した上で自分を律さなければ
いけなかったのだ。

だが、これを書いている時点では
もう後の祭りだろう。



そもそもベルリンの電車のチケットは
どれを買えばいいのかわからない。

日本と違ってホームには駅員はいない。
自分がどのチケットを買えばいいのか分からない。

路線図には「A」「B」「C」と
エリア分けされている。

これを組み合わせてチケットを
「AB」だとか「BC」とか、
人によっていは一日券みたいなのを買うんだけど、

外国人の僕からしてみたら、
一体どのチケットを買えばいいのか
てんでわからない。


「シングルチケット」っていう
一番安いチケットもあるんだけど、
これは一体どこまで適応されるのだろうか?

路線図は一見、整理されているようだが複雑で、
最初はチケットを買おうとしていた僕も、
もうめんどくさくなってしまった。

ほんの少しの距離を進むのに
2.6ユーロ(364yen)ってのも高い


ちなみに改札なのだが、
日本のような自動改札はない。

自分でチケットを買った後に、
別の機械で打刻するシステム。

だから無賃乗車しようと思えば誰でもできてしまうのだ。




僕はチケットを買わずに電車に乗り込んだ。

目的地の駅は5つほど先だった。

電車に乗った途端、体の中から変な感じがした。

じんわりと汗をかく。


『もしかしてバレるんじゃないか?』

という予感…。


3駅通過したところで、

嫌な予感は的中した。



ベルリン中央駅を通過したころだった。

私服を着た兄ちゃんが
乗客の一人一人にチケットを
持っているか尋ねている。

人目でソイツが乗客ではないことが分かった。

腰にはクレジットカードの
スキャナーくらいの大きさの機械が
ぶらさげられている。



『に、逃げないと!』

僕は焦った。

分かったことは、
そのチケットを確認するオフィサーが
二人もいることだった。

車両の端から挟み撃ちするように
乗客を追いつめて行く。

電車は日本のそれと違って、
別の車両へ行く連結部は閉ざされていた。


絶体絶命だ…。

何を思ったか僕は
走行中の電車の中でバックパックを背負い、
オフィサーを通過して、
空いている席に座った。


が、

もうこの時の僕の行動ったら挙動不審。

オフィサーもすぐに僕のもとへとやって来た。



「チケット見せてくれるかい?」

「あ、は、はい!
ええっとぉ…どこやったかなぁ~…
あれ?見つからない」

「オーケー、
次の駅で降りてくれるか?」



次の駅で僕は降ろされた。

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ホームには僕と同じように
無賃乗車がバレたセクシー系お姉さんが、
もう一人のオフィサーに抗議していた。


「えっとぉ、おかしいな。
入れておいたと思ったんだけど…。
見つからないです」

「パスポート出して」


言われるがままにパスポートを出して、
オフィサーに見せる。

オフィサーの歳は27歳くらいだろうか?
黄色いパーカーにジーンズ。

格好だけ見たら、
コイツが駅の雇われ屋だということは
分からないだろう。
腰につけた機械を除けば、ね。


私服のオフィサーは
タッチペンで機械に
僕の個人情報を入力していく。


「えっとー、すいません、
チケット買い直せますか?」

5ユーロ渡そうとしたが、
それを受け取る素振りをソイツは見せなかった。


「じゃあ、
罰金40ユーロ
(5,597yen)だから。
今支払うかい?」

「えぇ…!!!いや!そんな!
僕そんなお金持ってないです!」

「じゃあ二週間以内に
ここに払い込んでくれ」

振込用紙を僕に手渡す罰金屋。

「じゃあ、僕がいくはずだった駅までは
どう行くんですか!」と抗議すると、
「その罰金用紙で行けるよ」と罰金屋は言った。

罰金屋はそのままどこかへと去っていた。


『は、はうぅ…』

体に力が入らない。

ガイリッチーの
「Lock,Stock and two smoking barrels」のエドが
賭けポーカーに負けて、アホみたいな借金を
町のボスに負わされた時と同じ曲が僕の頭に流れた。

フラフラと歩いている感覚がない。



それでも向かった先は
メグミさんの泊まっている
「Happy Go Lucky Hotel」だった。

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ハッピー、ラッキー..
間違いなく今の僕とは真逆の状態だぜ…。

ホテルのフロントは
宿泊客たちの共有スペースになっていた。

何台もテーブルと椅子が並んでいた。

僕が部屋を見渡すと、
メグミさんは僕にすぐに気づいてくれた。


「お~!久しぶり!」

と言って僕にハグするメグミさん。

感動の再会のはずが、今の僕の心は
40ユ0-ロのことしか考えられないでいた。

「チェコでは大変だったでしょう。
新しいバックパックも買ったんだ?
ていうか痩せたよね」


「メグミさんー、
ひとつだけ言っても
いいでしょうか?」

「何?」

「罰金くらいました…。」

「うそぉ?」

「スイマセン、15分だけ
落ち込まさせてもらっても
いいでしょうか?」

テーブルの端で僕はぼーっとした。

「いや、でも大丈夫だよ?
前に同じように罰金くらった人がいたけど、
チケット持ってたから大丈夫だったって」

「そのチケットがないんですよ」

「さっき私が使ったチケットあげるよ。
時刻もそれより前だし、
これがあれば払わないで済むんじゃない?」

ってあなたは女神ですかっっっ(涙)!!!!



二人で近くのスーパーに食材を買いに行った。

パスタとネギとニンニク、ニンジン、
シンプルな野菜パスタが今日のご飯だ。

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パスタの素みたいなのを
どうするか迷っている時に、

僕が「なんでもいいっすよ」と言うと

「放置だな…」

とメグミさんがボソっと言った。

や、放置じゃないっすよぉ!
メグミさんが好きなの選んでもらおうと…。

ドイツのネギはギャグみたいにデカかった。

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タマネギなどのいくつかの食材や
お皿などのカトラリーはホテルには置いてあったのだが、
どういうわけか包丁は置いてなかった。

食事の時に使うナイフに
苦戦しながらネギやニンジンを切った。


「私、こういうの
全然できないんだよね」

と言いながら、
メグミさんが作ってくれたパスタは、
罰金をくらった僕の心を
じんわりと温めてくれた。

日本から持って来たと言う
インスタンとの味噌汁が体中に染み渡った。
やっぱり日本食はうめえよ…。

食事を済ませ、話のほとんどは
僕がペラペラ喋っていたように思える。


「日本で働かなくても、
海外で働く可能性がアーティストにはある」

そう僕を前向きにさせてくれたのは
メグミさんだった。

アーティストも自分を
売り込みにいかなくちゃいけないんだなって、
そう思えたトークセッションだった。

いろいろとありがとうございます。
メグミさんもベルリンでの生活、楽しんでください!

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ホテルの共有シャワーを借りさせてもらい、
12時前になるとメグミさんとはバイバイして、
僕は罰金の支払いオフィスがあるらしい
動物園の近くの駅まで歩いた。

歩道脇の茂みにテントを張ったのだが、
テントの周りを人が歩く気配を僕は感じた。

何度かテントを内側から揺らし、
「起きているんだぞ!」とアピールをかましたのだが、
気配は去らなかった。


しばらくしたら近くからイビキが聞こえた。

きっとホームレスの寝床なんだろう…。


また別の足音が聞こえる。

テントの中でペグを握りしめた。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。