「旅人談義 in アルメニア」
世界一周315日目(5/9)
朝から来客だ。
聴こえるのは日本語。どうやら僕一人で占有しているドミトリーに誰かがやって来た。部屋のライトをつけずに荷物を整理している。気を遣わせちゃってるな…。iPhoneのホームボタンを押して時刻を見ると8:30。起きなきゃ。
東南アジアで昼夜逆転した欧米人たちが泊まっているドミトリーに入る微妙な感じを思い出した。昼過ぎまで起きない彼らに気を遣って、暗い中で自分のベッドまで辿り着くあの感覚。同じ様な気持ちにさせてしまったら申し訳ないので僕はドミトリーに新しくやって来たその人に声をかけた。
「あっ、どうぞ、僕もう起きますんで、全然部屋の電気とかつけちゃってください」
「起こしちゃいました?スイマセン、大丈夫ですよこのままでも」
このやり取り…、日本人だよなぁ~(笑)
新しくリダさんの家にやって来たのは、痩せた40代くらいの男性の方。髪は短く、顔にはザラザラとした髭が生えていた。だが、どこかこざっぱりした感じの方だった。中庭のテーブルに座って「どこから来たんですか?」そんな風に僕は切り出した。初対面の人と話すごくフツーの会話。
「昨日、夜遅くに着いんですよ」
「じゃあ別の場所に泊まったんですか?」
「いや、野宿しました(笑)」
「野宿!!??」
僕みたいなアホなら野宿は分かるけど、こんな僕より10歳以上離れた男の人が!!!どんな冒険家やねん!思わず関西弁でツッコんでしまう(心の中で)。
「いや、真夜中に宿の人起こすの申し訳ないなぁと思って」
「どんな気の遣い方すっか!」
でも、僕はこういうお茶目なことをやってしまう大人が大好きだ。ついつい詮索してしまう。
「で、どこで野宿したんですか?」
「いやぁ、けっこう探しましたよ。夜中色んなところを歩き回ったんですよ。公園は周りから見えるからちょっと危ないじゃないですか?」
僕と一緒だ。僕がエレバンに来た初日、宿代を浮かせるために、宿が見つからなかったために、教会の裏口で野宿をしたんだ。
「リパブリック・スクウェアの下の方に大きな銅像が立ってるんですよ。裏に人が横向きに挟まれる場所がありましてね、そこに寝ました」
「体バキバキになりませんでしたか?」
「はい。だから今も肩が痛いんですよぉ」
うわ~~~…このお兄さん好き!!!
現在シンガポール在住のカズさん(あれ?確か僕のニックネームみたいに二文字だったことは覚えてるんだけど…はっきしと思い出せない笑)高校卒業後、オーストラリアに渡り、大学と大学院で勉強したそうだ。オーストラリアで働いたのち、オーストラリア人の奥さんと結婚、シンガポールに移り住み、今現在4歳の娘さんと2歳の息子さんがいる。今は育児のために休職されており、ベジタリアンの奥さんの許可を得てイランやグルジア、アルメニアなどのエリアを旅している。そんな方が野宿て…。
「「旅に行っていい?」ってちゃんと奥さんに許可ももらって来ましたよ。航空券の「購入ボタン」を押す直前に」
日本を離れて海外で長く暮らすカズさんの話し振りは、日本人のよりかは欧米人の持つノリに近かった。冗談と共に軽くボディ・タッチをしてくるのもなんだか、親しみが持てた。お互い喋り好きということもあって、会話がはずむ。
昨晩やって来た中国人のお兄さんが僕たちにサラダを振る舞ってくれた。すごい英語の上手いお兄さんだった。三人で中庭のテーブルでご飯を食べながら英語でトークする。カズさんもさすが海外で働かれているだけあってペラッペラ。時々なんて行っているか分からなかった。でも、そういう方の話し振りを聞かせていただくと、学ぶことも多い。「actually(実際に)」とか、そんな単語あったなぁ~。なんて浪人時代を思い出しながら二人の話を聞いていた。
切りのいいところで、僕たちは各々の活動をすることになった。僕は漫画も仲間の披露宴で使う絵も完成させたことだし、それのデータを友達に送ってしまいたかった。でもその前にいい天気だったので、気合いと根性でリダさんちのトイレで髪を洗って、洗濯を済ませた。
や、文書で書くとなんともないけど、リダさんちの水めっちゃ冷たいから!お昼前ですら、しばらく水に当たっているとあまりの冷たさに頭が痛くなる。Scrubbaに水をためて粉末洗剤をかき混ぜると冷た過ぎて手が痛い。井戸水かなんかなのだろうか?ここの水は白い。ミネラルが含まれているようだ。先日会った日本語のバンドを組むヘギンちゃんいわく「飲んでも大丈夫。お腹の調子を整える効果がある。ただし飲み過ぎは逆効果」だそうだ。
僕はその水を毎日500mlのペットボトルに入れて持ち歩いているけど、今のところお腹は大丈夫だ♪雑務を済ませると僕はいつものバーガー屋に向かった。
日記も書きたまっている。今日は日記の執筆に当てることにしよう。
「おはよーございまーすカプチーノ!」
まずはiPhoneでブログでも読もうかな。…あれ?
「すいませーん、Wi-Fi使えないんですけど」
「あぁ、そうなのよ。今日だけWi-Fi使えないのよ」
今日だけ…。どうする?他のカフェ行くか?友達に描いた絵のデータ送らなくちゃいけないんだよな。ブログのアップもできてないし、またアップできない分が溜まるのはなぁー…まっ、いっか♪
いつもお世話になっているカフェだし。今日くらいWi-Fiが使えなくたってどうってこたぁないぜ。カプチーノも頼んじゃったしね♪毎日毎日長ったらしいブログに写真を貼ってマメにアップしてますけど、僕のブログなんてそんなものだ。ダメな時はダメ。アップできない時はしょうがない。なぁに死にゃあしねーさ。最近前向き。いい感じ♪人生最高♪
そんな感じで僕は一気に日記を三本仕上げた。
MacBook Proのバッテリーがなくなってしまったところで作業終了。外は夕暮れ時。涼しくなって来た時間だ。そして僕にとってはバスキングの時間♪だがこの時刻からどんどん天候は悪くなっていった。
いつもの地下道にいるギター弾きのおじちゃんがいないので「この場所とーっぴ♪」とばかりに唄いだしたが、強風が吹き荒れ、ギターケースの中に砂や葉っぱが入り込んだ。雨は振り出し、人の姿はめっきり少なくなった。
雨から逃げるようにメトロの入り口へと向かう。そこには僕と同じように多くの人たちが突然降り出した雨を止むのを待っていた。
雨が止むまでここで唄ってみたが、反応はイマイチ。ここでは僕はただの背景の一部だ。
最後の方に何人かがコインをギターケースに入れてくれたが。雨が止んだのを確認して、僕はいつもの大通りへと向かった。
雨が降ったあとだったので、いつも見かけるアコーディオンとドラムのおじいちゃん2人組やガットギターのアフロのイラン人兄さんの姿も見られない。ほんだら僕の独壇場じゃないか!!!もちろん雨がやんだばかりでは他の人の姿も見れない。
唄っているとじわじわと歌を聴いてくれる人の姿が増え始めた。
どこぞのかっぷくのいい女のコが豪快に笑いながら僕に写真を求めてくる。
宿に泊まっている中国人のあんさんの姿も見られた。
「ここで歌を聴かせてもらうよ」と言って目の前のベンチに座ってスマートフォンをいじりながら、しばらく僕の歌を聴いていてくれた。
今日のバスキングはそんな感じ。
若い韓国人の夫婦がリダさんの家にやって来た。
ここで欧米人の姿は見てないけど、日韓中が泊まる宿なんだね。みんなブログなどのクチコミを頼りにここまで来たようだ。中庭のテーブルを囲みながら英語でお喋りをする。
不思議なもんだよな。隣接して違う言語を喋る国なのに英語でコミュニケーションがとれるんだもんな。
僕は発音練習は個人的にしたけど、文法なんて「なにそれ?」だし、イディオムだってほとんど忘れてしまった。「ヒカッキュウ」って入れ歯のないおばあちゃんがどこかのポケモンの名前を言っているようにさえ感じる。それでも、僕たちは英語を使って会話ができるのだ。
中国人のお兄さんの名前はフォンと言った。アジアやアメリカ、アフリカを旅して、このあとイランへ行くそうだ。中国人の長期旅行者に初めて会った。だけど、行きたい国にどこでも行けるというわけじゃないみたいだ。
「君たちはイランビザが40ユーロとかだったろ?中国人の僕はビザに70ユーロ(9,819yen)かかるんだ」
「た、高いね」
「ヨーロッパはどこでも行けるだろう?だが、中国ビザだとそうはいかない。ひとつの国ごとにビザがいるんだ。まったくもって不便なビザだよ。だから今回の旅ではヨーロッパは行けないんだ」
チャンソ(旦那さん)とチュニ(奥さん)、韓国人夫婦も世界一周の旅をしている。上海から始まった旅でここまで5ヶ月、旅をしてきたそう。ビザとは一体なんなんだろうと考える。それは先人の方々が積み重ねた実績、信用だったり、国家間の関係だったりするのであろう。もしかしたら今こうして話している立場は逆だったかもしれない。不公平だなぁと感じる反面、自分はほんとうにツイてるとしか言いようがない。どこの国に生まれるかは選べないからね。
それから話はフォンが次に行くイランの話になった。
チャンソとチュニは自分たちのオススメの場所をフォンに教える。
僕はそこで気になっていた質問を投げかけた。
「イランでやたらと「チーン!」だとか「チャン!」だとか言われて、中には中国人を嫌う人もいるんだ。その原因のひとつはメイドイン・チャイナなんだって。それについてどう思う?」
フォンは少し納得いかない顔で僕に言ってくれた。
「確かに世界中にはメイドイン・チャイナが溢れている。だけどその全てが粗悪品というわけではない。品質の高い中国製品ももちろんある。だけど、それを全ての国が買えるわけじゃない。経済的に余裕のない国は君の言う様な安い中国製品を買わざる得ない。自分たちが輸入したり、作らせている中国製品に対してとやかくいうのは筋違いなんじゃないだろうか?」
ふむ。そうだ。自分の国で作るよりもコストがかからないから中国で物を作る。お金をかけていないから良い物はできない。その通りだ。日本にも中国製品は溢れているけど、僕はその全てを粗悪品だとは思わない。中にはすげえしっかりした物もあるし、僕ら日本人はそれに頼っている。これはイメージの問題だと僕は考える。
「中国製品=安いけどちゃっちゃい」そのイメージを多くのイラン人が持っているのではないだろうか?今回はメイドイン・チャイナについて触れたけど、他にも色々なイメージがあるんだろうけどね。外に出ないとわからないことってほんと多い。
チャンソクは領土問題について話した。
そんないがみあってもしょうがない。もっと歩み寄るべきだと彼は言った。僕も同意見だ。そういう前向きな意見が聞けて僕は嬉しかった。そうだよ。おれらは何に捕われているんだ?
「なぁ、アフリカや中東を旅して来て日本人の女のコが一人で旅しているのを見たんだが、どうして彼女たちは行く先々でボーイ・フレンドを作るんだ?エジプトで会った女のコなんて、相手が既婚者で子供もいるのにも関わらず平気でつき合ってたぞ?僕には理解できないな」
うっ…
まさか、日本人じゃなく、中国人に指摘されるなんて…。あまり聞きたくなかった。僕も日本人の女のコは尻軽だって聞いたことはある。もちろんそれはマイノリティーなんだろうけど…
「いや、だいたいどこの国にもそういう日本人の女のコがいたぞ?」
う"っ…。
韓国人や中国人の女のコの一人旅というのはポピュラーではないらしい。フォンは日本人女子一人旅に違和感を覚えているようだった。あんなにホイホイ外国人の男についていっていいものなのか?聞いている限りでは、「フレンドリー」というか「イチャイチャ」。まー、人それぞれだと思うよ。僕は。日本人の女のコってカワイイからさー。ほら?お洒落じゃん?女子力高いじゃん?そうだよね。世界中の男どもが日本人の女のコ様にくびったけなんだよね(ヨイショっと)
だけどねー、うん。僕はどういうふうにフォンに説明していいか分からなかったよ。どなたか旅女子代表の方、模範解答を僕にください。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。