「旅人を見送ったり、雑貨を仕入れたり in アルメニア」
世界一周317日目(5/11)
「よかったら食べる?」
「マジで!ありがとー!」
フォンが僕にあまった朝ご飯を分けてくれた。
既に市場で買ったトマトやパンを食べてしまっていたが、せっかくだからいただいておく。もらえるものはもらっておくのだ。それが旅人だ。
お皿にガッツシもられたおかゆ。茹でたキャベツ入り。味付けは野菜の甘みのみ!ベジタリアンのフォンにふさわしいご飯だ。せめて塩が欲しいところだが、リダさんちのどこに塩があるのか分からない。他に頂いたほんのわずかのベーコンの塩味を活かして、おかゆ7:ベーコン3くらいの割合で口に運び、絶妙なバランスで食べていく。口の中でベーコンと淡白なおかゆが生み出すハーモニー。この感じ伝わらないかなぁ?
ほら、白米だけで食べてると、どうしても物足りない感じじゃない?小さいときはふりかけがないとご飯が食べられなかったよ。おかずってけっこう大事なんだよね。
淡白なご飯を食べる僕のそばではアランたちが楽しそうにはしゃぎ回っている。どんな国でも子供たちは元気いっぱいだ。
そろそろアルメニアを出る時だと思う。ビザの延長はしない。僕はエレバンにしかいなかったけど、この街を楽しめたと思う。それでも行かなかった場所もあったけどね。ちょっとくらいそういう場所を残しておいた方がいい。きっとまたここに来たくなるはずだから。
20日もいれば十分だ。これ以上いると逆に『滞在し過ぎてしまったかな?』と感じてしまう様な気がした。
バイバイ。フォン。色々話せて楽しかったぜ!
ベッドの上に座って、頭の中であといくらあれば足りるだろうか考える。次の目的地はグルジア。
駅の前から出ているマルシュ(乗り合いタクシー)で行こうと考えている。列車で9,000ドラムくらいだから、だいたい7~8,000でいけるだろう。それと、イランとアルメニアの雑貨、原稿用紙も郵送しなくちゃならない。一体いくらかかるんだろう?もうここは東南アジアやインドじゃないんだ。5千円くらいだろうか…?昨日手に入らなかった雑貨も仕入れておきたいし、
そうだ。
ギターの弦もストックがなくなってきたからまとめて買っておこう。きっとトルコやグルジアだと値段が上がってしまうに違いない。手持ち13,000円から始まったアルメニアライフ。
今日まで一回もお金を降ろしてないけど、ここらでATMを使うことになるな。手に汗握るよ(笑)。あぁ、そうだ。
髪も洗っておこう。
「ねえ見てみて〜!」
「ギャアッッッ!!!」
リダさんに今日明日の分の宿代を支払って、あさってチェックアウトすることを伝えた。
リダさんとアランは僕がいなくなるのを寂しがるように泣きまねをしてくれたことがちょっと嬉しかった。
僕は最初に楽器屋さんに向かったのだが、今日は日曜日。楽器屋さんは閉まっていた。そういうところが海外っぽい。日曜日に定休日になるお店はけっこうある。楽器屋は明日だね。
続いて向かったのはバザール。
もう何回ここに足を運んだろうか?
雑貨の仕入れは正真正銘今回がラストチャンス。何回もここに足を運んでいるから、どこらへんに何のお店が出ているのかなんとなく分かってきた。お店の人が出店する場所もだいたい同じ。昨日はバザールに来る時間が遅かったけど、今回は大丈夫だろう。記憶を頼りに向かった先に目当ての雑貨が売っていた。
その時はバザールの写真を撮るだけで、そこまで気に留めていなかったのだが、写真を見返すとジワリジワリと僕を揺さぶったのだ。今回は友達には相談はしていない。僕の独断と偏見で仕入れる雑貨をチェックしていった。
まず最初に手にとったのは味のある絵の描いたコインケースとポーチ。
フクロウの絵が描いたコインケースが忘れられなかったのだ。
前回写真を撮った時には分からなかったが、裏の刺繍もしっかりしていることに気づいた。これなら長く使ってもらえるはずだ!いつものように何個か買うから値段を下げて!とお店のおばあちゃんと値段交渉をして僕はコインケースを3つ、サイズ違いのポーチを3つ仕入れた。
雑貨の値段もインドなんかと比べたら2倍以上にに跳ね上がってる。だけど、良い物にはそれなりのお金を払おう。おばあちゃんは自分のお店で売られている物と同じポーチにお金を入れていた。それが僕を安心させてくれた。
これは単にカワイイだけの雑貨じゃない。使ってもらえる雑貨なのだ。
次に探したのがピンバッチだ。
このバザールには何店かレトロなピンバッチを扱うお店がある。お店というか雑貨を売る人がいる。いくつかのピンズは安全ピンではなかった。ただの「ピン」。布にそのままぶっ刺すピンで、鞄とかにつけていたらすぐに外れてしまいそうなものばかりだった。いくら味があってもちょっと問題点があったら買うのはやめる。だって、そこに想いを込めて欲しいから。
僕が探していたピンズを扱うお店はひとつしかなかった。ちなみにこれ全部お買い上げしました。
年期の入ったピンズたち。アルメニア製というわけではないが、何年も時間をおいた物が持つ独特の味があった。
お店の人からしてみたら『なんでこんなに古めかしいガラクタみたいなバッチが欲しいのだろう?』と思ったかもしれない。バッチひとつひとつは格安だった。だけど、これは日本では手に入らない物だ。日本の外で年代物のワインの様に時間を過ごした雑貨たち。あ、僕お酒全然飲まないんですけど(笑)まぁ、こういレトロなものっていいよね!飾るだけじゃなくてさ、バッグとかにつけて欲しいよ。
雑貨を仕入れた僕はいつものようにクイーン・バーガーでパソコンを開き、どどどっとブログを予約投稿し(なんだかんだでやってるのです。そんな多くはないけどね)、仕入れた雑貨を友達に報告した。いつもはセンスのなさでダメだしされまくっている僕だけど、今回はいい評価をもらえた。僕も今回の雑貨たちは自信を持って他の人に届けられるよ!
外が涼しくなった頃、僕はギターを持って路上に立つ。これも日課のようなものだ。
「はいっ♪」
突然差し出されたアイスクリーム。
目の前には可愛いアルメニア女子三人が立っていた。
彼女たちも日本の漫画やアニメが好きで、三人のうちの一人は日本語を喋ることができた。
「なんでアルメニアに来ようと思ったのですか?」
「なんでって、そりゃアルメニアの女のコたちがカワイイって評判だったからだよ!君たちみたいにね!」
ってこれ日本で言ったら気持ち悪いヤツだけど、待て待てここはアルメニアだぜ?どストレートに言った方が丁度いい。えっ?誰が十分に気持ち悪いって?失礼だな!コミュニケーション能力が高いって言って欲しいよ!まったく…。
宿に戻ると同じドミトリーに新しい人がやって来た。
キヨタさんという40代くらいの日本人の男性の方で、セールスマンをやってらっしゃる方だった。僕よりふたまわりも歳が離れているのにも関わらず、腰が低過ぎるんじゃないかってくらい僕に合わせて話をしてくれる。履いているデニムがどこかかっこよかったので、「どこで買ったんですか?」と僕が尋ねると
「リプチチヒで買ったんですよ」とキヨタさんは応えた。ライプチヒってどこだ?
「みんなそう言うんですよ。ほら、「ライプチヒの戦い」とか歴史でやりませでした?」
「あ!それ聞いたことあります!えっとー..ドイツっすか?」
「ほらね、「ライプチヒの戦い」って言うとみんな分かるんです」
よくわからないやり取りだが、キヨタさんはドイツがお好きなようで、頻繁に足を運んでいるらしかった。キヨタさん自身は楽器はやらないが、ハイドンやシューベルトを好み、絶対音感を持つという謎に満ちた人物だった。それと縦笛(リコーダー)が吹けるらしい…。
この日は夕方から雨が降り、気温もぐっと下がった。
僕が歯を磨いて、トイレでうがいをして戻ってくると、
キヨタさんは上はTシャツ、下はトランクスという格好で部屋の外でタバコを吸っていた。
「なにやってるんすか!?」
と思わず尋ねてしまったくらいだ(笑)
だって部屋にはキヨタさんと僕しかいないんだぜ?なのに、日本人らしく部屋の外でタバコを吸うキヨタさん。しかも外は寒い。
寒さをしのぐように体を少し丸めてタバコを吸う姿はまさに日本で形見の狭い喫煙者の姿のそれだった。
日本のタバコを持って来ており、僕が「一本交換しませんか?」とWinstonのタバコと交換しようとすると、キヨタさんは僕にまるごとワンパケットくだすった。VIRGINIA S.のライト。メンソールで通常サイズよりもちょっとだけ長い。久しぶりに吸う日本のタバコは海外のそれと違ってどちらかと言えば薄味だ。ニコチンやタールが強いとすぐ肺がぜーぜーしてしまう僕にとって、久しぶりに吸う日本のタバコは美味しく感じられた。ありがとうございます。
「明日にはチェックアウトしちゃうんですよね?」
「はい。明日は自動車レンタルしようと思ってるんですけど、13日なんだよなぁ~。なんだか嫌な感じだ。別に金曜日じゃないんですけどね。あぁそうだ。寝る前に薬飲まなきゃ。飲まないとと人格変わっちゃうから!ははっ。なんか変なこと言ったらごめんなさいね」
そう言ってキヨタさんは時差ぼけ解消のための睡眠薬を飲んだ。ちょっと酔っぱらった感じになるらしい。キヨタさん独自のギャグセンスがなんとも子気味よかった。歳の差を感じさせない話しぶり。どちらもお喋り好きということもあって、部屋の電気を消しても夜中の1時まで喋っていた。ここは修学旅行の男子部屋か何かか?話した内容はくだらないことだったり、若い世代の生き方だったり。
僕みたいな20代と話すのは初めてみたいで、2ちゃんねるの意見が若い世代の大多数だとキヨタさんは受け取っているようだった。僕は2ちゃんねるは見ないし、僕たちの世代がどんな物の考え方をしているのは分からない。ただ、同じ日本人同士でも話を聞いてみると色々なことが分かる。
あぁ、楽しいとついつい夜更かししてしまう。
明日は早起きできないなぁ笑。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。