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「インドを発つ前に」

世界一周285日目(4/8)

「チ◯毛って剃るよな?「剃りますよね!」
リュウさんとコウスケさんが示し合わせたように言った。

昨日の夜、コウスケさんたちに誘われてビールを飲んだ。宿の冷蔵庫のミネラルウォーターの奥に隠すようにして冷やしているキングフィッシャー。500mlで100ルピー(169yen)。僕には多過ぎた。お酒は日本にいても全然飲まないし、詳しくもない。日本でキングフィッシャーの同じサイズを買うと700円くらいするそうだ。だからインドで飲む方が全然お得!

ドミトリーに泊まっているメンバーでお酒を飲むなんて初めてかもしれない。下ネタは全世界共通だし、些細な話でもアルコールが入れば楽しく聞けてしまうから不思議だ。昨日ここにやって来たケンジくんという男の子は奄美大島出身。ハブ狩りについての話はマジで面白かった。

「一匹ハブセンター(というものがあるらしい)に持って行くと4千円だったんすよ。でも、去年あたり若い子たちが捕り過ぎたせいで3千円に落ちちゃいました…」と残念そうに話すケンジくん。ハブを生け捕りにしたままセンターに持って行くと報奨金がでるそう。奄美大島の子たちのちょっとしたお小遣い稼ぎだ。捕らえられたハブは皮製品やハブ酒にされるらしい。よっぽどハブが多いんだな…。

同じ日本の話なのに、行ったことのない土地の話を聞くと、まるで日本じゃないどこか別の場所のように聞こえた。僕はお酒を飲むとすぐに顔が赤くなり、眠くなってしまう。ぐっすり眠って目を覚ました。

明日には旅慣れたインドを離れる。
いよいよ中東への旅が始まるのだ。

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世界一周の旅をスタートして9ヶ月が経った。その3分の1はインドだ。もう、『どんだけインド好きなの!!?』ってくらい(笑)。

4年前、初めてバックパッカーをやったのはインドだったし、旅する漫画家としての自分があるのもあの時の経験だったからだ。

「清水が漫画家になるって言ったとき、おれの責任重大だなぁって思ったよ」僕が漫画家を目指すと宣言した時、当時僕をインド旅に誘った友人はそう言った。別に僕は自分で決めたことだし、誰に責任があるとは思わない。

そして4年ぶりにインドを訪れて感じたことは、やはりこの国には冒険と出会いが満ちあふれているということだ。よく分からないところに一人で行った2ヶ月間は様々なインドを見ることができた。同じ国内なのに東西南北で全然違った。シッキムやダージリンなんてインドなのに、住んでいる人たちは全然インド人じゃなかった。この国で出会う人たち、日本の方々がやっぱり多いんだけど、彼らはめちゃくちゃ面白い人たちばかりだった。インドを旅しなければば出会えなかった人たち。彼らの話を聞くことによってまた少し僕の世界を広げることができた。

改めて思うことは、3ヶ月旅したくらいじゃ全然この国を味わい尽くしたことにはならないってことだ。もっともっと行きたい場所がある。またいつか戻ってきたい。インドはそんな国だ。

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その日の午前中はずっとパソコンをいじっていた。こういうデスクワーク的な日も必要だ。いつも情報収集をサボるから、こういうことになるんだけども…。

「カザフスタンビザ取れた!」

興奮した様子でリュウさんがドミでキーボードを叩いている僕に報告した。

「やったじゃないっすか!」

「ああ!これで飛行機のチケットが買えるよ!」

リュウさんは航空券をゲットした後、リカンベントのメンテナンスをし始めた。廊下には様々な道具が散らばっていた。それにしてもリカンベントってすげえマシンだな。


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それぞれの旅が始まるのだ。

僕は大半を日記の執筆(っていうとかっこいいね!)に当てた。一言日記を書くならマジで「一日中パソコンをいじってた」だ(笑)。

問題はイランのネット規制だ。
Facebook、Twitterはもちろんのこと、ブログの更新もできないらしい。

その抜け道として、「VPN」というよくわかんねーものをインストールしたり、いじくったりしているのだが、もう全然わかんねっす…。一応、60日間無料の「インターリンク」というVPNに登録してみたが、サイトの言う通りに設定してみても、接続しない。「つながるもん」というVPNもあるのだが、Macだと設定がよく分からなかった。しかもこの宿ではどういうわけだかVPNが作動しないようだ。「つながるもん」のVPNを持っていたリュウさんが、試しに接続しようとしてくれたがダメだった。インドでもVPNが動かないんじゃイランに行ってもダメかもしんねえなぁ。

幸い、スマートフォン用のアプリ「OPENDOOR」はインストールしておいた。これで使えれば近況報告くらいはできるかもしれない。

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今日は大統領選挙だかなんだかしらないけど、メインバザール周辺はいつもとわらぬ日常が続いていた。誰だよ!?昨日「夜8時以降になったら外出禁止らしいっす」って言ったのは!!
宿のスタッフさんは僕がその真偽を尋ねると、きょとんとした顔で「いや、大丈夫ですよ」と言ってくれた。明日の早朝の出発も大丈夫そうだ。

ずっと室内にいるので、あまりお腹がすかない。大好きなクッキーやマサラ味のチップスを買って小腹を満たした。

新しい世界に足を踏み込む時はどうしても不安になる。

「あ~~~…」とか
「ヘ~~~…」とか
「おなか痛ぇ~~~…」とか
気づいたら口から出ている。

誰かに話を聞いてもらいたい。ポジティヴになれる話を聞かせてもらいたい。

日本人宿は良くも悪くも、安心できるところだ。

『一人で旅をしてきたんだろ?その日常が戻ってくるだけだ。そして孤独ではない。応援してくれる仲間がいるから。新しい出会いもあるだろう。どこの国に行ってもそうだ。新しい環境に身を置くことで得ることはどれだけあるんだい?こんなチャンス二度とないかもよ?ぐだぐだ行ってねえで前に進めよ』

オーケー。

その前にトイレ行ってきていい?

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「中東」

という言葉に含まれるネガティヴなイメージを僕は払拭しきれていない。それは限られたメディアにしか触れて来なかったからとも言える。日本から遠くは慣れた地。知ろうともしなかった。

だが、そこを訪れたことのある人たちの話を聞くうちに少しづつ旅に対する情熱も湧いて来た。

1990年代、毎週土曜、日曜に代々木公園がイラン人で埋め尽くされた話を聞かされると、それは本当に日本の話なのかと思ってしまう。偽造テレホンカードやイラン料理屋があり、日本語を喋れるイラン人が大勢いたそうだ。

「ほんと人がピュアピュアなの!」バラナシで出会ったキューさんが言った。プリキュアみたいだな(笑)
「宗教で自分の命を投げ出せる人たちでしょ。一部な過激な人は別として、インドみたいにスレてないっていうのかなぁ?」キューさんがコーランの話を聞きたいとうっかり口を滑らせてしまった際には2時間以上屋外でコーランの話を聞かされたそうだ(笑)。

「イラン人はいい人たちですヨ。その日にカウチサーフィンをお願いしても泊めてくれます」日本語の喋れるベルギー人、イヤンはそう言っていた。

そういう話を聞かされる度に僕はイランという国に対して興味を抱いた。行ってみないと、見てみないと分からないことだらけだ。この世界を知った気になるのはまだ早い。

僕は明日ここを離れる。


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あっ、ギター直りました。

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3,500ルピー(5,021yen)で最初にお願いした金額よりちょっと高くなったけど。

本当は4,000ルピーだったど、「え〜!最初と話が違うじゃんかよ〜!飛行機間に合わないよ〜!」ってゴネて値下げしました(笑)音も少し変わってしまいましたが、低音が響くようになったのでよしとしましょう!

それではイラン、行ってきます!

現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。