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「ソナの何でも屋」

世界一周275日目(3/30)

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雑貨屋はお休みだ。
今日は日曜日。閉まっているお店も多い。あぁ~…せっかく雑貨の下見に行こうと思ったんだけどなぁ…。
朝ご飯を食べ終わった後、夜中に洗濯して三階に干した洗濯物を取り込んだ。

最近どんどん暑くなってきた気がする。街を出歩くとうんざりするくらいだけど、洗濯を干すにはもってこいの気候だ。シャワーを浴びたついでに洗濯物をして干しておくと、次の日の朝には乾いている。

「今日何したらいいんだろう?予定狂ちゃったよ」

僕のバラナシの予定なんてない等しいのに、そんな風にグダグダしていたら、宿に泊まっている方が「そーだよねぇ。インドいるとそうなっちゃうよね。おれなんて諦めたもん」とベンチに座ってまったりとタバコを吹かしていた。

世界一周の旅に出発してからまもなく9ヶ月が経とうとしている。その旅路の中で一日中何もしないでゴロゴロするようなことは一日たりともなかった。

「何もすることがない」時間は長距離の移動の時だったり、列車を待っている時間だったり、それなりにあるのだが、自ら進んで「何もしない」ということはない。「何かしてないとソワソワしちゃう人なんだ?」新しく宿にやって来たお姉さんがタバコをふかしながら僕にそう言った。自称「旅する漫画家」。実質、無職。日々何かを得ようともがいています(笑)

まぁ、そうだな。雑貨は明日見るとしよう。

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僕はテスコ・ロータスの手提げバッグに漫画道具を入れていつものカフェに向かった。前回の漫画を描いてからまだ2日くらいしか経っていない。こんな短いスパンで次の短編を描き始めるなんて初めてだ。いい感じで描けるんじゃないか?

次にどんなストーリーを描くのかは決めていた。バラナシには「地球の歩き方」にもばっちし載っているくらい有名な日本人向けの「何でも屋さん」がある。漫画から(ONE PIECEが最新刊までそろってる)、日本食品、アクセサリーや文庫本(一日20ルピーで借りられるそうだ)などがお店には置いてある。日本が恋しくなったらここへ行けばいいかもしれない(笑)ちなみに僕はここでヘアゴムを買った。だって最近髪長くて暑いんだもん。

そして、この何でも屋さんの名前は「ソナの何でも屋」という。

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ここのオーナーのソナさん(インド人のすこしおかっぱショート・ボブのおっちゃん)はめちゃくちゃ日本語に堪能で日本人向けにツアーを組んでいたり(もちろんボるとかそういうんじゃない)。香辛料を調達してきてくれたり、列車や飛行機のチケットを取ってくれたりと、文字通り「何でも屋」なのだ。

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最初にソナさんに会ったと時は『スレてんなぁ~』と思った。

インド人の人懐っこいフレンドリーさよりかは、何回か足を運ばないと仲良くなれないバーのマスターみたいな雰囲気。日本語でフツーに会話できるけど、距離感も日本のそれに近かった。だけど、ここのお店の目の前にある古本屋さんに看板娘がいるのだ。

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「いえぇ〜い!!!」 

僕は今まで読んできた「ホテル・ニューハンプシャー」を読み終わってしまったので新しい本が欲しかった。本屋はちょくちょく行ってこまめにチェックしないと、なかなかいい本には巡り会えないというのが僕の持論だ。

その日の漫画製作を終えた後に、よくこの古本屋さんに遊びに行っていたのだが、そこにいっつもいるお姉さんがいた。キューさんと言う。

「あれ?」

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「私ちょっと前よりに座ってるから顔デカく見えるじゃ〜ん!」

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スカッとした人で、外見からは分からなけどインドにディープに染まってて、話が超絶面白い。ソナさんよりもキューさんの方がキャラ強いって言ってもいい(笑)。てかソナさんお店にいないことの方が多いし。

ソナの何でも屋の向かいにある古本屋には店番のアカシというインド人がいるが、彼はいっつもパソコンでYouTubeを見ている。

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キューさんに話を聞くと、彼女はバラナシ大学でヒンドゥー語を勉強しているらしい。そんな学生がなんでいつも「ソナの何でも屋」でたむろしているかというとインドの大学はとってもユルユルだからだ。雨が降ったらお休みなんだとか(笑)。学生が集まらないと教授もやる気が出ないらしくて、すぐに休講にしてしなう。そんな大学だからね、ほら、ヒマなんだよ。
キューさんは大学が終わってからソナの何でも屋に顔を出すみたいで、僕が漫画製作を終えて本屋に遊びにくる時間と丁度かぶっている。僕が旅する漫画家であることを教えると、

「じゃあ、「ソナの何でも屋」描いてよ!」とキューさんは言った。

「えっ?「何でも屋」って「探偵」っすかねぇ?」

「いいねぇ~!この本棚の後ろには秘密の階段があってね、そこに事務所があるってのはどう?探偵業をやる時はシャッター「ガラガラ~」って閉めちゃってさ♪」

「ベタっすねぇ~。そしたら、周りの人にバレないように合い言葉が必要じゃないですか?」

「「カルダモンが入ってますねぇ~」
なんてどう?」さっきチャイを飲んだ時にキューさんがぽそっと言ったセリフ。

「じゃそれで笑!その合い言葉と共にシャッターが閉まるんですね」

その時は単なる妄想のお話だったんだけど、形にするならこのタイミングしかないなと思ったのだ。

インドも残すところ10日。次はいよいよ中東に入る。デリーでは「一日限りの雑貨屋」の仕入れも待っている。ガッツり漫画を描くなら今しかない!

というわけで、原稿用紙に向かった。やっぱり一本描き終えた後なのでいい感じに腕があったまっている。この日の製作状況は下描き2ページまで。目標は下描き1日~半日だけど、まいいか。明日からペン入れいけるぞ!



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そして僕は昨日の(尻)相撲兄さんたちに会うべくもう一度メインガートの近くまで行ってみることにした。だがこの日はお兄さんたちの姿を見つけることができなかった。しばらく階段に座りながら僕は相撲兄さんたちのことを待っていたのだが昨日と同じ場所では何かの海上の設営が行われていた。

近くにいたインド人に尋ねると今日はダンスプログラムがあるそうだ。それなら今日は相撲はないかな。僕は一旦宿に引き上げた。



19時になってさっきのガートへダンスを観に行くと大勢の観客が階段に座っていた。

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ちょっ、目ぇ怖いって

トータルで3ヶ月以上インドを旅してきて、最近タブラの音が好きになってきた。大小2つの打楽器から実に様々な音が出る。シタール、オルガン、ジャズのスキャットのような合いの手。

インドのセクシーなダンスに合わせ生演奏がスピーカーから流れる。

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常に何かしらのことが起こり、誰かしらに巡り会うインド。バラナシが僕は大好きだ。

ヒンディー・ミュージックが心地よく耳に響いた。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。