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「ゴビ砂漠には行けなかったけど」

世界一周21日目(7/19)


道は2つに別れていた。

険しい道となだらかな道。

僕はちょっと迷って険しい方の道を選んだ。

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僕はロシアンジープに揺られて、ヨヒアンの谷にやってきていた。

自然保護区に指定されているヨヒアンは訪れる者を圧倒する。

ジープの入れない観光エリアに到着すると、ドライバーのデンバは僕に3時間の自由時間をくれた。

僕は肌身離さずもっているMacやその他のノートの入ったサブバックと、パンと水1,5Lが入ったビニール袋をぶら下げて、黙々と進んで行った。

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途中、何人かのツーリストとすれ違った。

僕は引き返さずにできるだけ奥の方まで行ってみようと思った。

時間の許される限りこの渓谷を突き進んでいこうと。

進んでいる小川を何回も跨ぎ、流れが急なところまで辿り着いた。

2キロ近くあるサブバックと一眼レフ、KEENのシューズですら滑りやすくなったこの場所で引き返すことにした。

まあいいさ。時間はあるんだ。

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僕は引き返す途中で、ひとつの小高い急な山を登ろうと考えた。

誰が言ったのだろう「バカは高い場所が好き」ってー...

たぶん一定の割合で僕みたいなヤツが高いところに登るんだろう。危険を顧みず高所に登る、そして落っこちて怪我をする。

周りの人間がソイツを笑いながら言う。「ほら言っただろ?危ないからよせって。バカだなあ」と。

きっと笑ったヤツらは高い場所に登ったことのないヤツらだ。

失敗しても、怪我をしてもいいじゃないか。死ななければまた何度だってチャレンジできるし、今度は同じ失敗をしなければいい。




あのてっぺんから見える風景が見てみたかったのだ。

僕はサブバックを中腹に置いて一眼レフだけたすき掛けにし一歩一歩慎重に登っていた。

だが、下から見るよりも谷は険しく、頂上は思っていた以上に遠い。

しかも帰りのことを考えると、またしても僕は途中で引き返さざるを得なかった。

夢だった世界一周を叶え始めてまだ間もないのに、ここで死んだら元も子もない。

引き返すことの大切さを身を以て学んだ。

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僕は最後に登りやすそうな小山を選んで登ることにした。

ちょっと高度が上がったせいだろうか?心拍数も早く、息も荒い。

僕はサブバックと一眼レフに気をつけながら小山を登った。

時々休んで呼吸を整えながら中腹程度まで登ると、人が豆粒のように見えた。やはり見た目以上にこの小山も高く険しかった。

なんとか頂上まで登ると、自分の登ってきた地点がだいぶ下の方に見えた。ちょっとした達成感を味わうことができた。


僕はハーモニカを取り出し一曲吹いた後、風に向けてハーモニカをかざした。

今まで聴いた事のない様な大地の音が聞こえた。

そうだ。昔読んだ高橋歩の本の中で、彼も同じようにモンゴルの風の音を聞いてたんだっけ。

そこでもこんな音がしていたに違いない。

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頂上にある岩に腰掛けると、岩の間に腕時計が置いてあった。

僕より以前にこの小山を登って、ここから見える景色と同じ物を見た人がいたのだ。

僕はその腕時計を持って帰ろうかと思ったけど、やめた。

その人の想いをここに留めておこう。


引き返す勇気も大切だ。

だが、険しい山を登ることによって見ることのできる景色もある。

僕の選んだ「山」は一体どんな景色を見せてくれるのだろう?

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なんとか苦労して反対側から下山して、僕はデンバに「ありがとう。十分楽しんだよ」と言ってホームステイ先のゲルに向かった。





今回のツアーでもゲルに泊まることになっている。そこで迎えてくれたのはホルスさんという方だった。

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ホルスさん一家の他にも他の家族のゲルもあり、子供たちが沢山いた。

僕はさっそく彼らとコミュニケーションを図ったのだが、彼らは突然の来訪者に心を開いてはくれない。

僕は仕方なしに一人でギターを弾いているとどうだろう。突然子供たちの目の色が変わり、彼ら叙々に興味を持ち始めた。

最初の観客は2人だったが、だんだん他の子供たちが集まってきた。

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世界一周という旅に出てから音楽の持つパワーを何回も感じた。ちょっとイカツいお兄さんですら、ギターの弦を振るわせるだけで仲良くなれるのだ。

子供たちと仲良くなったあと、まだ日の明るい草原で走り回って遊んだ。


3~4歳くらいの子供たちのお気に入りは、ジャイアントスイングだった(笑)。

彼らの手を持って遠心力にまかせて3回転ぐらい回してやると

「もっと!もっとやって!」と終わる事のないアンコールに僕もへとへとになって(ここは標高が高いんだっけ?)「もう無理!もう勘弁!」と彼らから
逃げないわけにはいかなかった。





夕日が沈むみ、ヤギたちが戻ってくると、ホルスさんたちはヤギを数珠つなぎにし、乳搾りが始まった。

彼らの日課なんだろうな。ホルスさんも子供たちもみんなでヤギの乳を搾る。僕も挑戦してみたが、けっこう難しかった。

乳搾りを終えるとヤギたちは解き放たれ「メ~!」だの、「ぶっ!」だの(マジで時々「ぶっ!」って音だすんだよ!)言って、気ままにゲルの周辺を歩き回っていった。

まさかヤギに乗れるとはね。おみそれいったよ。

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この日の夜は早めにベッドにつき、満点の星空を見ようと12時に起きた。

寒くて外には長い間出ていることはできなかったけど、モンゴルで見える星空は格別なものだった。

それよりさっきからお腹がピョロヒョロ言ってんだけど、やっぱ馬のミルクはまずかったかなぁ?



現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。