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「パーイへ」

世界一周127日目(11/2)

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インドビザの受け渡しが一週間後とのことなのでそれまでチェンマイを離れて別の場所に行ってみることにした。

Pai(パーイ)行きのミニバスのケットは片道160バーツ(507yen)。もちろん朝イチのものだ。早く着いた方がその分行動できるので、僕が買うバスのチケットは午前中に目的地に到着するものばかりだ。

同じ宿に泊まっているフランス人のおっちゃんが言うには「パーイはアーティスティックな町」らしい。夜な夜な音楽が流れ、沢山のミュージシャンがいて、オーガニックな食べ物や路上ペインターもいるとかなんとか。「バスキングするのに向いてるんじゃないかな?」フランス人のおっちゃんはそう言った。他の人のブログでパーイがどんな町なのかはちょっと知っていた。ブログから得た印象は「女のコが絶対好きになるカワイイ町」というものだった。でも、こうして他の国の旅人から得た情報でパーイの町を違った見方で見ることができる。

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朝8時にやってきたピックアップのドライバーのおっちゃんはファンキーなヤツだった。

「ほれ!行くぞ!さっさと乗り込め!」と笑顔で乗客たちをせかす。簡単な挨拶くらいの日本語を知っていたし、後から乗り込んできた中国人の女のコたちとは中国語で会話していた。

そして、隙あらば女のコの体をペタペタ触る彼のスケベっぷりを垣間見た時、そのフランクなキャラ作りに感心せずにはいられなかった。だってあんなドライバー今までみたことないもん笑。

パーイまでの道のりはくねくねとしたカーブの連続、曲がる度に「G」のかかる山道だった。そして何故かミニバンの全ての座席には頭を支える部分がなかたった。アクシデントとか壊れてしまったとかで座席の頭の部分がないとかそんなんじゃない。ミニバンの中は比較的綺麗だったし、どう見ても意図的に外されているのだ。

寝ようとするとミニバンが山道に揺られる度に頭を支える部分と座席をジョイントするプラスチックの部分に「ガチガチ」とぶつかり、とてもじゃないが眠る事なんてできない!
これはあれか!?「パーイに着くまでは一瞬たりとも寝かせない!!!っていうドライバーの意思表示かぁッ!確かに頑張って運転しているのに乗客がぐーすか寝てたら「誰が運転してやってると思ってるんだ!」ってなるかもね。

パーイまで続く山道を何度も横に揺られたため吐きそうになった。お腹の中で今日食べた物がシェイクされているのが分かる...

出発前に30バーツ(95yen)で頼んだトーストはバターオンリーの味付けだったばかりかそれはそれはチンケなものでその値段に納得できなかった僕は近くのセブンイレブンで13バーツ(41yen)のカップヌードルを食べた。

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それに加えて途中休憩で停まった小さなレストランに10バーツのリンゴが売っていた。昼飯を食べないつもりだったのでお腹をふくらませるためだけに買って食べてみたところ適度な甘さに「シャキシャキ」とした触感!思わず2コ喰った。

やばい!このまま調子に乗って食べ続ければ吐くこと間違いなし!そうなってしまっては僕のあだ名が「ゲロ夫」になってしまうことだろう!

欧米人A:「いやぁ〜〜...パーイ、マジクソ楽しかったよね!」
欧米人B:「うんうん!でもさぁ行く途中の"ゲロ夫"がさぁ〜...」
欧米人A:「"ゲロ夫"なっ!マジでなかったよなっ!」
欧米人A&B:「はっはっはっはぁ〜(笑)」

ピスタチオの殻を向きながらビールを飲むヤツらの顔がありありと浮かぶ!そのような事態は絶対に避けなければならない!

僕は一番後部座席に座っていたんだけど、横の席には誰もいなかったので足を伸ばして横になった。ちょっと申し訳ないなと思いながら。
iPhoneからマイナーなサーフミュージシャンの音楽を聴いて窓の外の景色を見る。チェンマイの町とは全く違う。豊かな自然。こんな場所にアートの町があるのだろうか?

そうこうしているうちにミニバンはパーイの町に到着した。



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そこまで広くはない路上には沢山の観光客の姿があった。

ミニバンを降りるとチェンマイのゲストハウスで会ったフランス人のおっちゃんのおススメの宿を探した。シングルで100バーツ。部屋にはWi-Fiもシャワーもついているらしい。だが、辿り着いたその宿では値段が上がっていたばっかりか、100バーツの宿はすぐ隣りの宿だと言う。しかも隣りの宿(100バーツ)にいたっては予約が入ってしまっているので泊めてあげれるのは2日間だけと言う。むう...。

この「重たいバックパックを背負って安宿を探す」がお決まりのパターンになっているなぁ。だが、そのすぐ後に衝撃的な看板を僕は見つける事になる。

「ドミトリー80バーツ(253yen)」
タイに来てついに100バーツを切る宿を発見した。

僕は迷わずそこにチェックインして荷物を置くとパーイを歩き始めた。

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パーイの街並みは確かに可愛かった。観光地化された町というところだろう。カラフルな店が立ち並び、ついついカメラを向けてしまう。

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もはや雑貨があり過ぎて何を買っていいのかわからないくらい雑貨屋さんがあるし、カフェやバーも沢山ある。バイクなんて100バーツで借りることができる。周辺の温泉や滝へのツアーも充実している。
モロにアートというわけではなかったがパーイという町を売っていこうとする熱意のようなもは感じる事ができた。


そろそろ宿に戻ろうかというところで日本語のレビューが書かれた看板を見つけた。

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「貧乏な旅人、学生には超オススメです!」なんてそんなことが書いてある。おれじゃん。突っ立ってレビューを呼んでいると中から愛想のいいタイ人が声をかけてきた。

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アローさんはここで日本人向けのゲストハウスを営んでいる。

日本には2回訪れたことがあり、日本のことが大好きなアローさん。日本人の旅行者を見かけるとついつい世話を焼きたくなってしまうと言うホスピタリティーの持ち主だ。
宿には最近訪れた日本の学生たちのレビューノートを読ませてもらったが宿泊からツアーからまでいろいろと充実しているみたいだ。

アローさんは「コーヒーを飲むか」と訊いてきた。「いや、いいっすよ」と僕が遠慮すると、「問題ナイ♪問題ナイ♪」と世話焼きのおばちゃんみたいにインスタントコーヒーを作ってくれた。アローさんと楽しくお喋りして僕はいったんゲストハウスに戻った。


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アローさんが言うには今日はローカルなお祭りがあるらしい。

夕方の町をプラプラぶらついて僕がギターケースを置いたのはセブンイレブンの前。どこもかしこも露店が出ていて人通りもそれなりにある。楽しくやること!今の僕にできることはそれだけだ。

歌のうまい棒立ちシンガーとか僕はイマイチ惹き付けられない。下手でも、アジがあって、「おれはここにいるんだぞ〜!」って魂込めて歌うヤツの方が僕は好きだ。曲に気持ちを込めて。音楽に合わせて体を揺らしながら僕は歌う。

子供連れのお父さんとかがニコニコしながらこっちを見ているとなんだかこっちまで笑ってしまう。なかには水とジュースを差し入れてくれるあんちゃんもいた。僕が断ると、「plesent for you」と笑顔で去って行った。

観光客のリアクションは薄いけど、ようは「どこまでバカになれるか」だと僕は思う。やらなきゃ始まらない。一歩下がったら、次の一歩が遠のく。

アガリ276バーツ(873yen)。

目の前をパレードが横切って僕の路上は終了した。

タイのみんなが銅鑼をじゃんじゃん鳴らし、楽しそうに踊っている。楽しいのが一番だ。

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帰り道アローさんに呼び止められた。
ガールフレンドの美容院の椅子に座りながらさっき会ったときよりもオシャレな服を着ている。お祭りで踊って、足が疲れたなんて言っている。

アローさんは「何か飲むか?」と言って、僕の遠慮なんて気にせずセブンイレブンでタイのお酒を買ってきてくれた。
お酒を飲みながら話したのは日本とタイの人当たりの違いだ。オープンマインドのタイに比べて日本人は内にこもり、なかなか心を開かないだとか。

まぁ、よく聞く話なんだけど、アローさんの宿に泊まった日本人の旅行者たちの話を聞いてだんだんとアローさんの苦悩の様なものが見えてきた。
日本人の旅行者たちの中には僕みたいに長期の貧乏旅行をする人もいれば、ツアーなんかにお金を使ってめいいっぱい楽しむ旅人もいる。

そしてなかにはもちろんヒッピーのようなライフスタイルを実践しにここでアローさんのご厄介になるヤツもいるようだ。そしてお金を落として行く人間は彼らなのだという。

アローさんはヒッピーのような旅人ではなく、もっと広く色んな旅行者と仲良くしたいようだ。けれど、話を聞いているとやっぱりお金のためには仕方ないのかなとも思わなくはなかった。

そういうのを聞くといいとこだけ利用されてる気がするよ。
お互いリスペクトを持って通じ合えたらいいのに。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。