「女のコたちときゃっきゃうふふ in アルメニア」
世界一周313日目(5/7)
「あ~、やる気でねぇ」というのが朝の口癖だ。リダさんちが自分の家にいる感覚に近くなってきたことは間違いないだろう。ここにいると活動する気が起きないんだよなぁ~。今日はそのまま作業場には直行せずに日記を書いて時間を過ごした。
全然関係ないけど、今世界中のコカコーラでは各国のキャンペーンガールが自販機に印刷されている。僕はアルメニアのこのコが「推しキャンペーンガールだ」。
そしていつものようにメトロに乗って向かった先はクイーン・バーガーのある駅ではなく、そこからさらにふたつ離れた駅。オフラインのマップアプリでオペラの場所を確認して「彼ら」が来ているか辺りを見渡す。うん。まだ来てないようだな。その前にあれやっちまうか!
gorillapodを装着した一眼レフをいい感じのポジションにセッティングする。せっかくだからデッド・ベアのレックスくんにも出演してもらおう。
僕が撮ろうとしているのは仲間の結婚式のサプライズ・ムービー。お祝いの言葉なんて初めて言うよ。なんて言えばいいんだろう?
オペラの前で僕はカメラのモニターを何回も確認してRECボタンを押した。オペラ前で一眼レフと格闘しているアジア人を周りの人は面白がっている。けど、気にしててもしょうがない!
友達のアイデアでどんな風に映像を撮るかは決まっていた。ギターを持った僕がPenny Boardに乗ってフレーム・インしてくる。そこでお祝いの言葉を述べて一曲唄う。そしてPenny Boardに乗ってフレーム・アウト。唄う曲はウルフルズの「バンザイ!好きでよかった」だ。披露宴にはピッタシの曲。フルコーラスだけでは長過ぎるので、ワンコーラスだけ唄って終了だ。気持ち悪いロン毛の旅人が熱唱する3分間の動画。会場は爆笑の渦に巻き込まれること間違いなし!あとはクイーンバーガーのWi-Fiからこれを送るだけだ!撮り直し命じられたら…。うん。その時はその時だよね。
「お待たせしました♪」
やって来たのは小柄なアルメニアの女のコ。ヘギンちゃん。
おかーさーん!。僕にもようやく春がきたよ~!誰かに言われた「シミくんってモテキの主人公に似てるよね」って言葉が忘れられないよぉ~~~!!!なるたけ冷静さをふりかざして「じゃ行こっか」と言う。1cmだって飛べません。事務所まで向かう途中、ヘギンの妹も合流して3人で並んで歩く。女のコはべらせるとはこういことを言うのだろうか?
そして大きな建物の中に僕は連れ込まれた。
高鳴る心臓。これってもしかしてー…
はい。部室ですね。
というのも数日前、路上で唄ってたら、アルメニアで「HANA」という日本語の曲を演奏するガールズバンドのコたちに声をかけられたのだった。「よかったら一緒に唄いませんか?」とお誘いをいただいており、前日Facebookでヘギンとメッセージのやりとりをして、今日オペラの前で待ち合わせすることに決めていた。今度こそは約束をすっぽかされたりしません!
日本のカルチャー大好きな女のコの感じが全開の部室。壁には彼女たちの手によって壁一面に桜の絵が描かれていた。この部屋は大学の構内にある。メンバーの「つて」でタダでこの部室を借りているそうだ。「この人が私たちのボスよ」といって紹介されたのはなんとも人が良さそうな教授だった。
練習は別の場所でやっているらしく、ここは事務所的として使っている。別にプロのミュージシャンとかいうのではなく、仕事に就いているメンバーもいた。ヘギンも明日出張らしい。僕より歳下なのにしっかりしていることは間違いない。
「HANA」の他のメンバーも集合して、色々お話させてもらった。
Q,「なんで日本語の曲を歌おうと思ったの?」
A,「きっかけは2011年の日本の震災だったの。それで私たちは日本に関心を持つようになったのね。アルメニアの他の人にも日本に関心を持ってもらおうと、日本語の曲を歌おうと思ったの」
彼女たちはアルメニアで日本語の歌を唄う初めてのバンドなんだそうだ。テレビにも2回ほど出演したことがあるという。
彼女たちのつながりは、同じ大学の生徒。担当は全員ピアノ。ヘギンの妹がギターも低そうだけど、なんかゴスペラーズみたいな感じなのかな?ちなみに日本語はヘギンのみが喋れて、あとは英語でのお喋りでした。
「それじゃあ何が唄えるかしら?」と、ここで高度な要求が僕に求められた。んなこと言っても、コード抑えるだけで精一杯なんだよなぁ~…
「どんな歌が唄えるの?」
逆にこっちが質問してみる。「上を向いて歩こう」とかベタなのだったら唄えるよ!!??
「えっと、斉藤和義の「優しくなりたい」とレミオロメンの「3月9日」、嵐とか、ラピュタもー」
「ラピュタでお願いします!(即答!!!)」
ヘギンのスマートフォンでコードを調べてもらい、そこから一時間は練習。若干キーが低いけど、HANAのメンバーは自分の持ち歌だけあって、綺麗に合わせて唄うことができている。僕はひたすらコードを抑えるだけ。今回は伴奏者に徹します!
思うのがー、
(頼むよONE PIECEみたいに回想をはさませてくれ)
ほら?よく小学校で合唱ってやらされたじゃない?そういう時って大抵ピアノを習っている子が伴奏者をさせられてたよね。あの時、ピアノなんてこれっぽっちも弾けない僕は「ピアノが弾けるんだから、伴奏者をやって当然っしょ?」って考えてたけど、よく考えたらあれって半強制だったんじゃないかなぁって思うわけさ。けっこうピアノ弾ける子って頭よくなかった?きっと彼らは頼まれたら『えっ!?私、ピアノ教室の課題曲の練習もあるし、塾の勉強もあるんだけど!』ってなってたと思うんだ。もちろんピアノ弾くのが大好きだった子もいると思う。だけど、唄わない伴奏者をやってみると、小中でいつもピアノの伴奏者をやらされてるクラスメートを思い出したのだ。まぁ、僕の方は楽しいけどね!だってこんなカワイイ娘と一緒にできるんだもん!デヘヘヘヘ~!
彼女たちのFacebookページに公開する動画を撮った。自分の気持ち悪いくらいに
ニヤけた面を見ると少しヘコんだのはここだけの話。
「時間とか大丈夫?さっき授業があるって言ってなかったけ?」
一応今回のセッションは13:00~15:00ということになっていたが、その時刻はとっくに過ぎてしまっている。
「行きません!楽しいかったら行かないって決めてました♪」っといたずらっぽく言うヘギン。やべっ…。私、惚れちゃうかも…。
「じゃあ何か食べに行きましょう!」
HANAのメンバーたちと一緒に一軒のローカルなご飯屋さんに入る。ここのラマジョ(だったけな?)はエレバンで一番美味しいらしい。メンバー最年長のアニーはティッシュでテーブルを軽く拭き、別のティッシュでグラスと取り皿をひとつひとつ拭いた。け、潔癖…。出て来たのは薄焼きの生地にミートが乗ったもの。それを丸めて食べる。
出された食べ物が美味しかったのはもちろんのこと、ここでローカルな食べ物が食べられることが僕は嬉しかった。いつもパンやトマト、お昼はカプチーノ、夜にそこら辺で売っているケバブみたいなのを食べる。そんなみたいなお決まりの食生活だったからこそ、その美味しさもひとしおだった。
お金を払おうとすると、みんなが「今日は来てくれてありがとう。ここは私たちが払うから大丈夫よ」と言ってくれた。一夫多妻制だったら、迷わずみんな僕の嫁にしていることだろう。
日が沈むまでの残った時間、僕は仲間の披露宴のプログラム作製をしたかったので、そのままクイーン・バーガーに向かうことにした。よくバスキングをする通りやリパブリックスクエアを抜け、歩調を女のコに合わせる。ゆっくりと僕たちはクイーン・バーガーまでの道のりを歩いた。
「それじゃあね。今日はありがとう」
「こちらこそ。とっても楽しかったよ」
そうお互いにお礼を言って、僕たちは別れた。
毎日がこんな出会いばかりじゃない。だけど、こういう数少ない出会いだからこそ、僕はそれを愛おしく思えるのだ。
バーガー屋のドアを入ると店員さんたちがニコっとして僕を迎えてくれた。いつもと同じテーブルについて僕は原稿用紙を広げる。けっこういい感じでノれている。明日には完成できそうだ♪
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。