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「帰ってきたと感じる場所が世界にはある」

世界一周258日目(3/13)

「Wake up!」

そう言って起こされたのが朝6時半。

ここはインドの自治州シッキム、
ガントックという街のポリス・ステーション。

脱ぎ捨てた靴下を履き直し、KEENのシューズを履くと、僕はカウチに敷いた寝袋をたたんだ。歯を磨いた後、警察署の裏にある汚いトイレでうんうんをかましてやった。
もう、十分だ。ダージリンへ戻ろう…。パーミットは15日間の滞在が可能で、あと4日ほどの残ってるけど、いいよ。けぇる。

警察署から歩いて30分。ダージリン行きのジープが出るターミナルで朝イチの便に乗り込んだ。

ガントックかー…、
僕が抱いた良い印象。そうだな、

街が大きくて小綺麗だった。特にメイン・バザールはちょっと上品な感じがする(ちょっと路地裏に入ればバッチし汚いけどね)。ヒマラヤが見れる絶景ポイントへのアクセスやトレッキング・スタートエリアへの出発地点としてジープやバスの便が多い。黒タイツにミニスカートを合わせる、高校生くらいの女のコの制服がOLみたいでセクシーだった。そのくらいかな?

その街に長くいればいるほど、その街がどのようなものか分かってくるだろう。

だけど、『この街は合わないな』というフィーリングも僕は大事だと思う。ガントックはちょっと合わなかった。いつもだったらアホみたいに大音量で音楽をかけるジープだが、今回はどういうわけか音楽をかけない静かなジープだった。一番後ろの座席の窓側。音楽を聴きながら外の景色を眺めた。

これで山に囲まれたシッキムとはお別れだ。

インドのビザとパーミット(無料だ)さえあれば訪れることのできる場所だったけど、まるで別の国に来たような印象を受けた。僕たち日本人に近い顔を持った人々がそこでは暮らし、慌ただしい喧噪からはかけ離れた生活を営んでいた。アウトドア・レジャーを観光資源としてトレッキングなんかに力を入れている、そんな印象も受けた。

僕が旅したのは西のエリアだったけど、他のエリアはもっとそういったレジャーが観光客向けに開かれている。山を歩くのが好きな人はシッキムのことが気に入ることだろう。まぁ、道路の状態はお世辞にも綺麗とは言えないけどね...

ダンプカーが走ると粉塵が舞った。
空中に浮かんだ粒子が日の光を受けると、どこか綺麗に見えた。



4時間かけてダージリンへと戻ってきた。

運転手が「ホテルは取っているのか?」と僕に訊く。大丈夫。どこに泊まるかはもう決めてる。メイン・バザールでバスキングを終え、荷物を置いていた「Hotel Noling」へと戻った。

受付の小柄な男の子は困ったように笑いながら、カラーボックスのような簡素な作りの木製の椅子を持ち上げて、中から預けておいた荷物を取り出してくれた。

8日間も預けていたけど、何か盗られたなんていう杞憂は一切浮かばなかった。そのまま部屋にチェックインして二日分のお金を支払った。レシートをもらっておこうかと考えたが...
いや、いいや。ここでは過度にお金を請求されるなんてことはない。

給湯器から出てくるお湯をバケツに貯めて体を洗って、洗濯を済ませた。宿の下にある同時経営の旅行代理店で久しぶりのWi-Fiにありつく。僕がちょっとの間離れていてもSNSはなんら変わらない。みんないつもの日常を投稿しているだけだった。

5ルピーで少し多めにチャイが飲める馴染みの人が3人もいれば窮屈に感じてしまう小さなお店。

お店のおばちゃんは「coming!」と言って、僕を迎えてくれた。

「あなた昨日TVに出てたわよ。チョーラスタで唄ってたでしょ?いい歌だったわよ♪」おばちゃんが嬉しそうに話す。

チョーラスタで唄ってたのは3月1日、2日の二日間だ。カメラなんてなかったけどなぁ。スマートフォンの投稿かな?

「へぇ~...」

チャイが入ったガラスコップから白い湯気がゆらゆらと立ち上った。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。