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「セルビアからハンガリーまでヒッチハイクで行くとどうなるか」

世界一周415日目(8/17)

うぅ~…そろそろ起きないとなぁ…。

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寝袋から顔を出すと、
公園内にはチラホラと人の姿が見えた。
iPhoneで時刻を確認する。

おいおいまだ7時前だぜ?

トラムやバスは朝も早くから運行しているのを見ると、
やっぱりここがヨーロッパなんだなと思う。

明るくなると自分の寝床も丸見えだ。起きなきゃ。

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ここはセルビア、
首都ベオグラードのバスターミナルのカフェの裏。

昨日人の気配を感じて度々辺りを確認したんだけど、
誰も周りにはいなかった。

朝になってみて分かった。
隣りでホームレスが寝ている。
って僕もか。

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再度、Wi-Fiの入る隣りのバスターミナルへ行き、
次の目的地までのヒッチハイク情報を確認する。

向かう先はハンガリー、首都のブダペスト。

セルビアからハンガリー、オーストリアと抜けて
最短距離で駆け抜ける。

またシェンゲン協定加盟国へと舞い戻るわけだ。

たいして時間調整にはならなかったけど、
一週間の時間的な余裕はできたわけだ。


繰り返すけど、
シェンゲン協定を結んでいる
ヨーロッパの国々では

「すべての180日間において90日までの滞在」
しか認められていない。

一部の国は日本との二国間協定を優先するから、
中には三ヶ月くらいいても平気な国もあるようだ。

でもさ、なんなの??
すべての180日間って?
いつになったらリセットされんの?
意味プーです。


バス停で昨日買った食糧のパンと
リンゴを食べていると、
物乞いのおばさんが僕に食べ物を求めて来た。
なんだか酸っぱい臭いが鼻をつく。

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「悪いんだけど、自分の分しかないんだ」

そう素振りで伝えると、
おばさんはプイっと隣りのバス停に止まっていた
バスの中に入って行った。

優しそうなおじさんが物乞いおばさんに、
ホールケーキかチーズみたいなパンを渡した。

すげえ。

たぶん、でっかい安く売ってる
パンか何かだと思うけど、
それをまるって差し出せるってすごい。

けっこうなボリュームだなぁと思って、
眺めていると再びおばさんが僕の元にやってくる。

「なぁ、あんた食べ物よこしな」
とでも言うように。

『その手に持った
ホールケーキはなんだ??!!』

「それだよ!それ!」
と僕はジェスチャーで抗議する。


「チッ!ケチな男だね!」

そんな感じで物乞いおばさんは去って行った。

てか、二度も来るなよ。

そんなに僕のリンゴが欲しかったのか…???


僕はやって来たバスに乗り込み、
ハイウェイの入り口へと向かった。

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運賃は払わなかった。

だってドライバーは引きこもりだし、
どこでチケット購入するのかも分からなかったから。



ヒッチハイクポイントにたどり着いたものの
そこは絶賛工事中だった。

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でも、ハイウェイに出ればなんとかなるだろう。

気分はスタンバイミーの主人公だった。

僕一人しかいないけど。


工事の終わっていない高架線下の砂利道を通り、
靴を土で汚しながらハイウェイまで出た。

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ハイウェイの工事は何も悪いことだけじゃなかった。

片側車線を工事現中のため
車がスピードを落として迂回してやってくるのだ。

ここならなんだかヒッチハイクができそうな気がする。

サイトになんて書いていない。
そういう自分だけの発見のような物が少し嬉しい。

ハイウェイ脇に座って、バックパックを降ろし、
プロッキーを使って段ボールに
「BUDAPEST」と大文字で書いた。


「それじゃあ、今日も始めますかね!」

バックパックを背負ったまま
ボードを掲げて反対側の腕を伸ばし親指を立てる。

これじゃあ反射でボードの文字が見えずらいかな?

など気にして、
できるだけ運転席に目線を向ける。

車は時速30kmも出さずに
工事現場を迂回してやって来たが
手応えの様なものは感じられなかった。


いつもはハイウェイでのヒッチハイクは
違法行為だとか言ってやらなかったが、
セルビアにおいてのヒッチハイクは勝算があった。

海外でのヒッチハイクを調べてたら出て来た
YouTubeで大学生の男の子が
セルビアのハイウェイでボードを掲げて
ヒッチハイクをしている動画を見つけたのだ。
2012年くらいの動画だったと思う。

しかも彼はわずか3分で車をゲットしていた。

動画を見ている側からしてみたら
3分って長く感じるけど、
ヒッチハイカーからしてみたら
あっという間だかね!

きっとここでもすぐに車が捕まるはずー!
みなさ~ん!僕と一緒にドライブしませんか~!


そんな僕に中指を立てて来るヤツ。

はっはは…そんなんじゃめげませんよ。


ヒッチハイク開始10分後で
すぐに車が停まってくれた。

「どれくらい待ったの?」

「10分かな?」

「ワオッ!」

乗っていたのはブルガリア人のお兄さん、
スウェーだった。

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本当はもっと難しい名前で、
僕みたいに外国人にとって
分かりやすいニックネームを教えてくれた。

スウェーは僕と同じように長い髪を後ろで束ね、
ツーブロックみたいな髪型をしていた。
腕には色のついた刺青が彫ってある。


それでも彼からは
親近感のような物が感じられた。

「類は友を呼ぶ」そう言ってもいいけど、
やっぱりヒッチハイクに理解のある人は話していて楽しい。

そんな彼だが、ドイツ在住で
ITの仕事に就いているらしい。
働いている時ってどんななんだろ?

スウェーもブルガリアを
ヒッチハイクで旅したことがあるそうだ。

人生初めてのヒッチハイクは
わずか30秒で成功したらしい。

もしかしたらブルガリアは
ヒッチハイクしやすい国なのかもしれないな。


スウェーも僕みたいな貧乏旅をしていたようだ。

ほとんどを野外で寝て、宿には泊まらなかったそう。

「君が僕にとっての2人目のヒッチハイカーだね♪」

スウェーは嬉しそうにそう言った。

前回のヒッチハイカーは彼と同じ
ブルガリア出身のアーティストだったそうだ。

パペットを使った人形劇かな?
それに僕と同じくギターを持っていたそう。

スウェーの車にも彼のお母さんからの
誕生日プレゼントだという
上下段それぞれに20ホールもある
複音ハーモニカが置いてあった。


車からはどこか馴染みのある音楽が流れていた。

インドやネパール、仏教圏で聴いたあの感じだ。

スウェーはヨガや瞑想をやるそうで、
そういった「気」の流れみたいなのを
大切にしているそうだ。

「これがリラックスさせてくれるマントラなんだよ」

一曲一曲の説明を交えてくれた。

食にも気を遣っているらしい。

やっぱ同じ様な波長を持つ人と
遭えるようになっているのかもしれない。

お喋りをしながらのドライブはあっという間だった。

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セルビアからハンガリーへと続く道。
国境前の4km。そう書いた看板が見えた。

「ウソだろ…」

目の前には長蛇の列。

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僕が連想したのは
バイオハザードのTウィルスから隔離されて、
門の外へ逃げようとする人たちの群れのようだった。


どこの国の人だろうか?

そんな車の列に混じって、
少し薄汚れた身なりをした人たちが
ドライバーに話しかけている。

僕たちの乗った車に腕に
包帯を巻いた中年の男性が近づいて来た。

すぐに車の窓ガラスを閉め切るスウェー。

完全に窓の閉め切った「ピキッ」という音がわかった。

「コイツらにお金をあげるかい?」 

さっきハイウェイの料金所を越える時に、
僕はスウェーに余ったセルビアのお金を渡した。
そのことについてだ。

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「やー、彼らが何か
パフォーマンスするなら話は別だけどね」

「おれ、今日はブダペストで
友達と待ち合わせしているんだ。
これは5時間かかるね」

「どうするの?」

スウェーは車にとりつけた頑丈そうな
スマートフォンのGPS機能を使って、
別のルートを探しだした。

「よし!こっちに行こう」

「イチかバチだね」


時刻は11時。
スウェーの約束の時間は12時だった。

てか、国境がこんなに混むのなんて初めて見たよ。

これはちょっと時間には間に合わなさそうだね…。

僕たちは隣町の小さな国境へとい急いだ。


だが、ここでも国境の2km前から
車が列をなしていた。

ちょっと様子を見て来ると言って
車の外に出て行ったスウェー。

その間に車が少し進むと、
僕たちの車の前に後ろから車が
割り込むように入っていった。
ここでもバイオハザードだ。


「なにか抜け道はないのかな?」

「ちょっと待って。
もしかしたらこれは行けるんじゃない?」

スウェーのGPSは
メインの道路しか表さないものだったが、
僕のマップアプリには国境への道沿いに
脇道を示していた。

「よし!そっちに行ってみよう!」 

車はマップアプリを頼りに、
国境のギリギリ手前まで接近した。

並んでいた車は案外あっけなく
僕たちを列に入れてくれた。

それでもなかなか車は進まない。

時間はとっくに12時を過ぎていた。

イミグレーションが
もうすぐそこだっていうのに、
車はちっとも進まなかった。



「なぁ、何か食べるかい?」

そう言ってスウェーからもらったのは
ブルガリアにある彼の実家で直栽培しているという
オーガニックトマトとキュウリだった。

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それにヒマラヤの赤い塩を降って食べた。

そんな国境前での優雅なひと時。

まぁ、今回はこういう時もあるさ。


なんとかセルビア側の国境を抜け、
待っていたのはハンガリー。

そこで行われていたのは
車の荷物チェックだった。

それも一台一台、
イミグレーションのスタッフが
トランクまで開けてチェックする様なヤツ。

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「オイオイ。
コイツらはほんとうにクレイジーだな」

ここでも20分くらい待たされ、
ようやく僕たちの番が回ってきた。

スムーズにトランクを開けるスウェー。

「これはなんだ?」

抜け目の無い国境のスタッフが
瓶に入った液体に注目する。


「なんだって、ブルガリアの水ですよ?開けてみます?」

「いや、けっこう!そっちは」

「僕のバックパック開けます?」

「いや、いい!」

日本人軽っ!


「もしこれで麻薬とか
運んでたらどーすんだろうね?」

「日本人はそんなことしないさ」

まさかハンガリーで日本人の信用の高さを
再確認するだなんて思わなかった。



車はそのまま
ハンガリーへと突入する。

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車の燃料メーターは
赤いエンプティーマークを指し示している。

すぐに見つけたガソリンスタンドで
ガソリンと、ガスを補給した。

スウェーの乗っている車は
ガソリンとガスで走る面白い車だった。

けっこうな距離をドライブしているので、
僕も5ユーロをカンパしていおいた。

「おー、サンキュー。優しいヤツだなー」
とスウェーは意外そうだった。

ま、ケチな僕でもたまにはこういうこともするさ。


スウェーが友達とブダペストで
約束している時間はもう2時間も前にすぎてしまった。

これは無理だよなぁー。

車の外を見ながら
ぼんやりとそんなことを思ー…おもー…





気づいたら寝落ちしていた。

起きたら車はハイウェイを走っていた。

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ソーリーとスウェーに謝っておく。

そんなことは全く気にしないスウェー。
そして僕たちの目の前にはまたしても車の列があった。

どこかで事故が起こったらしい。

「あ~、今日はバッドカルマだ…。
いいことが続かない」

「う~ん。
こればっかりはしょうがいないよね」

どれくらいかかるのか分からないので、
僕たちはまたも迂回して
ブダペストを目指すことになったのだ。


僕たちの車は
ブダペストの公園に停まった。

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「疲れたからここで休憩しよう」

と車の外に出て、コチコチになった体を伸ばす。

スウェーはトランクから食べ物を出して来て、
二人でそれを食べた。

オーガニックのトマトとキュウリにパンと
ブルガリアで一般的なトマトとパプリカのソース。
それと少し酸味のあるチーズ。

彼と出会わなければ食べることのなかった
贅沢なごちそうだった。

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結局この日、スウェーは
友達と会うことはできなかったようだ。
12時から5時間以上経過していた。

それでも、今目の前の時間を楽しむように、
スウェーは黄色いパーカーを羽織ると
日向にごろんと横になった。

僕もそれにならって、
ヒッチハイクのボードを広げてマット代わりにして寝た。

ハンガリーに入って急に温度が下がった気がする。

ひんやりとした夕暮れだった。


20分の昼寝をして、僕はスウェーに
町の中心地まで送ってもらうことにした。

スウェーは
「これはおれからのプレゼントだよ」と言って、
さっきトマトやキュウリを切るのに使ったナイフを僕にくれた。

皮の鞘に入った切れ味のいいヤツ。

「ブルガリアン・カタナだから♪」

僕も大事にするよと言って
ありがたくそれを頂戴した。

町の中心地に着くと、
僕たちはハグをしてお別れした。

マクドナルドの前で降ろしてもらい、
スウェーの車を見送る。

やっぱり、毎度毎度、ヒッチハイクは
出会いを僕に与えてくれる。いいヤツだったな。

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マクドナルドの前でWi-Fiを失敬し、
街の地図をダウンロードする。

外の席でタバコを吹かし、
適当に人がいそうなところを目指して歩いた。

いい感じの通りでバスキングしてみたものの、
モンテネグロで喉を壊したせいか、
なかなかいいパフォーマンスをすることができなかった。

地元の警察に許可証がないとやってはいけないと
ストップをかけられ30分も演奏しないで終了。

手元には5ドルくらいのハンガリー・フォリント。

これで何が買えるんだろう?

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そのあと夜のブダペストを
フラフラと歩いた。

観光客で溢れた夜の街はどこかにぎやかだったが、
くさり橋を渡り、ブダ側に抜けると、
どこか静かになった。

公園のはじっこの方でブルーシートを広げた。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。