見出し画像

「デンマーク、オーデンセでの生活」

世界一周437日目(9/8)

画像1


「朝、この場所を散歩したい!」
というロマンチストなツレの意見に
僕も賛成だったが、前日の夜更かしもあって、
7時半に彼が僕を起こされなければ
僕はふかふかのベッドで
ずっと眠っていたことだろう。

ベッドと掛け布団ってマジ天国だと思う。

ここはデンマーク、オーデンセ。
アンデルセン童話の作者の故郷でもある。

画像2


ガーデンハウスを出ると、
そこに立っているだけで
爽やかな気持ちになることができた。

ほんとうにこんなところで
人間が暮らしているんだな。

日本には日本のよさがあるけど、
ガーデンハウスを作れるのは
ヨーロッパなだからこそだと思う。

庭になっている青リンゴを取ってかじると、
「シャクッ」という歯ごたえと共に、
甘酸っぱいフルーツの味が口の中に広がった。


芝生の小道を抜けて、
いくらか広い通りに出ると、
そこには近隣の住民が営業している
小さなカフェがあった。

お金を稼ぐというよりかは、
ここに住んでいる人たちのための
カフェのように思える。

昨日僕たちに家を貸してくれた
ジェイクの姿が見えた。

彼は僕たちに気づくと笑顔で手を振った。

画像3


作家と新規ビジネスの立ち上げ役という
二足のわらじを履いたジェイクは、
主に執筆活動をメインにしているらしい。

なにやら夜は早く寝て、
日の出とともに起きるという
超絶健康ライフを送っているようだ。

画像4




簡単に身支度を整えると
僕たちは町へと歩いた。

昨日は辺りの薄暗い夜中に道を歩いたため、
ここまでの距離が長く感じられたが、
ジェイクと話しながら歩くと、
中心地までの距離はそこまで遠くないように思えた。

自転車通勤の人々とすれ違い、
幼稚園では園児たちが楽しそうに遊んでいる。

大きなサッカーコートの回りを
数人が走る姿が見えた。

そんな町のなんてことない
ささやかな風景を僕たちは
新鮮に思えてしょうがなかった。

誰かにとっての当たり前の風景は、
別の誰かに取っては真新しいものなのだ。


ショッピングストリートへ入る少し手前に、
ずいぶん先鋭的な美容室があった。

英語で「ANTI(アンチ)」と書いてある。

画像5


「ほら、ここに
僕に作品が飾ってあるよ」

ディスプレイされていたのは
画面がしよう不可能なくらいに割れ目の入った
スマートフォンだった。

横に「Stupid phone」と書かれている。
スマートの反対はステューピッドって…、

まさにアンチだね…。

画像6


「シミ、
ここで髪切ってもらいなよ」

「嫌だよ。だって「アンチ」だろ?
モヒカンとかにされたらたまんないよ」


日本を出てから、
カンボジアですいてもらいはしたが、
ずっと切っていない僕の伸びた髪の毛。

とくにこだわりはないんだけど、
物価の高いヨーロッパで切ることはないかな?

それにお団子ヘアも
それなりに気に入っているし。



ジェイクはそのまま図書館に執筆活動に行った。

僕たちは町の旧市街に行ってみることに。

途中で見つけた雑貨屋さんは、
地元のアーティストたちの作品が売られていた。

全てがハンドメイド。
ただその分値段もかなり高かった。

画像7

画像8


ツレはクリスマスオーナメントを
欲しがっていたが、
貧乏旅をしている僕たちにとっては
ちょっと考えなくてはならない値段だった。

これが、雑貨の仕入れとなると、
それ以上の値段をつけなくちゃならない。
誰か買ってくれるかな?



「まぁとりあえずさ、
コーヒーでも飲もうよ」

と入ったカフェ。

画像9


シンプルだけど、
何か洗練されたものを感じる。
値段もそこそこするようなヤツだ。

そして何を思ったか、
旅4日目にして僕たちが言った言葉は

「たまには贅沢しよう」

だった。

コーヒーとケーキとバーガーを頼んで、
お値段なんと約19ドル。

おれらは何をやっているんだ…???

スタッフの女のコはかわいかったから
よしとしよう!

画像10





カフェを出るころには
外はいつの間にか曇り空になっていた。

画像11


お店の中から道行く人の姿が見えた。
みんなどこか寒そうにしている。

ツレはスマートフォンで
情報収集やらFacebookに投稿し、
僕はパソコンのキーボードを叩いて日記を書いた。

そのまま公園を突っ切り、
大きな教会の内部を見ているうちに、
とうとう雨がふりだした。

雨が小ぶりになるまで教会の中で雨宿り。

外に出れそうなタイミングで町歩きを再会した。

画像12



二人旅は何もかもが

「一緒」か「半分こ」だ。

行く土地は同じ。
食べ物は二人分か、もしくは二等分。

友達がいくらかお金を
持っているからと言って、
僕だけ食べ物を買うようなことは
しなかった。

チョコレートを買ってまっぷたつに二等分した。


「いる?」

「ああ、ありがと」

僕たちの旅はそんな感じ。



旧市街でいい感じの雑貨を仕入れて、
僕立ちは町の中心地へと戻った。

お金が信じられないくらいの勢いで
ぶっ飛んでいくけどー、
それは今は考えないようにしよっと。

画像13


昨日は日曜日だったから
人通りも少なかった。

今日はどうだろう?

月曜日のメインストリートは
昨日よりもずっと人の数が多い。

そんな中で、昨日ジェイクに教えてもらった
ポジションでギターを構えてみた。

ジェイクも執筆活動を切り上げ、
僕のバスキングを見に来てくれたのだがー、


ポジションは三方向から続く道が交わる点。
そこにあるオブジェの前だ。

バスキングは目の前を人が
通り過ぎるくらいが丁度良いんだけど、

僕が唄っている場所は交差点の微妙な位置にあり、
人が目立つようで目立たないポジションだった。

こらアカンわ…。


場所を代えるよとジェイクに言うと、
ジェイクは「僕も執筆活動に戻るから」と
どこかへ行ってしまった。


「なんか昨日の夜に
『今日はご飯を作るから!』
って言ってくれてたけど、なさそうだね」

「まぁ、家に泊まらせて
もらってるだけよしとしようよ。
きっと執筆に集中したいんじゃない?」


それなら僕たちもここで
メシ代を稼がなくちゃならない。

っていっても唄うのは僕なんだけど、
まぁ、僕が唄ってる間、

友達は個人行動取れるし、
シェアできるものはシェアで。


さっきのバスキングで弦が切れてしまっていた。

新しい僕のギターはエンドピンが
なかなかはずせなかった。

ピンを取り替える道具もないので、
アウトドアショップでペンチを借りて
強引にエンドピンを引き抜いた。

ペンチの跡がピンに残った。
やっぱりピンを取り替える道具は
買った方がよさそうだ。

メインストリートの裏通りにある
お洒落なカフェでコーヒーを注文して、
僕はギターの弦を取り替えた。


すると昼間っから
酔っぱらった浮浪者が二人やって来た。
一人は英語が喋れた。

もう一人は僕にデンマーク語で何かを言ってる。
が、ちっとも分からない。

英語が喋れる方もそこまで達者じゃないので、
「まぁおれたちと一緒に酒飲もうぜ」
くらいしか理解できなかった。

手渡されたのは小便に入った
アルコール度数35%のお酒。
無理っしょ。

ヘラヘラと笑顔で彼らにお酒を返して、
僕は昨日唄った場所へと戻った。

昨日と同じようにバスキングをしてみたが、
レスポンスはまずまずだった。

中には日本人の方もいらっしゃって
「なんだか日本を思い出しちゃいました」
とデンマーク・クローナと
日本円をいくらかいれてくれた。

なんだかノってきたなという時に
さっきの酔っぱらい2人組が僕の側へ寄って来た。


「おい、なんでここで唄っている?」

一人が目の焦点の定まらない顔で僕に尋ねる。

ヘラヘラしながらフレンドリーに対応したが、
コイツ…こっちが何がしたいんだって訊きたいよ。

「撤退しようぜ」

と友達がアイコンタクトを送って来るので、
スマートに撤退。

デンマークにも酔っぱらい、
っていうか浮浪者がいるんだなぁと思った。

別の場所を探してメインストリートを
グルグルと歩き回ったが、
やっぱり一番いい場所はさっきの場所だった。


僕たちが戻った頃には
さっきの浮浪者はどこかに行ってしまった後だった。

さぁて、気を取り直してもう一度唄いますか!

そんなこんなで稼げた食費は18ドル分。
これで何を買おうか?

画像14



ジェイクのお兄さんの家には
ちゃんとキッチンもあった。

僕がバスキングで稼いだお金で、
食糧を買い、まおが料理を作る。
いい役割分担だ♪

学生時代イタリアンのレストランで
バイトしていた友達が作る今日の晩ご飯は
パスタだ。

この先も自炊するだろうと、
欲張ってマッシュルームやニンジンの特売を
買い物かごにぶちこんだ。

安いボトルの赤ワインも忘れない。

って、なんか最近まで野宿をしていたのに
QOLが上がった気がする!



食材を買い込むとジェイクの家まで歩いて戻った。

奥田民生の「さすらい」を唄いながら、
ちょっぴり早足で。

ジェイクのお兄さんの家に着き、
早めにシャワーを浴びてさっぱりすると、
僕たちはキッチンに立った。


「よーっし。
じゃあまずは野菜を切る!」

「へい!」


僕は料理なんてやったことないから、
友達に言われたように野菜を切っていった。

まずはニンニクから切って
先に火を通しておくのがいいらしい。

野菜を切ってしまったら、
僕の役割はおしまいだ。

パスタのお湯の減らし具合なんて分からないし、
料理がどんなことになるか全然イメージ湧かない。

友達は手際よく刻んだ野菜に火を通し、
トマトソースをぶちこんで
コトコトとフライパンの中で煮た。

鍋で茹でたパスタが完成すると、
お皿に盛りつけて、その上からソースをかける。

テーブルに昨日買ったスライスされたパンと
ワイングラスに赤ワインを注げば完璧だ!


「それじゃあ…」

「いただきま~~~す!!!」

画像15

「ってうめえ!」

「なんだこれ!美味過ぎる!」


できたてのパスタ、
スピーカーから流れる音楽。
ちょっぴり贅沢な赤ワイン。

そして今、デンマークの素敵な家で
メシを喰っているというこのシチュエーション!

二人旅、こんながこんなに面白いだなんて!

一人じゃ味わえないことだらけだ…。
なんっつーの…?満たされたよね。


作ったパスタはきれいさっぱりに平らげた。

こんなに栄養があって、
お腹がふくれることは久しぶりだな♪

料理を振るってくれた友達に代わって、
皿洗いは僕の仕事だった。
まぁ、これは串焼き屋でのバイト時代で
毎日やってたからね。

そうして今日も
気持ちのいい夜は更けていった。

現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。