「ネパール人が童心にかえる祭り、シヴァラートリィ」
世界一周244日目(2/27)
「え?シバラートリィ見て行かないの?」
僕が泊まっている安宿、Hotel Elite(一泊250ルピー)を教えてくださったナガヤマさんは言った。シバ神の誕生日を祝うお祭りがパシュパティナートというお寺で行われるそうだ。
インドビザも取得したことだし、そろそろネパールを離れようかと国境まで行くバスを調べている時にナガヤマさんに偶然再会したのだ。僕は滞在を少し伸ばすことにした。1日くらい出発が遅れたところでインドは逃げやしない。
タメル地区から乗り合いのミニバンでパシュパティナートまでは行けるとのことだったが、僕は歩いていくことに。
途中にあった日本語の書籍を扱う本屋さんで立ち読み。
旅をしてきた他の国と比べると、カトマンズのタメル地区にはけっこう本屋さんがあると思う。今、原書でレイモンド・カーヴァー(アメリカの短編作家/詩人。村上春樹が敬愛し、彼が訳した日本語訳も出ている)を探しているんだけど、そんなピンポイントで見つからないのが世の常だ。
しかし、ABC順を無視して並べられた本の山から背表紙をチェックしていくのは面白い。CDの「ジャケ買い」のように中には興味をそそる本もある。気になる本があるったから買っちゃおうかな?
毎日新聞掲載「ののちゃん」の作者さんが以前に描いていた漫画をたまたま発見し、夢中になって読んでいると「日本語の本、買い取ってますヨ♪」今まで黙っていた本屋のおっちゃんが僕にそう言った。婉曲的に送られてきた『お前立ち読み辞めろ!』というシグナルを敏感に察知して、僕は本屋を後にすることにした。
パシュパティナートまでまだ距離があるっていうのに、通りには凄い数の人でごったがえしている。
数十メートルおきにアイスクリームやレモンソーダの屋台がある。
地面にはシートを敷いて服やら雑貨の叩き売りが行われていた。そんなのお構いなしに砂煙が朦々とたちこめる。
この人なんてマジやる気なし。
わたあめ喰っとるし。
そんな中でもバイクがクラクションを鳴らしながら人ごみの中を進んでいったり、見回りにきたパトカーは数十センチ単位でしか進めていない。そのくらいここには人がいる。ネパールの一体どこに、こんなに大勢の人がいたっていうのだ!!??
人ごみに飲み込まれると僕は自分の意思では進むことができなくなった。
後ろから前へ、大勢の人が作り出す「波」に前進するしかない。念のためスリ防止にサブバッグをまえにかけた。ネパールにもスリはいるのだろうか?
遊園地に入るのにずらっと人が並んでいる。
横入りされないように体をピッタしとくっつける人たち。
最初は楽しそうだなぁ。と呑気なことを思っていたが、この日差しの中、砂煙にも負けず自分の順番がやってくるのを待つ。かなりの根性だ。
かく言う僕も、まわりの人たちと同じようにじわじわと前に進んでいった。
てかシバラートリィって何なのだ?たぶん初詣みたいに参拝する順路みたいなのがあると思うんだけど…。
僕がやって来たのはどうやらパシュパティナート・テンプルのひとつ隣りの道だったようだ。
お寺に向かう列になんとか並ぶことができたのだが、この30分ほど波に飲まれただけで、精神的に疲れてしまった。座って煙草を吹かしていると砂煙が舞う。やれやれ。
列はどこまで続くのか全く見当もつかない。まるで脱獄するかのように金網をよじ上ったり、切れ目から中に侵入し、ショートカットを試みる人たちもいた。警棒を持った係員が、それを阻止しようとする。一体なんなんだ?このお祭りは!!?
パシュパティナートに近づくといよいよ順路がわからなくなっていた。
みんな一斉に山を登り始める。僕も彼らに従って山を登ることに。
こ…これって、順路じゃないよね。
そしてパシュパティナートの敷地内にようやく辿り着き、僕は人が流れる方へ進んでいった。
ヘリコプターから何かが巻かれるのをみんなが追いかけたり、座っていたサドゥーが突然棒を振り回したり。みんなそれを面白がっている。
ふふ。ご覧よ。ひな壇芸人なんてまるで目じゃないよね。
大きな水路。通行止めする警備員たち。
そんな中、チラホラ外国人観光客の姿も見られた。あ!GoProだ!
抜け道を探し、水路を越えるネパールの人々。
これ、カメラの腕がよかったらピュリツァー賞もらえたんじゃないかな?
列に並んでいたんじゃ埒が空かないから、僕は水の中から柵を越えた。
「シバラートリィの日にはどこもかしこもマリファナだらけさ!」なんてタメル地区で聞いたけど、サドゥーからもらえるのかなぁ?靴を脱いで待っている若者たちの姿もあった。
うん。分かるよ。僕もそんな気持ちさ。
進める方向へ進んでいったら、いつの間にかゴールのような場所に出た。
な、なんだったんだ?シバラートリィって?どいつもこいつもショートカットしようと躍起になっている集団アスレチック・フェスティバルのイメージしかないよ。
このお寺の全貌も分かってないとどこに行ったらいいのか分からないな。
結局シヴァラートリィがなんだったのかもよくわからずにタメル地区へと戻った。
夕方から始めたネパール最後のバスキング。
レスポンスは良好。空に舞うパラシュート部隊が登場した所で1時間半のパフォーマンスは終わった。
そして、この日の夜。絆食堂(かれこれ5回行った)でサンタナポカラでお会いしたヨウさんに訊くと、お寺の真ん中では火葬が行われていたそうだ。ふむ。そうだったのか。
僕にとってのシバラートリィは「みんなで童心にかえる」そんなお祭りだった。
つ、疲れた...
日が沈み、街角でたき火をいくつか見た。
ビジェイも言っていたな。ヒンドゥー今日では火を神聖視するって。
さてと。これでネパールともお別れだ。
素晴らしい人や景色に出会った。漫画も描いたし、雑貨も仕入れた。そして僕はまたインドへと戻っていく。
4年前に訪れたバラナシ。一体何が僕を待っているのだろうか?
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。