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「ベルリンで僕は居場所を見つけられないまま in ドイツ」

世界一周429日目(8/31)

テントを打つ
雨音が聞こえた。

あー、テント泊の時の
雨ってめんどくさいなぁ。

「二度寝しよ…。
少し待ってればやんでくれる…はず」


チェコほどの寒さを感じなかった。
サバイバルシートも使わずに
よく眠ることができた。

時折、人の足音が外から聞こえた。
僕のことなんてこれっぽちも
気にしている様子なんてない。

そのまま素通りして
足音は遠ざかって行った。

僕がここで寝ていることを気にしているのは
放し飼いにされた犬くらいだと思う。

ここはドイツ、ドレスデンという町。
川沿いの芝生の上。

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僕がいつも参考にしている
「Hitchwiki」の通り、川沿いは
野宿にぴったしの場所だった。

雨脚が弱まったのを見て、雨具を着て、
テントをたたんだ。
なんとかヒッチハイクできそうだ。

向かう先は首都のベルリンだ。

この街に来るために、今まで乱暴に
ヨーロッパをまわってきたと言ってもいい。

あとちょっとだ。



ヒッチハイクポイントまで
歩いて行けそうだったので、
軽くなったバックパックを背負って
僕は歩き出す。

白く曇った空はまるで煙のように見えた。

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しばらく歩くと雨が降ってきた。

一年以上使ったpatagoniaのアウターは
雨を弾かなくなり、雨は内側まで浸水してきた。

ゴアテックス素材のこのシェルの防水機能が
なくなることはないそうだが、
これはどう感じたって僕の汗ではない気がする。

どこかでメンテナンスしなくちゃいけないのは
分かってるんだけどー、

そんな時間も見つけられないままだ。

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じっとり内部が湿ってきたアウターを着て、
僕はヒッチハイクポイントまで辿り着いた。

今回のヒッチハイク場所はガソリンスタンドだった。

雨から逃げるようにして
ガソリンスタンド併設の売店の中に入った。

そこで2.6ユーロ(354yen)
の少し高めのコーヒーを注文して、一息ついた。

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野宿の時にマット代わりに使っている段ボールに
行き先に「Berlin」と書いて
僕はガソリンスタンド内に立った。

ガソリンスタンドには
屋根がついているのはなぜだろう?

雨天時にガソリンが雨水と
混ざらないようにするためだろうか?

ここでヒッチハイクをやるには、
屋根の存在はありがたかった。

ボードを持って、ちょっと控えめに
ヒッチハイクをする。

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いつもは、
それがまるでパフォーマンスみたいに
元気いっぱいアピールする僕だが、
こんな雨じゃアホみたいなヒッチハイクを
する気にもなれない。

伸ばす手も少し折れ曲がっている。

『乗せてくれたら嬉しいんだけど…』
とでも言うように、
ほんのちょっぴり口角を上げる。


ドイツはドライバーからのレスポンスがいいと思う。

そんな僕の控えめヒッチハイクに対して、
行き先が違うだの、乗せられないだの、
ちゃんとレスポンスを返してくれる。

それがあるかないかとでは、
ヒッチハイクをする上でのメンタルの
持ち用が変わって来る。

やっぱり乗せて欲しいとアピールする以上は
ドライバーからのレスポンスは欲しいのだ。


このガソリンスタンドで、
僕は一時間ヒッチハイクを続けた。

だが、止まってくれた車はゼロだった。


『このままここでヒッチハイクを
続けるのはよくないかもしれないな』
と僕は思った。

その場でヒッチハイクを続けるか、
場所を代えるかは時と場合によりにけりだ。

中にはその場所で車をつかまえなければ
次に進めないような、
退路なしのヒッチハイクもあるが、
幸いこの時はまだ他に選択肢が残されていた。


ハイウェイの前にあるバス停が
もうひとつのヒッチハイクポイントだった。

ガソリンスタンドのトイレで用を足すと、
僕はiPhoneからJack Johnsonの「To the sea」
を流して歩き始めた。

旅には音楽があるといい。

ただ黙々と歩き続けるのよりも、
いくらか気分も明るくなっていく。

ドイツのバカデカいナメクジを
踏まないように気をつけながら

(ドイツのナメクジは
ほんとうにデカいのだ。
それでいてか弱い)

僕は次ぎなるヒッチハイクポイント
へと辿り着いた。

バックパックからおなじみの
プラムとパンを取り出し、
胃袋の中に放り込んだ。

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「よし!ベルリンまで行くぞ!」

バス停は信号のすぐ先にあり、
信号待ちの車は僕の姿を十分に
認識してくれる時間があった。

場所を代えてわずか10分足らずで
車は止まってくれた。


「ダンケシェ!
どこまで行きます??!!」

「ベルリンだよ」

「乗ってもいいですか?」

「もちろん♪」

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僕はベルリン行きの車に乗り込んだ。

車の運転手のお兄さん、フリンクさんは
特殊なカメラを扱う会社に勤めている方だった。

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「分かりやすい例で言うと、ほら、
サーモグラフィーなんかで体温の違いが
画面に出たりするだろ?そんなヤツさ」

カメラと言われてイメージするのは
一眼レフなんかだけど、
科学の分野や軍事部門で使われたりする
カメラもあるってことだ。


フリンクさんとは時事問題から
社会問題なんかを話した。

ドイツに住んでいながらも、
海外の人は日本人よりも日本の問題に
意識を持っているのかもしれない。

ドイツは日本が東日本大震災で
原子力発電所が事故を起こしたのをきっかけに、
エネルギー政策を見直した。

今ではドイツの原子力発電所は稼働しておらず、
その代わりに自然エネルギーに力が
注がれるようになったそうだ。

まだまだ、ドイツ国内のエネルギーを
原子力発電に頼らずに賄うことは難しく、
フランスから原発によって作られたエネルギーを
輸入している背景があるが、
日本よりも賢い選択をしたことは間違いないだろう。

 

これドイツのオリジナルキャラクターなんだってさ。
ブラックユーモアに溢れてるよね笑。

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僕は前からドイツ人に訊いてみたいことがあった。

よく「ドイツ人と日本人は似ている」
と聞くことがある。

プライベートの領域を持っていたり、
真面目だったり、そういうところが
似ていると言うのだ。


「日本人は働くことが
いいことだとされているから、
みんな休まず働くんだよ。

周りと違うことがダメだなことだと
思われてしまうんだ。
みんな人と違うことが怖いのさ。

ところでドイツはどうなの?
8時間以上働くのは普通なのかな?」

「ドイツは割と
そういうところに気を遣っているよ。
中にはクレイジーに働き続ける人もいるけどね。
僕は平均で一日の労働時間が
8時間になるように働いているよ」

「ちゃんと自分の時間もとっているんだね」

「もちろん!」

フリンクは自身をもって
「オフコース」と言った。



真面目に、コンスタントに
働き続けることはとても
すごいことだと思う。

でも、果たしてそれが効率的で、
僕たちの人生を豊かにしてくれるものかは
分からない。

少なくとも僕は、使役馬のように
働けばいいってもんじゃないと思う。


そんな風にしてベルリンまでのドライブは
あっという間に過ぎた。





街の中心地まで5kmくらいの場所で
僕は降ろしてもらった。

フリンクにお礼を言って、車を見送った。

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街の中心地までは
歩いて行ってみようじゃないか。

ベルリンの街を歩くと、
僕は日本の秋を感じた。

まだ8月の終わりだっていうのにな。


日曜日はどこもお店がしまっていた。

空いているのはカフェやレストランのみ。
もう街全体が休日だ。

フリンクの言っていた通り、
ドイツ人は休みをしっかりとるようだ。

観光地には見向きもせずに僕は街を歩いた。

街の中心地はどこかはよくわからなかった。

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ここにはベルリンの壁のように
観光名所がいくつもあるが、
今までのヨーロッパの都市のように、
ツーリストで溢れ帰る混雑した
雰囲気は感じられない。

日曜日の街の静けさに、
なんだかこの街が
味気ないものに思えてしまう。


ベルリンには僕の大好きな
nudie jeansのリペアショップがあった。

事前に調べておいた情報を頼りに足を運んでみたが、
どこの店も閉まっているように、
リペアショップも閉まっていた。

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『あと少しだったんだな』

と思う。

世界一周前に日本で買って、
日本にいた時から1年7ヶ月穿き続けたジーンズは
チェコでバックパックごと盗まれてしまった。

『ほんとうにあと少しでここまで来れたのに…』

そう考えると、あのジーンズの想いを
どこかで引き継いでやらないとなと思った。



僕はあても無く街を歩き回った。

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観光地の脇をすり抜けて、
中央駅のスターバックスでWi-Fiを拾ったり。

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寒さを感じてはシャツを羽織り、
動き回ってはシャツを脱いでTシャツ一枚になった。

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動き回るとお腹が減る。

1.5ユーロ(204yen)で売っている
シンプルなホットドッグにかぶりつく。

だんだんこの金銭感覚も
ヨーロッパに住む人たちのそれに
近づいてきた気がする。

もう「1ユーロ=140円」だなんて
考えていてもしょうがない…。

けど、やっぱ高いよね。ヨーロッパ。

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水を探してあっちこっちほっつき歩いたが、
ベルリンの街には、
他のヨーロッパの街にあったように、
公衆の水飲み場というものが極端に少なかった。

バスケットボールのゴールがあるような公園で
ようやく見つけた水飲み場で、
ペットボトルに水を補給した。



その頃には日が傾き、
どこに行けばいいのだろうと、
僕は自分の居場所を定められずにいた。

深夜まで営業しているケバブ屋さんで、
充電もできないまま日記を書いた。

久しぶりに飲んだトルコのチャイが
じんわりとお腹に沁みた。

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夜が深けると、
見ているだけでこちらも寒くなりそうな、
脚を向き出しにしたパンツを穿いた売春婦たちが
チラホラと通りに立つようになった。

僕はバックパックを背負うと
人気の少ない大きな公園の中へ向かった。


公園は電灯が少なく、
暗闇にまぎれると五感が研ぎ澄まされた。

木々の間から電灯の光が漏れるような場所で
僕はテントを張った。


あとこれが4日続くのかー。

その4日間が途方もなく長く感じられた。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。