「ずっと使っていた物はなかなか捨てられない」
世界一周239日目(2/22)
土曜日。
と言っても僕自身の旅に曜日もクソもない。平日の仕事に疲れたから今日は丸一日休むなんてないし、何かしないとソワソワしてしまう。
朝8時半に僕が向かった先はお気に入りの「Cozy Cafe」だ。
ここは停電とかも関係なしにWi-Fiが思いっきり使える。
30ルピー(31yen)のチャイを砂糖抜きで注文して(甘党の僕だってたまには糖分抜くさ!)、窓際の通りが見下ろせるいつもと同じテーブルにつく。そこで愛用のMacを広げて作業するのだ。宿のベッドの上なんかよりも、こうして椅子に座ってテーブルの上でキーボードを叩く方がいい。その方が気分的に作業がはかどる気がする。
14時を過ぎた。ソワソワしてくる。
『今日一日ずっとここでネットしてていいのか?他にやること沢山あるだろう?』
そうなのだ。「世界一周」と言っておきながら海外でネットばかりしていると、自分のしていることに矛盾を感じてしまい、何か現実世界に働きかけるようなアクションを起こしたくなるのだ!
まあ、別に海外にいるからデスクワークが捗るというのもあるけどね。ブロガーさんとかライターさんとか映像クリエイターとか、今のご時世いっぱいいる。
この日僕の頭に降ってきた言葉は
「サブバッグを探しに行こう!」
というものだった。
観光客が多く訪れるタメル地区には多くのアウトドア用品店がある。バックパックからテント、寝袋、トレッキング・シューズ、ソックスまで旅に必要な道具はほとんど揃うだろう。ここで装備品を買い足して行く旅人もいるそうだ。日本に送り返したソーラーパネルがここでも手に入ることには驚いた。
ちなみに僕が新調しようとしているサブバッグは日本にいる時から一年以上使っているNIXONのものだ。下北沢のVillage Vanguardで6,300円で買った「SmithⅡ」という型で21Lの容量。スケートボードを取り付けるアタッチメントがついているのと、パソコンを入れる場所が別についていることが購買の決め手だった(パソコンをケースに入れたままだとジッパーが閉まらないので、ハサミを入れて中のスポンジを抜いた)。
このサブバッグは僕と一緒にロシアから旅を始め、モンゴル、中国、東南アジア、インド、ネパールと7ヶ月一緒に旅をしてきたのだ。メインのバックパックを背負う時は前にかけ、街を探索する時には後ろに背負った。
中にはMacBook ProやCanon kiss X3やpatagoniaのアウター、デッドベアのレックスくん、MOLESKINのノートや筆記用具、その他iPhoneのバッテリーやタバコや洗濯バサミなど(お菓子の袋を閉じる時に便利!)、色々な物を入っている。
「いつもあんなに荷物持ってるの?」とサンタナポカラのモミジさんに言われた。そのくらい僕のサブバッグには沢山の物が詰まっている。
1リットルのペットボトル(主に水)を入れるのでメッシュ素材のボトルホルダーはゴムが伸びきり、穴が空いている。少し前から片側のジッパーがうまく噛み合わなくなってしまっている。デイパックのファスナー部分は機能面での「肝」の部分が壊れてしまったのだ。
それが閉じなければ荷物も落ちてしまうし、中にしまった一眼レフを取り出す時にいっつも噛み合なくなってしまう。放置しておけばスリに遭う危険性も高まるだろう。
レインカバーをかけたり、ファスナーがかみ合うまで何度も調整してきたけど、
ここらで新しいサブバッグを仲間に加えてもいいだろう。
片っ端からアウトドア・ショップを当たっていった。
この街には、たぶん正規品ではないノース・フェイスやドイター、あまり馴染みのないメーカー、お気に入りのパタゴニアの製品などが溢れかえっている。程度の差こそあれ、中には本格的な登山用品を扱うお店もあった。
『これだけお店があるんだから、
サブバッグを見つけることができるだろう』
だが、『これだ!』というサブバッグはなかなか見つからない。
分かったことは、どこも似た様な製品でいっぱいだってことだ。
スイスのバッグを試してみて、購買直前の心理状態まで行ったが、どうもひっかかるものがあった。(荷物の移し替えまでして試したのに…。ごめんねスタッフのお兄さん…)
正規品ではないとしても、4、5千円もだせばしっかりしたバッグが買える。だが、今使っているNIXONのサブバッグにはどれも及ばない気がした。
このまま簡単に今使っていたサブバッグを手放していいのだろうか?
今なら分かる!ウソップの気持ち(涙)!
「お前!そんな簡単にメリー号を手放してもいいってのか!!?」
長い航海で修理不可能なくらいボロボロになったゴーイング・メリー号から
新しい船に乗り換える決断を下した時、ウソップはそんなふうに叫んだ。
そうだよな…。このサブバッグは7ヶ月分の旅のストーリーを持ってるんだよな。色褪せたサブバッグを見ると
「君はこれを長く使えるよ」
そんな言葉が頭に浮かんだ。
僕の足は修理屋に向かっていた。
カトマンズの街には衣類からバックパックまでを修理するお店がいくつかある。ファスナーの修理なんて可能なのだろうか?
宿のすぐ近くにある一軒の小さな修理屋さんを見つけた。
むっくりしたおじちゃんが踏みミシン台を前に椅子に座っている。
人が3人もいたら窮屈に感じてしまうだろう店内には他の人から依頼されたバッグやら衣類がぶらさがっていた。
「あの~…この噛み合なくなったファスナーって修理できるかなぁ?」
「あぁ、これね。取り替えればいいよ」
そう言って、お店のおっちゃんは職人の指で、10分もしないで留め具を取り替えてくれた。
新しくなったファスナーを締めるとしっかりした手応えを感じた。
ファスナーが噛み合なくなる原因は金属部分にあるようだ。何回も開閉しているうちに、金属部分が摩耗するのかもしれない。
「それと、このボトルホルダーなんだけど、1リットルのボトルを取り付けられるように改造できる?」
「それならこのナイロンベルトを使って~...」
「あとここ!バッグの底が今にも穴が空きそうでしょ?ここにパッチを当てて欲しいんだ」
さすがこの道で喰っているだけある。おっちゃんは僕の要望を落ち着いて聞いてくれた。
「それじゃあ、お願いします。明日取りにくるからね」
僕はそうおっちゃんに告げて宿に引き上げた。
僕にはまだ新しいサブバッグは必要ない。
ひとつのギアを長く大事に使って行こう。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。