「ハバロフスクとビタリィ」
世界一周6日目(7月4日)
12時間の列車の旅を終え、ハバロフスクの街に降り立った。
重たいバックパックを背負い、フリーのWi-Fiをキャッチして予約していたホテルを探す。
Googleマップで見ると近くにありそうだ。
颯爽とPennyBoardに乗って車道脇を滑り出した途端、コケた。
昨日までの雨のせいで路面の砂が滑りやすくさせていたのだ。
「ズザザザザザァァァ...」って感じでコケた。
荷物へのダメージは幸い、ギターケースが擦れてちょっと穴が空いたくらいだったが、左足と左腕に擦り傷を負ってしまった。くそっ...
それにこの街はハエなのかモスキートなのかブヨなのか よくわからない虫がうじゃうじゃいる。傷口に卵を産みつけられたらどうしよう…?
そんな妄想に取り憑かれて僕は予約したホステルへと向かった。
ハバロフスクの街はGoogleマップでは全然分からないくらいに広かった。
マップには必要最低限のことしか書かれていない。
散々遠回りしながらもようやく「Corona Hostel」に辿り着いた。
"Hostelworld"で予約をしていたので部屋の心配をする必要はない。一泊650rub(1950yen)。管理人さんが優しい人だった。
ロシアは物価が安いわけではない。長く滞在しても宿代がかさんでしまう。
僕はモンゴルへ早く入ろうと考えた。
そうなると次なる目的地はウランウデという街だ。モンゴルとの国境の街。約2日かけて列車で向かうのだ。
今回列車の切符を買うのは一人だ。もう、頼れるアスカさんはいない。果たして上手く切符を買う事ができるのだろうか?
心なしかお腹が痛い...てか便がユルイ...
ネットで列車の時刻を調べて管理人さんに切符の買い方を確かめたら、日本語が喋れるロシア人に電話をかけてくれた。そこまでしてくれなくてもよかったのに...。やさしさが見に滲みる。
だが、電話に出てくれたロシア人は確かに日本語が喋れたのだが、意思疎通がスムーズにできるというわけではなかった。
「ワタァ〜シハ ニホンゴ スコォシ シャベレマス!」
から始まるちぐはぐなやりとり。
彼に切符の買い方を確認したんだけど、向こうも僕の用件が分かっていないみたいだ。
切符の買い方は分からなかったが、彼の上司の大橋さんという方が電話に出られた。「直接会ってお話ししませんか?お茶でもどうぞ」とお誘いいただいたのでムラヴィヨアムルスキー通りの44番地のビルの4階にある大橋さんの事務所へ遊びに行った。
「シミズサンデスカ?」
事務所の外で待っていてくれたの彼は
ビタリィ。23歳。
最近、大学を卒業し、大橋さんと一緒の事務所で別々の仕事をしているらしい。
大橋さんは日本製品をロシアに輸入し、ビタリィはロシア製品を日本に輸出するビジネスをしているそうだ。
しばらく話してじゃ、そろそろ切符買いに行くねとバイバイしようと思ったらビタリィが駅まで送ってくれると言う。
「ビタリィ、なんていいヤツなんだ!」とは感動で打ちふるえながらも、内面ではいつボラれるのかビクビクしていた。
「自分の力でなんとかするよ」と言ってその場を後にしようとするが、「ダイジョブデスヨ!」と食い気味で手伝ってくれるこのパターン。
ロシアは東南アジアやインドなんかのボラれ大国じゃないと言えるにしてもここまで積極的な好意は断る方が難しいと思った。
「こういう風にして断れないまま最後には高額なチップとか要求されちゃうのかなぁ...」
そんなことを考えながら駅へと向かった。
ロシアの切符を購入するのは骨だ。
「カッサ」(たぶん「窓口」とか「カウンター」の意味)と呼ばれる受付のおばちゃんと戦わなくてはいけないのだ。
おばちゃんちゃちは揃いも揃って無愛想で、日々の業務に追われているのかいつもなにかに対して起こっているように見える。
そこでビタリィと二人で並んでいると彼は横にあるATMのような機会を見てこう言った。
「アッチノ 方ガ 早ク買エマスヨ」
なんだか怪しいぞ!
じゃあなんでロシア人はみんなそこで切符を買わないんだ!?もしかしておれのクレジットカードと暗証番号を盗むつもりなんじゃないのかぁぁああ!!!!
『わざわざこんなクソ遅い列に並ぶ日本人の気が知れないよ!』的なジェスチャーをしてきたもんだから『じゃあそっちでやってもらおうじゃないの!』と券売機のところへ並んだ。券売機担当のお姉さんもいるし、彼女に訊けばなんとかなるだろ。
カッサよりずいぶん早く自分の番になった。ビタリィが横からポチポチボタンを押していく。
英語表記を選択し、クレジットの暗唱番号と目的地(キリル文字で)とネットで調べ列車の名前日付をインプットすると、7月7日の3rdクラスの列車が一番安いことが分かった。
パスポート番号やその他の設定を終え「confirm」ボタンを押す。
「ピーーーー!システム障害です!」
その後、三回ほど同じことを繰り返すが、ATMのような機会は頑に同じ答えしか示さない
....はっ?どうなってんだぁああああ!!!!!!????
てか、カッサと大差ねええぇぇぇぇええ!!!!
おれの前で切符を買ってた2人組も同じ画面で「なんだよこれ!」って係員さん呼んでたもんなぁ〜。
だからか。
設置されたばかりのロシアの券売機は
しょっちゅうシステム障害を起こすようだ。
僕の場合はプリンターの紙が切れたことが原因だった。
なら、最初にそういう画面にしいてよ!
やはりロシアで切符を買うことは消耗するみたいだ。
結局は窓口でチケットを買うことになった。
若干不機嫌になりながらもビタリィの日本人の友達、「イマムラサン」と安い店でご飯をた食べることとなった。
今村さんは僕と同じ歳だった。大学卒業後にハバロフスクでサッカーを学んでいるということだった。コーチングとかかな?
僕は日本語の話せる人間と会うことによりようやく安心することができた。
「僕、まだ旅を始めたばかりですごい疑心暗鬼に駆られてしまうんです。ビタリィもなんだか適当っていうかー…」
(その横でニコニコしながら話を聞くビタリィ)
「ビタリィ、こいつね!こいつのマイペースさにはほんとまいっちゃうよなぁ〜!だけど、安心しなよ。ビタリィ良いヤツだよ!チップ要求してくるようなヤツじゃないから!」
旅先で日本人と話すと安心する一方で、
人を受け入れるかの難しさを思い出した。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。