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赤と気体の約2000字短編小説

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大体2000字ぐらいで短編小説を毎日(ぐらい)書いてます。暇潰しにポツリポツリと読んでってください。
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#短編小説

短編小説「回る」(by赤と気体)

 受容するだけのニューロンにはなりたくない。
 誰もがきっと、そう思っている。例外なく、僕自身もそうだ。最早世界の最先端、トレンドだ。
 最近は回転寿司もレーンを廃止して、注文制になってるところが増えているとか。限られた選択肢を選ばされていることに、嫌気が差しているのだろう。
 テレビは今日も、誰かと距離を取って放送を続けている。何を届けたくて、続けているんだろうか。昼下がりのワイドショーは、深刻

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短編小説「カンセン」(by赤と気体)

 誰も彼もがカンセンシャだ。
 もうテレビの向こう側のお話しではないことを分からなくてはいけない。遠いどこかのことではないのである。映画で見たフィクションのように思われるが、これは現実で、事態はとっくの昔に切羽詰まっているのである。防護服を着た誰かが、健常者とカンセンシャを別けていく。会いたいのに会えない世界が、もう来てしまっている。
 誰かを差別することにさほど理由がいらない社会になってしまって

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短編小説「旅」(by赤と気体)

 人生が旅だとするなら、ゴールはどこで、僕らは今どこまで進んだのだろうか。
 人生が百年とするなら、今二割とか? いや、これから加速していくから、まだまだ? それとも死に際に色んなことを悟って初めて、スタートになるのか?
 何にせよ、僕らはどこに立っているのだろうか?
 大学二年の冬、冷たい空気が肌を刺す九州の片隅。僕は、そんなことを考えていた。
 どこか燃え尽きた感覚で、僕はゆらゆらと考えを巡ら

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短編小説「レピドライト」(by赤と気体)

 鱗のようなその石は「レピドライト」という名前なのだと言う。脆く剥がれやすいその石の石言葉は「変革」らしい。剥がれ落ちて、変わっていく。何かを捨てなきゃ、変われないのだろうか。
 愛されてるって思う時がある。友達はもうやめなって言う。
 やばいなぁって思う時がある。友達は警察呼びなって言う。
 愛の代償5500円。保険適用可。
 青アザの出来た目は愛の証です。だって、本気でぶつかるって、どうでもい

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短編小説「二十歳」(by赤と気体)

 大人になるってことがいまいち分からないまま、明日がいよいよ、二十歳の誕生日になってしまった。明確にも曖昧にも答えを持たないまま、二十歳になってしまうことは、許されるのだろうか。大人になる資格は、どんなもので、そもそもあるのかどうかすら知らなかった。
 考えすぎてよく眠れない私のために、姉が入れてくれたホットミルクは、暖かさを失って膜を張ったままただのミルクとなって、机の上で待っていた。
 年の離

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