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note86: プエルト・イグアス(2011.11.27)
【連載小説 86/100】
旅していると様々な「世界三大○○」に出会う。
たとえば「世界三大河川」は南米のアマゾン川、アフリカのナイル川、北米のミシシッピ川。
「世界三大秘宝」はツタンカーメン黄金のマスク、ミロのヴィーナス、モナ・リザで、「世界三大美術館」はメトロポリタン美術館、ルーヴル美術館、エルミタージュ美術館というふうに「世界三大○○」は観光素材に直結している。
そういえばシンガポールを訪れた際に紹介したが「世界三大がっかり観光名所」というのもあってシンガポールのマーライオン、コペンハーゲンの人魚姫の像、ブリュッセル小便小僧が不名誉な称号を与えられている。[note14]
そして「世界三大瀑布(滝)」。
今回訪れたイグアスの滝はアルゼンチンとブラジルにまたがる南米大陸の滝で、残りはアフリカ大陸でジンバブエとザンビアにまたがるヴィクトリアの滝と北米大陸でアメリカ合衆国とカナダにまたがるナイアガラの滝だ。
それぞれが2カ国の国境に位置するところから、双方が競って観光客を呼び込むこともあって重要な観光資源になっている。
その中でもイグアスの滝は世界最大の滝で、僕が滞在した観光拠点であるミシオネス州の都市プエルト・イグアスの街からわずか18kmの地点にあって観光産業のためのインフラが整い、周囲の亜熱帯林も含めた「イグアス国立公園」が世界遺産に認定されていることから世界中からのツーリストを集めている。
かつてナイアガラの滝を訪れた際に膨大な量の水が豪快に落下し続ける光景と壮絶な音量に感動したものだが、それを上回るスケールに圧倒された。
かのルーズベルト大統領が夫妻でこの滝を訪れた時に夫人が「かわいそうな私のナイアガラよ」と呟いたという逸話が残るのもうなずける。
「悪魔の喉笛」と呼ばれる最大落下部のすぐそばにある展望台まで行ったが、ものすごい勢いで落ちて行く水の重低音と吸い込まれそうなその奥底には“悪魔”ではなく“神”の存在を見る思いであった。
1551年に西洋人として最初にイグアスの滝を発見したスペイン人探検家のアルバル・ヌニェス・カベサ・デ・バカは滝から数キロも離れた場所からこの水音に導かれて滝を目指したそうだが、事前に滝の存在を知らずしてこの光景を目の当たりにした時の感動はいかほどのものだったろう?
「この滝を訪れる無数の旅人の感動がいかに大きなものであっても、最初の発見者という“旅人”第一号の感動には遠く及ばないだろう…」
展望台に立って浮かんだそんな思いは前回にレポートした「SUGO6」オセアニア地域のテーマ&ルート策定の大きなヒントになりそうだ。
旅人はその途上に“感動”を求め続ける者であるが、そこへ導いてくれるのは常に偉大な先達の冒険の軌跡である。
スペシャルツアーのプログラム化が僕のミッションではあるが、所詮それは過去の旅人の感動を再整理する作業なのである。
イースター島(チリ)、パペーテ(タヒチ)、オークランド・クライストチャーチ(ニュージーランド)、メルボルン・シドニー・ブリスベン・ケアンズ(オーストラリア)。
残りの訪問候補都市の中からどこを選ぶかのアイデアが浮かんだ。
次回パタゴニアのレポートと合わせて披露しよう。
※この作品はネット小説として2011年11月27日にアップされたものです。
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