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note72: マイアミ(2011.10.7)

【連載小説 72/100】

スティーブ・ジョブズの訃報をアメリカで聞くことになるとは予想もしていなかった。

「iPhone4S」のニュースをいつものようにワクワクしながらネット上で見て「帰国後は買い替えかな…」と考えていたところに悲しいニュースが飛び込んできた。

僕がiPhoneとMacBookAirを持って世界一周の旅を続けていることは、何度もこのレポートで取り上げてきたのでご存知の通り。

これらに加えてiPad2も持っていればジョブズは喜んでくれただろうが、僕が日本を出た3月10日の段階で発売されていなかった。
そのかわりといっては何だが、僕はiPod nanoをオーディオプレーヤー兼マネークリプとして活用している。

つまり僕はAppleのヘビーユーザー、そしてスティーブ・ジョブズの大ファンだった。

「海軍に入るくらいなら海賊になった方がいい」

いつだったか彼が何かの講演で語ったフレーズは、組織から飛び出しフリーランスで生きてきた僕のマインドに強烈なフォローウインドを吹かせてくれた。

思い起こせば、最初にアップルのコンピュータに触れたのは20年近く前の「Macintosh ClassicⅡ」で、その後「Perfoma」を長く使用していたが、当時はWindows全盛時代でアップルマシーンはデザイナーたちと付き合うためのサブマシーンでしかなかった。

そんな僕が再びアップルのパソコンと深く付き合うようになったのは2001年以降。
一旦は会社を負われたジョブズが1997年に復帰以降次々と発表してきた斬新なプロダクトを見守りながら「PowerBookG4」の登場を機に真っ白なノートパソコンを手に入れ、その後2台のノートブックを挟んで2008年に「MacBookAir」が出た段階で全ての仕事環境をWindowsからMacに移行させた。

その間にiPodが登場し一大ブームとなったが、僕がこれまでに手にした端末は計7台。

音声端末を旅の世界に活用しようと「iTunes」を通じたPodcast配信がスタートした際にトラベルガイドコンテンツのシナリオ創作を行い、その後のビデオPodcast化で動画の紀行番組配信にも挑戦した。

忘れられないのが2008年7月11日の「iPhone」日本デビュー。
原宿から渋谷にかけて1500人以上が並んだ社会現象ともいえるあの行列の中に僕は年甲斐もなく加わり、200数十番目で白い端末を手に入れた。

その後も旅行系アプリの開発に積極的に関わり、当然のように初代「iPad」も発売と同時に入手した。

そんなわけで、近年の僕の創作活動とAppleのサービスは切っても切れない関係にあったから彼の死はただただ悲しい。

実は改めて発表するつもりだったのだが、その名も『Travel Records/真名哲也』なるアプリが来週AppStoreからリリースされることになっている。

僕がこれまでに発表してきた旅に関わる作品をiPhoneやiPod touch、iPadで読む電子書籍化して配信するレーベルで、この「SUGO6」レポートのバックナンバーもライブラリー化される予定だ。

旅先で得た感動を“誰か”に伝えたいという思いがトラベルライターの道を選んだ僕の核であり、職業人としての夢でもある。

そして、そのソリューションは全てジョブズが残してくれた。

「旅人の手に物語を!旅人の手にAppleを!」

そんなスローガンと共にこれからの日々を重ねることが、亡きジョブズに捧げる僕なりのレクイエムになるのではないかと考えている。

>> to be continued

※この作品はネット小説として2011年10月7日にアップされたものです。

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