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note41: ドバイ(2011.7.8)
【連載小説 41/100】
昨日お目にかかった「SUGO6」で世界一周の旅をしているおふたりのことをY夫妻と紹介しておこう。
年齢は今年が結婚50周年ということだから70歳代だろう。奥様が4歳年下だとお聞きした。
Y夫妻の世界一周プランは6月10日出発の4ヶ月期間で、各国2週間前後の滞在で計8カ国を巡るルート設定。
ドバイは台湾・インドネシアに続く3カ所目の訪問地で「Dice Free」を利用されたという。
今回の旅ではこの時期にドバイへ来ることが一番の目的だったからだそうで、その理由を詳しく聞かせてもらった。
※ 世界一周の旅の中で2回だけダイスの目を自ら決定できる「Dice Free」についてはnote18で紹介し、僕自身このシステムを行使してミャンマーを訪れた。
Y夫妻の旅のテーマは、なんと「セカンドハネムーン」。
まだ海外旅行が自由化されていなかった1961年に結婚されたおふたりの新婚旅行先は宮崎の日南海岸だったそうで、当時は日本人にとってハネムーンのメッカだったらしい。
ご主人は30代前半で小さな会社を起こし、その後40年近く経営の最前線を走り続けて数年前にリタイヤされたそうで、ご夫婦で1週間前後の海外旅行に出かけたことは何度かあったものの、ビジネスが超多忙だったゆえにゆっくり休暇を楽しむことはできない半生だった。
そこで結婚50周年となる今年、夫婦で「二度目のハネムーンに出かけよう」それも「世界一周をしてみよう」ということになり情報収集するうちに「SUGO6」を知るにいたったというわけだ。
PASSPOT社にセカンドハネムーンにふさわしいデスティネーションを繋ぐルートをオーダーしたところ、その中にドバイが含まれていて興味を持ち、スタッフから若者の新婚旅行先として人気急上昇のデスティネーションだと聞き今回の訪問を決めたとのこと。
これを聞いて僕も納得したのだが、昼間ホテルに留まって部屋やフロント周辺のパブリックスペースを行き来しながら仕事をしていると日本からのチェックイン客に若いカップルが目立つのだ。
折しも今週「ジャパン・ドバイ・クラブ」なる組織発足のニュースが伝わってきたが、日本からドバイ向けの旅行需要喚起策が様々な分野で展開されているようだ。
おそらく新婚旅行ブームのその一環なのだろう。
日本の海外観光市場においてはハネムーンで成功したデスティネーションが順調な発展を遂げてきた事例が過去に多い。ヨーロッパはもちろん、ハワイしかりバリしかりオーストラリアしかりである。
ドバイが次なるメッカとなる可能性は大である。
ところでY夫妻に「何故この時期にドバイへ?」と尋ねたところ。
「実は結婚記念日が七夕だったんですよ」と照れくさそうにご主人がこたえてくれた。
仲の良いご夫妻でうらやましい限りだが、日本の観光業界はこういったセカンドハネムーン市場の可能性をもっと追求すべきではないだろうか?
おふたりの「SUGO6」旅行は時間と金銭的余裕、加えて精神的余裕もあっての旅と見た。
高齢化社会は現代日本における構造的課題ではあるものの、一方で他国では不可能な観光市場を成立させうるビジネスチャンスが存在する。
人生の黄昏期とでもいうべき時節をゆったりと贅沢に旅する人、それも仲良い夫婦トラベラーが増えるということは、国家の成熟度にも密接に関わってくると思うのだ。
※この作品はネット小説として2011年7月8日にアップされたものです。
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