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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2023年3月の記事一覧

058.防衛に関する私的見解

2003.3.25 【連載小説58/260】 「平和」の反対語は何か? この問いに対して、多くの人が「戦争」と答えるだろう。 ならば今、世界は「平和」にあらずということになる。 国連の存在も、反対する強力国の努力も、世界中で民主的に沸き起こる反戦のパワーも不幸な戦争への突入を止めることはできなかった。 世界がひとつにネットされた21世紀。 「戦争」は直接的に戦闘を行う当事者国だけの問題ではない。 複雑な力学関係の中、誰もが間接的当事者になるのだ。 トランスアイランドに

057.未来を語る円卓会議

2003.3.18 【連載小説57/260】 オプショナルツアー(5) コミッティハウスに入ったことのある島民はどれくらいいるだろう? 島民登録やその更新作業、各種提言の窓口といったところが島民向けのサービスとしてあるが、全てはネットワーク上でも対応可能だから、足を運んだことのない人も多数いるのではないだろうか。 島政の中枢にして、諸外国との連携窓口。 機会があれば、是非、トランスプロジェクトに関する多くを担っているこの建物を訪ねてみるといい。 スタッフの面々は皆とても

056.訪れない観光

2003.3.11 【連載小説56/260】 オプショナルツアー(4) 旅自体がひとつの大きなストーリーだとすれば、オプショナルツアーはそこから分岐する一階層深い新たな物語。 どの道を選ぶかで旅の色は変わってくるし、そこでの体験がツーリストの当初目的を超えてその人生に大きな影響を及ぼしたりもする。 見方を変えれば、表層的な道筋を超えたオプショナルなくして、旅はパーソナルな体験として、その人の血肉にはなり得ないということだ。 SW、SE、NEを舞台とするオプショナルツア

055.書物の島を旅する

2003.3.4 【連載小説55/260】 オプショナルツアー(3) NEヴィレッジは文学や言葉がテーマの村。 よって、そこで提供されるオプショナルツアーも読書体験のプログラムだ。 それも、ただの読書ではない。 静かな島の時間の中で、ゆったりと読書をお楽しみください… それだけのプログラムであれば、場所はトランスアイランドでなくてもいいだろう。 どんな南の島も読書家にとっては優れたロケーションだから、受動的な読書体験は他所に任せておけばいい。 ツーリストがここで味わ