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2003.2.25 【連載小説54/260】 オプショナルツアー(2) 浜辺の所々に座り込む瞑想者。 風にそよぐ木の葉のように舞う舞踏家。 太極拳に没頭する老若男女。 見慣れない民俗楽器の演奏者。 詩の朗読者・・・ 何も知らずにこのエリアに足を踏み入れたツーリストはこれらの光景に驚くかもしれない。 SEヴィレッジはアーティストが集う村。 不思議なオーラに包まれる感覚のこの場所は、かつてのニューエージやヒッピーの聖地のごときだ。 文明の対極に位置する南洋の島は、常に自
2003.2.18 【連載小説53/260】 オプショナルツアー(1) 今日一日の糧のために何をして過ごそう? そんな感覚を持って日々を過ごす文明人がどれほどいるだろう。 そもそも労働とは食にありつくためにあり、多くの文明所産は食糧獲得の合理化や効率化を求める過程にあったともいえる。 ところが現実はどうか? 追われる労働に食事時間さえ奪われる人。 社会における一次産業従事者の比率低下。 感謝と共に食卓に付く習慣の希薄化。 と、労働が手段から目的へと転換し、本来的な「
2003.2.11 【連載小説52/260】 旅の大きな魅力はその土地に根ざした「味」との出会い。 そして、目的地が南国の楽園となると、誰もが豊かな食材をベースとするオリジナルレシピの数々を期待する。 この島を訪れるツーリストも然り。 が、トランスアイランドでは、従来の「楽園グルメ」イメージとは全く異なる食文化を体験できることになっている。 実は、コミッティ会議の議論項目に「楽園レシピ」なるサブテーマがある。 単なる食事メニューの開発ではなく、「食」を核に島のコンセプト
2003.2.4 【連載小説51/260】 -幻のリゾートホテル?- 今回はトランスアイランド観光開発に関する裏話を披露しよう。 実は、コミッティの当初計画にリゾートホテルの建設案があった。 もちろん、ホテルといっても大げさなものではない。 ゲスト専用のコッテージが10数棟並んだ宿泊専用ゾーンで、飛行艇着水ポイントからのアクセスが便利なNWヴィレッジとNEヴィレッジの境界付近が候補地として挙がっていた。 コミッティハウスに残っている計画書を見れば、いわゆるB&B(ベッド