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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2022年9月の記事一覧

032.夜空を見上げて

2002.9.24 【連載小説32/260】 ワイキキの西、フォート・デ・ルッシー公園のビーチ側に並ぶベンチでキーボードに向かっている。 ふた月の付き合いで家族のように仲良くなったカヌー少年ジョン。 長い友のような友情を交わすことになったカブア氏。 そして、名もなき異国?(トランスアイランドのことだ)の僕とボブをやさしく迎えてくれたマーシャルの人々と別れ、空路ハワイへ戻った。 7ヶ月ぶりのワイキキで、久しぶりに会いたい友人や、少し調べたいこともあり、帰島前に、一週間ほど

031.文明進化論を小島に見る

2002.9.17 【連載小説31/260】 機会があれば、是非、訪れてみたい島がガラパゴス諸島だ。 太平洋の東部、南米大陸エクアドルの西に位置するガラパゴス諸島は、ゾウガメやイグアナ、グンカンドリなどが暮らす野生生物の宝庫。 かのダーウィンが進化論の発想を得た場所としても有名なこの島は、ユネスコの世界自然遺産に指定され、希少な固有動植物が数多く生息する凝縮されたミュージアムアイランドだ。 悠久の地球生命史に比べれば、ほんの短い人類史ではあるが、遠い未来にその「文明進化

030.天命の再会

2002.9.10 【連載小説30/260】 育った国をあとに単身異国を目指し、勇敢かつ孤高なる闘いを経て、その成果を持って凱旋する、というのがグローバル社会におけるヒーロー像なのだろう。 スポーツやエンターテインメントの世界のことだけではない。 マーシャルのジョンも、紛れもなくそのひとりだ。 僕にとって1年3ヶ月ぶりのマジュロ国際空港。 国際空港といっても近代的な空港ではない。 環礁の島の横幅が、そのまま一本の滑走路を取り巻く空港の幅であり、滑走路自体も短い。ランディ

029.マーシャル2020年

2002.9.3 【連載小説29/260】 ワークショップ報告(5) 「5年前にマーシャル諸島共和国第二の国際空港となったクワジェリン空港にグアムからの直行便が到着し、タラップから日本人の若者数十人が島に降り立つ。 空港職員に案内されて、“Yokwe”(こんにちは)とマーシャル語で書かれた案内ゲートをくぐり、小さいながらも近代的な空港の建物へ入ると、入国審査のゲートがふたつ。そこで手続きを済ませてメインフロアへ進むと吹き抜けの空間に木造りのカヌーが飾ってある。 若者たちを