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地球のゆくえ 広瀬隆 1994年 集英社
この本は先日、神保町のパサージュに行った時にドネーションコーナーにあって手にしました。
パサージュは「世界一の本の街・神保町に2022年3月にオープンした一棚一棚に店主がいる共同書店です。
それぞれの書棚には、フランスの実在の通り名がつけられ、
店主のこだわりが詰まった棚はもちろん、
書評アーカイブサイト「ALL REVIEWS」の参加書評家たちが選んだ本が並ぶ棚も所狭しと現れます。」
『地球のゆくえ』には世界の政治に関わる人物や物事が、ひとつの財閥に繋がっている系図が多く描かれています。詳細は実際の本をお読みください。文庫にもなっています。
私はこの本を書かれた作者の姿勢に共感しました。
以下、引用です。
実は現在、地球という星のうすい表面部分で火を噴いている出来事の数々は、経済問題ではなく、皮肉にも、経済という言葉を濫用することが問題だと思われてならない。
経済そのものをどこかで否定する考えが、私たちの心のなかにはある。きっと、誰の心のなかにもある。
何よりも、雄弁なのは、事実この世に起こっている出来事である。
人類の歴史上の戦争は、すべて、「誰が正義か」を争う闘いであった。
これまで二〇世紀の世界は、経済発展一途に邁進してきた。その経済という世界の実態は、奇怪なものであった。
国際金融財閥とは、一体、何者だろうか。
これは、いかがわしい陰謀史観の書物にでてくるような集団ではなく、れっきとした、この世の実業界である。
世界の金融の総本山は、言うまでもなく、ロスチャイルド財閥である。
ソ連、アメリカ、中国、西ドイツ、フランスなどの大国から兵器・弾薬が大量に送り込まれ、カンボジアの内戦がひき起こされてきたことになる。
誰が一〇〇万のカンボジア人を殺したのか……
日本でユダヤ人の陰謀史観を煽動する人間は、日本人がアジアで二〇〇〇万人を殺した史実の戦争責任と、戦前、戦中、戦後の日本人政治家の腐敗をほとんど無視して、歴史を語っている。
ユダヤ人社会は、ごく少数の上層部と、多数の下層部という完全な二重構造になっているのが現実で、これは、すべての民族と変わらない。
日本は貧農の巣窟だ。
農民の農業意欲がこれほどまでに失われる政策を進めている国は、全世界でも珍しい。
そのような日本では、田畑の土や虫が死んでいくばかりである。農民はそれを体で知っているからこそ、米を売り渡したくないと言ってきた。
古くさい経済体制が崩壊しても大丈夫だという確信を、生活の中から持ってゆきたい。その哲学を日本人が持っていれば、どこにも不安はないはずだ。自然を守って食べることができれば、人間は大丈夫なのだ。しかしそれを考えないから、不安がふくらんでくる。
国際金融集団に匹敵する大物が日本にいないのは、よいことである。
しかしそれに代わる見識だけは、狭い部屋のどこかに持っていたい。
私は一介の市民である。国際情勢を調べていると、時折、「背後に何十人ものスタッフがいる」と勘違いされる人もあるが、自宅と図書館だけで、主に人名録、伝記、歴史書、毎日の報道記事(特に英字新聞)を読んで、気がかりなことを調べているにすぎない。
情熱や怒りのないものは頽廃的であり、人生を放棄しているように感じられる。ジャーナリストは、問題を平易に解説することではなく、問題と闘うことが本来のつとめではなかっただろうか。
そのような人は、輝いて見える。
農民も、市民も、政治家も、工業家も、また同じようにして輝く。
みなで、そこへ向かいたい。
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