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[どんぐし]

落葉樹の顔ぶれは色を変えて
知られざる協演かなでが街に延べゆく
歩道を転がる どんぐしを
見つけてはしゃぐ 横顔を見た

今日の日に垂れるとばり
焦るように飛び立つ鳥たち
数字はいつ増えるの、と
幼子のように貴女は問いかける

冷たく見えた都会の温もりに
抱かれながら僕ら 眠ろうか
静寂色 闇夜の鼻歌に
溶け出す寝息が 甘く 甘く

うだるような夏の日を僕ら忘れて
行き違う互いの身を寄せ合うとき
重なる指輪の錆ついた色
どこからともなく語る 願い事

冷たく見えた都会の温もりに
抱かれながら僕ら 眠ろうか
気高く掠れる月の下で
時計を止められず 淡く 淡く

狭い部屋 たたえるつ雫
光の加減だなんて 照れ隠し
世を海に例える酔いどれの癖
「そで振り合ったのが今生こんじょうの縁」と

隙間に漏れ出した気の早い言葉に
罪などないよと どうか赦して
交わす眼差しの 安堵の傍ら
言い淀む唇 渇く 渇く

生まれたままの光は
永久とわの末に朝を告げるのに
都を閉ざすひとときでさえ
待たないのは貴女なの
瞳なの

夢現ゆめうつつに見た海辺の舞台
やがて僕は踊り 貴女は微笑む
暮らしの狭間はざまに 曇るガラス
擦れて軋んだ 甘く 甘く

冷たく見えた都会の温もりに
抱かれながら僕ら眠ろうか
静寂色 闇夜の鼻歌に
溶け出す寝息が 甘く 甘く
ガラスの曇りが 師走誘う

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