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[ラドラマ]

赦してくれないか
俺は寒空の下で呟く
悲しく身を揺らした
世界で二番目 美しい体躯に

赦してくれないか
お前を一度棄てたから
ホントは見せる顔もないな
俺を攫ってしまうような波の色

時に無邪気さは大罪の記憶

一番暑かった夏は終わって
日ごと夕暮れが空を染めてゆく
西向きの岬は
いつでも昨日に張り出して

幼子の頃のように俺たちは
手のひらの香りを二人嗅ぎ合って
いつかのラドラマ
風に流すよ
秋雲の残り香

アルバムを開けば
溢れ出すあまたの後悔は
優しく笑ったあの人と
リフレイン気味なドアの音

レクイエムを捧げてやりたくて
足りない欠片をかき集めて
それでも波打たれて
隅の削れた記憶は噛み合わず

幼子の頃の傷は忘れてさ
同じ道なりをつまずいて
いつかのラドラマ
風に流すよ
秋雲の残り香

仕方ないなと声が揃えば
照れたように笑ってほしい
それでいいじゃないか
赦してくれないか

時の無邪気さを詰れもせずに

赦してくれないか
お前は小さくうなずいて
痩せた喉を震わした
世界で一番 美しい調べを
聞かせて

赦してくれないか
俺は寒空の下で呟く
悲しく消えゆく
世界の輪郭が

いつかのラドラマ
響きわたるころ
いつかまたここで
寒空の下で

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