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[岬の丘にて]

ひとりだち 岬の丘で
目下宵海の
目隠しを視る
釣り船の灯火が消えない事には
向こうの距離がわからない

馴染み街 軌跡を離れ
僕が知らない君
旅を知らない過去
塞いだはずの傷口 あかに染めるとき
つながりが解き放たれるよ

いまから電話してもいいの
見えない線はどこへ行くの
光の粒の両手に乗ったら
境目をまたいでゆけるの

黒風をどこまでも
ひとつかみにつかんで
飛び立てばいい
対岸の火事
二人別れ道
埋めつくす光は
空と海を隠してしまうから
さあ 手放した景色を
君も夢に見ていてくれないか
願っても僕は一人
静かな足音を看取る
岬の丘にて

ひとりごち 御伽の国で
歳を重ねては
日々を賭す人々
蝶々のいたずらと知りながら 僕ら
たからものを落としてしまう

誰かの観た忘れざる夢が
どうか静かに風に散るように
雨足から君を護ってた言葉は
思い過ごしでありませんように

草花を摘むように
ひとつかみにつかんで
彩りが繋ぐ
対岸の火事
二人別れ道
蛍光の切れた時計
モノクロの幻に捧げる涙
もう 手放した景色を
流れ星に流す頃合いじゃないか
微動もせぬ光
ウィドウごっこにススキは
岬の丘で揺らぐ

振り返れば広がる
末広がりの街の両翼を
君はいくつ覚えている?
僕はいくつ知っている?

黒風をどこまでも
ひとつかみにつかんで
飛び立てばいい
対岸の火事
二人別れ道
埋めつくす光は
空と海を隠してくれるから
さあ 手放した景色を
君も僕と見つけにゆかないか
願ってもいずれ独り
静かな足音で立ち去る
岬の丘にて

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