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[あーちゃん]

三月も末だってのに
気温は急降下
雪が舞うのを見ていたら
財布のおみくじ思いだした
なんだか調子が悪いけど
頭痛が痛いけど
「苦しい時には神頼み」
決まり文句もいいもんだ

あーちゃんアンタは冬と一緒に
冷たくなったけど
意外と僕にはこう見えて
色々頷けるんだよな
人類普遍の不変の愛には
罠があったのだ
天皇様もキリストも
訴え続けて何千年過ぎた?

奴にも分かりやしなかったこと
僕らが今でも確かめ合ってること

じょうろを片手に 優しい声をかけながら
育てられるまま 僕は育ちましょう
もし僕が口に 今から声に出したなら
ふたりの小さな平和も 壊れるだろう

ねぇ あーちゃん そう思わないか?
声ならざる声よ アンタに いま届け

半年持ったら御の字と
アンタは言ったけど
物分かりのいいフリして
やっぱり難しい話だ
寝違えた首は曲がらない
頭痛はまだ痛い
僕だけ未練に潰されて
アンタはさっさといってしまった

あいすることに 人はなぜ苦しむ?
いたむ心に どうして立ち向かう?

あーちゃんアンタは僕と一緒に
居てよかったと
無邪気に涙の乾いた跡を
傷に押しつけるけど
人間不思議とこの手の痛みは
心地よかったり
大事にしたいの何だのと
気障な言葉を思い浮かべたり

じょうろを持つ手が 震えているならば
待たされるまま 僕は枯れましょう
ただ僕が口に 今から声に出すことは
アンタを一番傷つけて やまぬだろう

ねぇ あーちゃん どう思ってる?
僕らは過去を 宝石を 買い戻せやしない

じょうろを片手に 優しい言葉をかけながら
僕らそれぞれに 日がな育てましょう
もし僕が口に 今から声に出したなら
ふたりの大事な平和も 壊れるだろう

ねぇ あーちゃん またいつでも
芽吹かぬ種に 僕は 水をあげている

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