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[僕らが惹かれ合った頃]

やけに高いバスの座席から
木陰を歩く君を見た
背中を丸めては胸を張り
はしゃけばうなだれる表通りにて

誇り高き街の盛衰は
僕らの知らない企てだ
海辺に置いてきたあれやこれ
離れたらなくなる訳じゃないよね

いつになれば答えは見つかるの
ボトルに込めた手紙を開くの
この広すぎる都会の海で
何が二人を繋ぎ止めているの

僕らが惹かれ合った頃には
見上げたビルもキリが無くてさ
鎖でできたブランコを漕いでは
もっと高くまで届いてたはずさ

大きな心の大人たちの
ため息の意味が今ならわかる

奏でていてね
あの産声の続きを

やけに強気なその物言いが
ふと取り出した証のよう
気長で重たい言霊土産
僕は密かに昔を想う

いつまでも聴こえる潮騒を
数えながら夕焼けは沈む
ただ広すぎる世界を知らないで
同じ声色が僕を試した

僕らが惹かれ合った頃には
上手くいくのが世の中だと思ってた
僕らを苦しめやまぬものなど
寝て起きたならいなくなると思ってた

奏でていてね
君の名の可憐な響きを

あれから心配事は増えるばかりで
僕らも大人になったけど
時に飲み込み 時に吐き出し
ボトルの手紙は宛先知らず

いつだって振り向いていいんだよ
答えは僕ら 持っていたはずだよ
この広すぎる都会の海にいて
二人が結ばれて途切れないこと

僕らが惹かれ合った頃にさ
見上げたビルも今では姿を変えて
鎖でできた契約通りの街並みは
まるで高く遠く消えてった風船

誇り高き街の盛衰は
僕らの知らない企てだ
海辺に置いてきたあれやこれ
離れたらなくなる訳じゃないから

大きな心の大人たちの
ため息の強さが僕らを満たす

奏でていてね
あの産声の続きを

奏でていようね
あの産声の終わりまで

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