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BtoB SaaSセールスに本質的な価値を【中編】

こんにちはゆーたです。前回の投稿よりだいぶ時間が過ぎてしまいましたが、続きを書かせて頂きました。

・前編ではシステム検討における大前提の心構え
・中編ではセールスとしての心構え ←本記事での内容
・後編では最終ステップとしての心構え
の全3編構成でBtoB SaaSセールスとしての本質的な価値をお伝えさせて頂きます。 

※前編についてまだご覧になっていない方は、以下のリンクよりご覧になってから本記事をご覧下さい。私の簡単な自己紹介と当記事シリーズを解説する上での定義が記載してあります。

今回、中編ではBtoB SaaSのセールスとして、是非とも頭に入れておいて欲しい内容を大ボリュームでお伝えしていますので、長くなりますが休み休み読んで頂けると嬉しいです。

BtoB SaaSセールスとしての大前提

意識して欲しいポイントは主に3つです。

①フレームワークを意識して自身の商談を点数化する
②お客様の検討背景を聞ききる
③BtoB SaaSに慣れてる人なんていないという前提を理解する

①フレームワークを意識して自身の商談を点数化する
自身の商談が常に何点ぐらいだったかを把握出来るようにしておきましょう。点数化した商談を月次でまとめて今月はこれが出来た、出来ないや業種軸やバイヤー軸で苦手なケースをパターン化出来れば良さそうです。

②最初はヒアリングがメイン、双方の認識を完全にすり合わせる
商品紹介から入る営業はやめましょう。最初はお客さんの事を知る時間ですしお客様の状況を100%理解出来ていないタイミングでは何も売れませんし、たまたま売れても再現性が低くなってしまいます。

③BtoB SaaSに慣れてる人なんていないという前提を理解する
日本の企業の99%は中小企業です。いまだにWindows7の会社があったり、一人一台PCがある会社の方が少なくシステムそのものに慣れていないお客さんがほとんどです。SaaS系の会社にいると当たり前基準が高くなり過ぎてしまうので注意が必要です。

上記の大前提をおさえた上で早速本題に行きます。

"4つの不"と"4つの必然性"を意識せよ!

自身の営業レベルを5段階ぐらい引き上げるために必要な要素である"4つの不"はYuki Ishiiさんのnote記事にも記載があります。Salesforceのセールスが常に意識しているフレームワークの1つです。不信、不要、不適、不急の心の壁を意識しその壁を取っ払う事の重要性について記載されています。

簡単に言えば、「4つの不」とはそれぞれ

・不信→信用があるかないか?
・不要→自社に必要があるかないか?
・不適→自社に適しているか否か?
・不急→急いで導入する必要があるかないか?

を表しています。

私は上記の基本概念に幾つかのニュアンスを加えて「4つの不」を再定義しました。

不信→自社の定数営業の変数のかけ合わせて信用に値するか?
不要→課題の必然性が整理されていて必要サービスだと認識されているか?
不適→その中で自社サービスである必然性値段に必然性があるか?
不急→すぐ導入するべき必然性があるか?

に分類されると思って下さい。

「4つの不」に加えて「4つの必然性」そして「定数」と「変数」の問題です。

定数と変数

まず第一に、世の中の事象には「定数」と「変数」があり定数を変更する事は出来ない。
例えば、成果を上げていくうえで、受注できない理由を自社の機能のせいにしたり、今いる上司に文句を言うのは絶対に止めましょう。ボトムアップをするなと言っているわけではありません。それを理由にしたところで現在の機能という「定数」は絶対に変わらないのです。営業として「変数」となってくる部分にリソースを傾けましょう。以下は一般的なBtoB SaaS営業における「定数」と定数と変数の間に属するような「中間」営業として最も力を入れるべき「変数」について記載しています。

<定数に該当>
・顧客の組織体制(導入にともなう社内の運用やルールは変更の可能性は有)
・顧客の性格や性質
・会社概要
・機能(PMに意見は出来るが、開発ロードマップに乗るのは半年後以降)
・インサイドセールスから割り振られる商談の量(広告予算や、フィールドセールスの体制から割り振られる量には限界があります)
<中間に該当>
・価格
交渉次第では武器として使えるが、基本は動かないというスタンスで話をした方がいいです。値引きはとにかく最後の手段であり、値引前提で話を進めますと他社との比較に巻き込まれたり泥仕合になる可能性高いです。
・導入時期
自社への印象を変えることで、導入時期を変える事は可能
システム保守切れ時期からの逆算
導入支援時期からの逆算
IT導入補助金申請時期からの逆算
課題の大きさに気づく事でいち早く導入しなくてはならない状態
<変数>
・顧客の印象(自社に対して)
・顧客の印象(営業に対して)
・商材知識
・他社知識
・経験

・スピード(メールや電話)
→意識して早めるように頑張る的な要素もあるので個人的には好きじゃないです。

まとめれば、多くの事象は定数として成り立っており、商談のミッションは顧客からの印象を変えていく事に尽きます。

ここからは顧客からの印象を変えていくために必要な「4つの不」の攻略と具体的な目安についてお話しします。今回は攻略にあたってのアクションを★で表現しております。

※前編と同様にゆーた(株)という会社の一員として解説します。

不信攻略

<攻略フェーズ>
★☆☆→どこの馬の骨かわからないゆーた(株)って誰だよ?怪しすぎ...
★★☆→ゆーた(株)の良さは理解したが、この営業をまだ信用できないな...
★★★→ゆーた(株)の良さも理解して、この営業は他社と比較してもかなり信用出来そうだ!

不信に関しては初回商談時に★3が必須だと考えています。いち営業のレベルまで信頼に足る存在になれればいいです。ここでいう信頼とはその人の事を好きになってもらう事ではなく、あくまでも自社の課題に本気で向き合ってくれて、道筋を示してくれそうだと期待してもらえるという意味での「信頼」です。それぞれの会社が持っている会社概要、サービス内容については定数であり、一人の営業が動かせるものではないので、ありのままを伝えた上で怪しいとなるのであれば、そのお客様とはご縁がなかったんだろうなと割り切るしかないです。

例1)どうしても、上場していないような会社とは取引したくない、
例2)資本金1億円以上の会社とは取引しない
とかはどうしようもないです。

★2から★3に上げるために必要な情報はプロフィールの重厚感、ヒアリングの目的開示だと考えます。以下は、超簡単に作ったプロフィールですが(細かい色味やレイアウトは無視してください)

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まずプロフィールの重厚感として大事にしているのは、
経歴の一貫性や継続性社数明示だと思っています。自分の場合でもキャリアの中で「採用」「マーケ」「人事」など一貫してバックオフィスのお客様に対しての手助けをしている事。これによって自社としてのポジショントークでは無く、あくまでも本日もこれまでのキャリアと同様にバックオフィスのお客様の課題を解決しに担当していることを伝えることにしています。


 相対しているお客様の数は150でも300でも200でも数の正確さは大きな問題では無いです。もちろん明らかな虚偽はダメですが、取引していないお客様の課題を間接的に解決しているケースもありますし、 大事なのは沢山のお客様の事例を知り解決してきた実績があるという事がお客様に伝えられればいいです。同時に120社案内して40社導入していると意識づけることで、逃げ道を作れる程度に1/3は導入してますよというメッセージを伝えつつそれを可能にしている実績を示しています。営業成績No.1とか売上No.1とか営業で賞を受賞したとかはお客様の業務改善には全く関係ないためここでは一切触れていません。成績No.1とか書くのは広告代理店選定コンペの時サービス運用体制だけで充分です。

 続いて、ヒアリングの目的開示です。何を目的にこれからヒアリングするのか?あくまでもお客様の課題を解決したい一心で細かいところまで聞いちゃいます!とあらかじめ合意が取れればあとはクッションワードを多用することで顧客は心を開いてくれるし、信頼を勝ち取ることが出来ると感じる。ここをおろそかにして、なぜなぜ質問をするセールスは底が見えなくて怖い...(その昔なぜですか?なぜですか?と尋問の様に聞いてくる人がいてとても不快だった記憶があります。)

私がよく使う気持ちよく答えてくれるための大切なクッションワード
・細かいことを聞いちゃうかもしれませんが...
・貴社の事をちゃんと理解して齟齬なくご案内したいため
・貴社の目の前の課題に、私たちのサービスが100%マッチするのかをちゃんと確認したく...
・◯◯様のお考えの理由や背景を知りたく、何で?何で?と細かく聞いちゃうかも知れません...

もちろん、これらのプロフィールや言い回しをしたからといって本音を100%聞けるとは限らないですが、本音を語らないと損かな?という気持ちには出来ると思います。

不要攻略

<攻略フェーズ>
★2必須★3推奨
★☆☆→自社の課題にマッチしてない!ゆーた(株)が出してるシステムとは別領域のシステムが現状欲しい
★★☆→自社の課題には一部マッチしていそうな気がするけど、過不足がありそう。
★★★→自社の課題にマッチしていて、中長期的な課題にも対応しそうだ。

不要に関しては初回商談時に★2必須★3推奨です。★1はそもそものシステムのアンマッチなケースなので、インサイドセールスの段階である程度スクリーニングかけられているケースが多いですが、お客様のリテラシーの問題で★2以上にアップできないケースが多いです。特に★2から★3に上げるためにはいかに課題解決≠機能の認識を初回商談の中で合意させシステムの要不要にさせないことです。
 皆さんは以下の様なお客さんの質問を1つ1つデモンストレーションしながら機能確認していないでしょうか?

<質問表>
・◯◯や△△機能はありますか?
・従業員に対して●●の機能を制限することは可能ですか?
・うちの会社は特殊で残業は〜〜で計算しています。そのような運用は当社では可能でしょうか?
・うちの会社は社員一同にスマートフォンを持たせております。社員用のPCだけで打刻させたいのですが可能ですか?

上記の質問を全く無視した案内はお客様の営業体験上よろしくないですが、お客様の機能を確認することや運用面を丁寧に確認することにお客様の課題を解決することに繋がりません。お客様の現状のレールに則って案内をしているからです。

【前編】でもお伝えしましたが、システム導入はあくまでも目的を達成するための課題を解決する手段の一つに過ぎません。課題の話をしているのに機能の話を丁寧に掘り下げることに意味はありませんし、不要の観点からお客様の視座を上げることが出来ません。

不適攻略

攻略フェーズ
★☆☆☆→自社の必然性も無く、価格に関しても合意出来ない状態
★★☆☆→価格の必然性は高いが、自社の必然性に対して合意が取れない。
(※自社の必然性合意がない場合、価格の必然性が消え、値下げの末に失注となる可能性大)
★★★☆→自社の必然性は高いが、価格に対して最終的な合意が取れない。
★★★★→自社と価格の必然性の合意が取れている。

不適に関しては★3必須★4推奨であり、自社の必然性と価格の必然性に紐づいていると考えられる。優先順位は大前提「自社の必然性>価格の必然性」であり、自社の必然性が無いと価格競争に巻き込まれ商談が泥沼化する。★1★2は実質初回商談の失敗であり、その後お客様の自社へのステータスが上がる見込みは低いと考えよう。★3までの道のりとして重要なのは自社をオンリーワンのシステム設計として伝えられているかどうかだ。

 以下のカオスマップも見てほしい。お客様は大前提多くのHR-Techプロダクトに触れており、何が優れているか何が優れていないのか見極める手段は様々である。なので機能の有無を選択軸にしてシステムを選ぶのだ。

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ただ同時に私は以下の1枚スライドを挟んでお客様の選定軸を誘導し進めています。あくまでも不要の項目で述べた「課題」を解決できるシステム設計をしているシステムを導入するべきだ!と伝えます。

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良くも悪くもSaaSのアップデート数は年間で膨大な数あり、今ない機能についてもお客さんとしては許容していただける可能性は高いです。やれる業務範囲(SmartHR様は人事領域のみ、KING OF TIME様は勤怠管理のみなど)は違いますが、ただその中でやれる業務内容はほぼ一緒。例えば、弥生給与様で出来る給与計算もPCA給与様で出来る給与計算も中身は大きく変わらないと伝えることで、業務では無くどう情報が管理されるのか?どう集約されるのか?今後の展開を見据えてどのようなシステム設計になっていくのかを中心にシステム検討させる流れで案内をしていくと枝葉の話になりにくいと感じています。

 ★3から★4に上げるために注意すべきポイントは、上申ストーリーの把握と攻略が全てである。(後編に詳しくは記載) 価格の必然性に合意が出来ない理由は基本的には
①顧客が本当に心の底から自社サービスを使いたいと考えていない
②自社サービスを使いたいと思っている一方で馬鹿正直で上申下手な担当者
かどっちか... →②はほとんどのケースで無いので①が99%です。

①のケースは時すでに遅しの可能性大ですが、再度「不要」の部分から課題を掘り起こしていかない限り、次回には進めないと考えています。再度「そもそも〇〇さんがやりたい事って何でしたっけ?」を2回目or3回目商談で再定義出来なければ難しいです。不適★3で着地するも不要★2で着地したパターンです。

②のケースは正直担当者が上申に業務そのものに慣れておらず、他社のメリットとデメリットを自分なりフラットにまとめ過ぎて正直に上申したところ玉砕したケースが過去ありました。

不急攻略

<攻略フェーズ>
★☆☆☆→情報収集段階であり現時点で、急ぐ必要性や理由は無い。
★★☆☆→いつまでに導入という「理想」はあるが、上申(導入)意欲が無い
★★★☆→いつまでに導入という「目標」はあるが、逆算と上申(導入)イメージ無い
★★★★→いつまでに導入という「目標」があり、逆算日程と上申イメージを持ちたい

 最後にして最大の難関である不急ですが、こちらも★3必須★4推奨である。最も営業が壁を感じる部分が、★2から★3へのアップのケースです。
 大前提「不急」の部分に関しては担当者の導入熱量がどれくらいなのか担当者の立場が社内でどの程度なのか?個人的な情報収集なのか、社長からの命令なのかなど検討の大前提に大きく左右されるのでコントロールを非常にしにくい部分になっています。
 ポイントは理想を目標に変えていくこと、理想と目標の違いについて話をしよう。
理想→こうなったらいいな、最高だ、こう出来れば嬉しい
目標→〇〇までにこうしたい、こうやりたい

両概念の違いは気持ちが「受動」か「能動」かの違いである。自社サービスを導入することであなたの理想が実現できる事、自社サービス導入における自由な未来も見せていきたいです。

例えば、余った時間で何したい?その業務についてどう考えてる?
ここについては、お客さんの事を事前にどれだけ理解出来るかも重要な要素だと考えます。

上記で理解すべきは、〇〇さんの考えるバックオフィスの理想、働き方の理想、生き方の理想をしっかりと理解していく事それがその人の「目的」になり最終的にその人を動かす根拠になります。

まとめ

ここまでのとっても長かったですが、もう1回おさらいしましょう!
BtoB SaaSセールスとしての大前提は3つ!

①フレームワークを意識して自身の商談を点数化する
②お客様の検討背景を聞ききる
③BtoB SaaSに慣れてる人なんていないという前提を理解する

①フレームワークを意識して自身の商談を点数化する

これは出来るはずです。上記の定数と変数、「不信」「不要」「不適」「不急」をスコアとして合計して落とし込んだ時に、全14段階のうち、最低11を獲得する目的で初回商談で進めていきます。数値の11は私の感覚と実際の受注率を踏まえた感覚です。商材や単価によっては全然違うと思いますので皆様の会社にぜひ置き換えて見て下さい。

<スコア目安>
10以下:将来検討として、商談としてはクローズ
11:最低限ゴール
12-13:ここまでは行きたい推奨ゴール
14:最高ゴール、受注まであと少し...

エンタープライズ領域(一般的には大企業を指す)の初回商談から13,14のスコアになるケースはないと思います。あくまでも11,12程度が現実ライン。一方でSMB領域(一般的に10人〜500人程度の規模)では初回商談の質によって受注するケースも非常に多いです。むしろ決裁者商談の場合、初回でスコアを積めない=永遠の商談クローズになることも念頭に置き慎重に進めましょう。

逆に言うとこのスコアを上げていくことを中心に商談を組み立てていく事が重要です。SaaSのセールスはとにかく、初回商談が重要です。初回商談以降に急に温度感が上がったり、バイヤーの大前提を聞ききれずに逆転する事は難しいです。

②お客様の検討背景を聞ききる
こちらももう出来るはずです。

・ヒアリングの目的開示をすること
→クッション言葉をこれでもかと多用して、なぜ細かく聞くのか?質問の意図はどこにあるのかを聞ききる
→プロフィールの重厚感から営業に話をしないことを損だと思わせる事が大事

③BtoB SaaSに慣れてる人なんていないという前提を理解する

・お客様の誤った検討軸はセールスがきっちり修正する事
→機能比較にさせない、課題と目的を整理し、理想の姿の想像からあるべき目標の姿にお客さんを導く
・お客さんの上申を攻略する
→こちらは後編で説明しますのでお楽しみに!!!!!!!!!

以上、とっても長くなってしまいましたが、BtoB SaaSセールスに本質的な価値を【中編】について終了したいと思います。

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