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(6/9)初の九州横断に狂喜乱舞し、広島まで足を伸ばす。 2015年11月28日(土)-12月2日(水)

夢のように美しい街・大堂津。訪れた「古沢醸造合名会社」の当主・古澤昌子さんに蔵を案内いただいたのち、歩いてすぐのところにある「株式会社宮田本店」にお邪魔することになっていました。
セッティングしていただいた、イグチさんに大感謝なのです。
注)2015年11月の記事になります。


◾️かの「日南娘」が生み出される蔵へ

 
 
 

日南市大堂津「古澤醸造合名会社」から旧国道を徒歩数十秒といったところにあるのが「株式会社宮田本店」です。今やプレミアム焼酎となってしまった「日南娘」を醸す蔵です。

現当主は宮田千賀子さん。古澤さん同様、主を女性が務めておられます。面白いのは焼酎だけでなく醤油や味醂、ソースなども造っているということでしょうか。
昭和初期に建てられた石蔵では醤油が醸されており、蔵に入った途端にぷうんと醤油の香ばしい匂いが漂い、急に食欲が湧いてきて、やっぱり自分は日本人なんだと認識させられます。

「醤油はね、とっても面白いんですよ」と語る千賀子さんの笑顔が輝いており、本当に醸造が好きなんだろうなと見る者にはすぐわかります。

どこかでなにかで千賀子さんが、「醤油造りが、醤油の黄麹が、ウチの焼酎の味にも影響してるのかもしれない」と語っているのを読んだことがありますが、この状況を目にすればその理屈も正しいのだろうなと思わされます。本当に狭い敷地内で、醤油も焼酎も仕込んでおられるのです。

しかし、古澤さんの蔵もそうでしたが、宮田さんの蔵でも女性がいきいきと働いておられるのが目につきました。どうしても酒造りの現場といえば男社会のような固定観念がありますが、現実はそんなことはなく、女性の力で旨い酒が醸されているのです。日南市大堂津の焼酎蔵は、女性の力が最大限活かされていました。

さて、蔵を辞したあとの道中、イグチさんから聞いた話が興味深かったです。「宮田さんは醤油とか味噌とか味醂とかを地域の人たちに宅配している」ということです。

焼酎はカリスマになりましたが、商売は地域密着。その姿勢にまた感服させられます。醤油も味醂も大堂津に暮らす人たちのため、焼酎が売れるから焼酎だけにシフトするわけでもなく、これまでと変わらぬ姿で変わらぬ味を地元のために醸しています。

当たり前のようですが、今の時代、地域を一番にし続けるということは、本当に尊いことなのではないでしょうか。

帰り際、醤油袋を頂戴しました。丈夫で使いやすそうなこと醤油袋で、大きさも程よい感じでした。使うともったいないような気もしたが使ってなんぼ、大事に使わせてもらおうと思いました。

 
 

イグチさんが、「このあたりで、一番オススメの店があります」と連れて行ってくれたのは、「鈴之家」です。海を眺めながら、特にもオススメだという「鈴之家定食」というものをいただきます。

新鮮な鰹がたっぷりで、いかにも「漁師めし」といった感があり、夢中になって食べ進めます。
甘い醤油にたっぷりの薬味、そこに浸かった鰹をご飯に乗せてアツアツの出汁をたっぷりかけてかっこみます。青い空と青い海を眺めながらのワイルドめしです。

◾️宮崎市「渡邊酒造場」を見学

宮崎市へ戻りました

イグチさんのご自宅がある宮崎市。そこに、1914年創業の「渡邊酒造場」があります。

年間400石(一升瓶換算4,000本)の芋・麦の本格焼酎を兄弟二人で醸しておられます。
「風土で醸す」ということを蔵のテーマとして掲げているだけあって、代表の渡邊幸一朗氏の焼酎造りについての説明は、フランスワインの基本となる理念「テロワール」を強く意識したものになっていました。

収穫したばかりの白芋

原料である白芋の栽培、そしてあえて土を少し残す芋洗い、自然界の微生物を意識しての仕込みです。「ここで焼酎を造る意味はなんなんだろうって、いつも強く考えています」と幸一朗氏は語りました。

仕込みタンク

そして、イグチさんの奥様(実は焼酎醸造のプロフェッショナルなのである)との関係についても教えていただきました。

実はこちらの蔵には、とある秘密がありました。詳しくは書かないのですが、窓が開け放たれたまま仕込みをしてきたことで、思わぬ影響を受けていたという驚くべき事実がそれです。

それを突き止めたのがイグチさんの奥様。仕込みにおける微生物との関わりを深く考えさせられたその現象は、大堂津「株式会社宮田本店」のそれと類似しているものだとも感じ、深く感動しました。

ワインと本格焼酎と醸造酒と蒸留酒、まったく異なる酒と思われがちですが、幸一朗氏の熱弁でまったく同様の考えに根ざして醸されている酒であるといえることがわかります。

さて、蔵見学の前に幸一朗氏とイグチさんの宮崎と都城の焼酎事情裏話を聞かせてもらいましたが、それはとても興味深いものばかりでした。
焼酎王国だからこその焼酎業界を取り巻く裏話、そんなこともまた、本格焼酎への愛情が深まるものとなりました。

◾️都城市「柳田酒造合名会社」を訪問

柳田さん

宮崎市「渡邊酒造場」の渡邊幸一朗氏とは何度か電話で会話したことがあり(イグチさんが盛岡にいらした際に繋いでいただいた)、九州旅行の際にはぜひ寄ってみたい蔵として挙げていました。
同様に、都城市にある「柳田酒造合名会社」も最も訪れてみたい蔵として挙げていました。

初めてイグチさんに「青鹿毛」を送っていただき口にした時の衝撃は忘れられません。「渡邊酒造場」の長期熟成酒「鶴の荷車」に出会ったのと同じような衝撃だったと記憶しています。
その後、盛岡市肴町「酒の鍵屋」で「柳田酒造合名会社」の焼酎を取り扱うようになり、以来、こちら買い求めて各銘柄を味わわせてもらっているところでした。

さて、元エンジニアだという当主の柳田正氏は、気さくであると同時に非常に知性を感じさせる方でありました。蔵見学の前に都城の文化・歴史をイグチさんと語る様子は、こちらの知的好奇心を非常にくすぐるものでした。

 

蔵のことを語る正氏の話を伺います。数年前には、蔵をだいぶリノベーションしたそうです。それも、「次の当主となる一人娘のためです」ときっぱり語っておられました。

作業導線をイチから見直し、効率性や安全性を高め、女性であってもなるべく労せず造りに当たれるようにと考え、思い切って設備投資をされたのだといいます。
いたるところに元エンジニアらしい工夫とこだわりと理論が散りばめられ、他の蔵とも違う視点のアプローチが多々あり、これがまた興味深かったです。

 

そしてまた、イグチさんの奥様とのエピソードが様々披露されました。
「いや、今年の造りではイグチさんご夫婦のお陰でひと皮もふた皮も剥けた焼酎を造ることができました」と正氏が語ります。

「いやいや」と謙遜するイグチさんでしたが、一緒に旅するわれわれとしては、友人がそんな風に言われるのは、それはそれで本当に誇らしいと感じた瞬間でした。

桜島方面へ向かいます

さて、旅は後半です。気づけば折り返しています。
宮崎市~日南市~宮崎市~都城市とまわり、1日で4つの蔵を巡るという素晴らしく、夢のような体験をした九州3日目でした。
遠くに桜島を眺めながら、イグチさんが運転する車で、鹿児島市へと向かいました。

(7/9へつづきます。)

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