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【青森県八戸市】(2/3)海の幸が最強の北の街で我が心と体は癒されていったのだった。2024年12月13日(土)

青森県八戸市へ急きょひとり旅に出たわたしは、夕方に八戸に到着し、鷹匠小路にあるホテルへチェックイン。荷物を部屋に放り入れるなり、同じく鷹匠小路にある名酒場「鬼門」を訪れ、八戸の夜をスタートしたのでした。

最高の暖簾じゃあありませんか

さて、「酒味の店 鬼門」の続きでした。最初に話しておきますが、本当に最高の店でした。厨房に立つ女将さんは南部弁、サービス担当の女性店員も南部弁、先客男性も南部弁、わたしの次に入店して、「19時までならいいですよ」といわれた女性客二人も南部弁。なんつーか、ほっとしますしね(笑)

そう、ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、八戸市は盛岡藩(南部藩)だったので、昔から盛岡と同じ文化圏なのです。青森県は弘前市を拠点とする津軽藩と盛岡藩が置かれていて、明治維新後の廃藩置県によって、中間にある青森市を県庁所在地として、青森県となっているそうなのです。

まー、わたし個人としては、青森市も弘前市も八戸市もそれぞれ大好きです。それと、特に理由はないのですが、八戸市がずいぶんご無沙汰にはなっていました。

ナマコとアミタケおろし和え

さて、前述の女性二人客が19時までの時間制限があるからなのでしょう、いきなりラッシュ気味で「生ビール二つ、それと〆さば、馬刺し、赤魚煮付け、それと、、、」といった感じでオーダーを飛ばすので、間隙を縫って、「日本酒お願いします。それと、ナマコとアミタケおろし、〆さばください」と軽めの酒肴を注文します。

先客男性も、「魚、、、ん、ん、白身、、、揚げてもらうかな。うん、それとなんか煮付けちょうだい」とオーダーを被せてきます。

開店直後ということもあってか、忙しそうに下ごしらえや調理をしていた女将さんですが、わたしの注文を聞いてにっこり微笑み、「うん、そういうのはすぐに出せるからね〜」と話しながら、てきぱきと酒肴をカウンター越しに手渡してきてくれます。

厨房が忙しそうな場合、自分として食べたいものと、お店側に負担にならないものを、タイミングを見計らってオーダーするのが、こういうときには大事だと思います。

可能な限り、店側のオペレーションコストを意識すると、店側の負担も減るとも考えられます。

それと、呑みはじめのスタートは、スピード感が肝心なので、悩まずオーダーできるように、酒場に応じて自分自身のカードを揃えておくと、瞬発力もつくかもしれません。

さて、そのナマコとアミタケおろし和えですが、正直盛岡でも食べようと思えば食べられる酒肴ではありますが、これがまた絶品でした。

アミタケおろし和えは、とにかくアミタケが立派。大きくて食感良くて、食べ応え十分。大根おろしに食用菊が入っているのがたまりません。ぬるっとして、しゃきっとして、まったく食べ飽きません。

そんでナマコです。これまた身が分厚くこりこりしていて、海の風味そのものが詰まっていて、これぞ港のある街の肴です。間違いなく、過去イチのナマコです。

ちなみに、アミタケおろし和えは300円、ナマコは400円ですから、衝撃です。

そしてそして、、、

で、日本酒は地元の酒、、、ではなく、津軽藩・弘前市の豊盃酒造の「ん」を注文です。〆さばと同じタイミングで供されます。完璧なタイミングです。

この瞬間を至福と呼ばずになんと呼ぶのか

サバの街・八戸のサバを使った〆さばは、当然自家製でして、500円という破格値。とろり脂が乗って、旨みがじゅわりのサバは最低限の酢と塩で〆られていて、絶妙な味わい。

「ん」のキレの良い味わいが、サバの旨さを引き立てていき、酒を口に運ぶてが止まりません。

すみません、今さらながら言っときますが、今回の旅の記録は「鬼門」がほぼほぼメインとなっています(笑)

青ツブ貝

続いての肴を選んでいきます。メニューからツブ貝煮という文字を見て、「これまた最高の酒の肴ですな」と思って、注文します。

すると女将さん、「今日のは地元の青ツブ貝になるよ。磯ツブより大きいけどいい?」と聞いてきたので、磯ツブ貝をイメージしていたわたしは、「アレですよね、楊枝でくるりんのヤツですかね?」と尋ねます。

「うん、そうそう、くるんだけど、ちょっと大きいけどね。でも安いから」とのことで出されたのがこれ。楊枝でくるんのヤツですね。あ、これTIPSですが、これ系の貝は、楊枝を2本使うと身切れせずに安定してほじほじできるので、ぜひとも惜しまず2本で試してください(笑)

で、この青ツブ煮も最高でしたね。こりゅこりゅした食感に、えも言われぬコクがあとからやってきて、そんで煮付け方がまた上手なのでしょうね、醤油と酒が染み込んでいて、間違いなく酒を呼ぶのです。

そうそう、青森市の「横丁」では、まさに磯ツブ貝でしたね。家族三人夢中になって楊枝でくるくるやってましたね。懐かしい。

八仙ですわい

で、「桃川」のグラスと枡になってますが(「桃川」は、青森県おいらせ町の蔵です)、地元八戸の蔵・八戸酒造の「陸奥八仙 ヌーヴォーおりがらみ 特別純米生原酒」をいただいていきます。

おりがらみの生原酒ですが、実にキレがあり、爽やかな甘みあり、これは最高の一杯です。ぐいぐいいきそうなのを押し留めながら(いや、押し留めなかったですが 笑)、呑み進めていきます。

保冷ケース

しかし、目の錯覚でしょうか、ホワイトボードのメニューにある「アワビ」が、「1,000円」となっています。ケタが一つ違う「10,000円」ということはないでしょうが、いくら港町といえど、「1,000円」は安すぎます。

「あのーーー、、、」と、手際よく北寄貝を捌いている女将さんに声をかけます。鼻歌でも歌っているかのような軽やかな手捌きです。

「見間違いでしょうか、メニューのアワビが1,000円となってるんですが、1,000円ですか?」と続けます。

「あー、アワビはね、中くらいのだから安いの」

と、女将さんから返事が返ってきます。というか、中くらいとのことですが、十分に大きく見えるのは内陸育ち、内陸住みの人間だからでしょうか。保冷ケースの内側にべったり張り付く、わたしの目には十分立派なアワビを見やります。

「アワビがね、海の中の海藻が少なくなってるらしく、あんまり大きくならなくって」と教えてくれます。いわゆる、全国の海で問題になっている磯焼けというヤツでしょうか。

では、ということで、「アワビをひとつ刺身でいただけませんでしょうか」と清水の舞台から飛び降りるつもりで注文します(とはいえ、1,000円だから覚悟はさほどいりませんが、贅沢しちゃうぞ、という意味での思い切りです)。

はいよ、と女将さんが保冷ケースが一番大きそうなアワビを選び、手際良く捌いて盛り付けてくれたます。

どうです、トシロもヒモもついて迫力のひと皿となってしまっています。もう、わたしのテンションも上がりっぱなしで、「陸奥八仙 ヌーヴォーおりがらみ 特別純米生原酒」をお代わりしてしまいます。

さて、そのアワビ、ヒモをつまんで醤油をつけて口に放り込むと、ぱーっと磯の香りが口中に広がり、それを噛み締めていくと、コリコリっという食感とともに甘みと旨みが溢れかえってきます。

「あ、え、う、なななな、、、」

こんなような、変な声を出しそうな美味しさに、頭がおかしくなりそうでした。

続いて肝を口に含ませ咀嚼すると、とろりと濃厚な旨みが襲いかかってきて、再び「のののの、ぐぐぐぐ、、、」と変な声を出しそうになり、堪えて日本酒を口に運ぶと完全なるパラダイス。どんな高級グルメでも太刀打ちできない圧倒的な素材の力に、思いっきりひれ伏したくなりました。

分厚く切られた身はどうかというと、「はふ〜、、、、、、」と、もう声も出ないほどの美味しさで、ヒモやトシロとは違う食感・旨みに完全試合をされてしまいます。

コリコリなのですが、ヒモほど硬くはなく、一瞬の抵抗感のあとにざくっと噛み切れて、淡白だけど深く滋味が溢れ、最後の方は旨みが甘みに変わって余韻が長く続きます。

そんな風に名酒場「鬼門」の絶品魚介を堪能していると、いつの間にか隣に座っていた常連客が、「はは、いい楽しみ方されてますね」と話しかけてきます。

見ると、色鮮やかな本鮪の赤身とトロをつまみながら、日本酒で満たされたグラスを傾け、空間に身を委ね、リラックスして呑まれているではないですか。

「これはかなりの酒場上級者だな」と、その雰囲気からわかりました。

(つづきます。)

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