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(7/9)台風直撃の中、新たな旅の仲間を加え、イグチさんとふたたび九州を行く 2017年9月15日(金)-18日(月)

台風のことなどすっかり忘れ、大分市の素晴らしい酒場「ななにん」で酒を呑んだ後、「別府冷麺」を堪能しました。台風が着実に近づく中、次の日は早朝に起き出し、一路台風との全面対決をするため南へ南へと車を走らせます。
そして、なんとかたどり着いたイグチさんの新築のご自宅で、ビンテージものの貴重な焼酎の数々に驚愕することになります。
注)2017年9月の記事になります。


◾️「ラーメン一番」で別府冷麺を

「あ、ここですね」とイグチさんが指差すのは「ラーメン亭一番」。
「ななにん」で結局3時間ほど呑んだあと、店を去る際に高倉さんご夫妻と、珍しく記念撮影などして、礼を述べてから再び大分の夜の街を歩き始めていました。

こちら、なんでも「別府冷麺」が美味しい店だとか。大分市までの道すがら、別府に寄った際にイグチさんから「東の盛岡、西の別府と言いましてね。別府も冷麺が有名なんですよ」と教えてもらっていたので、この日の〆はぜひとも「別府冷麺」と考えていたのでした。

そしてここのお母さんが可愛らしく、微笑ましかったのです。
冷麺を注文すると、こねてあった生地の分量を計るところからはじめ、そしてそれを製麺機に入れ、にゅにゅにゅっと製麺する様子がカウンターから見えてるのですが、「すごい、そっからなんですね」と言うと「え、盛岡は違うんですか?」とひどく驚かれていて、「はっきりとはわかりませんが、お母さんほど丁寧じゃないかもしれません」とさらに言うと、「え? え? え? じゃ、どういう風に作るものなんですか??」と笑いながら聞き返しつつ、ものすごく丁寧に丁寧に「別府冷麺」を作ってくださいました。

もう、われわれはその素晴らしい仕事ぶりを眺めて幸せに包まれながら、冷麺が出来上がるのを待ちます。

供された「別府冷麺は」は、蕎麦粉が入っているから灰色がかった麺で、黒っぽいスープは盛岡のように牛骨系出汁ではなく、魚介節系の出汁と野菜の出汁らしく、そこにキャベツキムチが乗り、実にさっぱりあっさりとしており、本当に美味しい一杯でした。

「おおっ」「・・・これは。。。」「あはぁ~、しみるぅ~」と、優しい味わいに少し脱力しながら麺をすすりこみ、スープを飲む旅の仲間一行。しかしです、実はわたしはというと、1人ラーメンを注文していたのでした。

他の4人が冷麺なら、ラーメンも味見してみたいと考えたからでした。で、これがまた大当たりなのです。

スープは別府冷麺のそれと同じものなのですが、熱さが加わると旨味とコクと余韻が豊かになり、そしてどこか盛岡の名店「中河」にも通じる極みの域を感じさせるところがあり、素晴らしい味わいでした。

店構え、雰囲気、味、人柄と三拍子も四拍子も揃った大分の名店「ラーメン亭一番」。「西の別府」の名のとおりの至高の店でした。

◾️台風を避け宮崎市内へ移動

翌朝、予定どおりわれわれ5人は、大分市内を出発しました。まだ、そこまでひどい風や雨ではなく、とりあえず傘さえ差せば、普通に外を歩ける程度でした。

高速道路に入り、南下するたび少しずつ天候が、悪化してきたではないですか。叩きつけるような雨に、レンタカーのフロントガラスをワイパーが忙しなく左右に動き回り、横風に車体はぐらぐらと揺さぶられます。正直、不安で一杯でした。

とにかく一刻も早く宮崎市内へ入りたかったわけですが、焦って事故やトラブルを起こしては元も子もなくなります。じりじりしながらも、そして風と雨に耐えながらも、イグチさんが運転するレンタカーは、いつ何時通行止めになってもおかしくない高速道を走り続けました。

思い返せば、特にも大分県佐伯市から、宮崎県日向市の間あたりの風がひどかったです。海に近いということもあるのでしょうか、横からの突風が強く、風に煽られレンタカーが「ぐらりぐらり」と揺れるたびにひやりとしつつも、平静を保ったふりでやり過ごしました。

夜が明け始め、東の空が少しずつ明るくなってくると、徐々に雨風が弱まってきて、そしてついに、出発からおよそ3時間後には、宮崎市内に入ることができました。
雨と風は弱くなってきてはいましたが、それでも普通に荒天であり、レンタカーの窓を強く雨が叩きます。

そして、イグチさんの自宅に到着し、車から降り家に上がらせてもらい、「いやはや」「やれやれ」「なんともかんとも」と言いながらリビングに腰を下ろした瞬間は、心底ほっとしたものです。

「まあ、昼過ぎぐらいには通り過ぎるでしょう」とイグチさんが言い、出していただいたアイスコーヒーを飲みながら、テレビの台風情報に見入ります。

台風は、そろそろ鹿児島上陸かという状況で、そう考えるとやはりイグチさんの「台風強行突破作戦」は最善の手段だったのだと、その時われわれは確信したわけです。

するとユッキーさんが「ちょっとすみません」とごろり横になって、すぐに軽いいびきを立て始めます。その様子、災害時にニュース番組で映し出される、自宅から避難所に避難して不安な夜を過ごす人のように見えました。
なので、「まさに避難所の様相を呈してきたなーー」と、気持ちよさそうに寝ているユッキーさんを見ながら4人で笑い合います。

その様子を見たわたしも、ユッキーさんの隣でごろりとなって少し目を瞑ったのですが、なにやら起きている3人が盛り上がっているので目を開けると、イグチさんが「こっちこっち」と呼ぶので隣に座ります。

促されてテレビ画面に目をやると、前の日に北九州市で通りがかった某反社会勢力のアジトが映し出され、その活動の様子などが紹介されていました。イグチさんが録り貯めた、特選画像のようでした。

「なるほどなぁ」と感心して見ていると、続いて反社会勢力を脱退して出所後にうどん店を始めたという人たちの、ナレーションなしのドキュメンタリが流れてきました。
寝ていたはずのユッキーさんも起き出し、彼らのチャレンジに見入ります。料理すらまともにしたことがないという彼らの出店までの道のりは、なんとも微笑ましさすら感じさせるいい話でした。

◾️イグチさん邸でオドロキの古焼酎を呑む

そうこうしているうちに、少し前まで大荒れだった空が白み始めてきました。

「もう少し。。。ですかね」と言いつつ、イグチさんが焼酎の瓶を抱えてテーブルに並べ始めました。

そうか、先ほど「イグチさんの焼酎ストックも拝見したいですねー」と話したからでした。なにやらかにやら、もうすごい瓶がずらりと並べられ、続いて「避難所で酒盛り」状態です。

ものすごく貴重な焼酎たちを味見したころには、すっかり雨が上がっていました。
イクヤさん、ツッチさん、ユッキーさん、わたしの4人はイグチさんのお宅を出て、この日のホテル(残念ながら東横インは満室だったので、普通のビジネスホテルでした)に向かい、夕方まで土産などを買い求めて時間を過ごすことにしました。

レンタカーに乗り込むイクヤさんの手には「劇画プロレス地獄変」が、ユッキーさんの手には「日本の食生活全集(3) 聞き書 岩手の食事」が握られていました。どちらもイグチさんの蔵書の中からもらってきたもののようでした。

イクヤさんの方はともかく、ユッキーさんがいただいた本に書かれた内容が、ユッキーさんのお店のメニューにどう反映されるのか楽しみです。

さてさて、宮崎の空には、じりじりと照りつける太陽が姿を現しはじめていました。その日差しは半袖の腕に少し痛かったのですが、「これぞ台風一過だな」と実感できて嬉しかったです。
そして、この日差しに会いたくて九州に来たのかなと、道路の水がきらきら光るのを見ながら感じたものです。

(8/9つつづきます。)

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