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【3/9】三ヶ月ぶりの旅は名古屋! 大歓楽街の酒場をゆく「新栄の老舗酒場『一品料理 田分一(たけいち)』で絶品酒肴に舌鼓を打つ」

名東区本郷から名古屋駅まで地下鉄で移動したわたしは、馴染みのホテルチェーン「東横INN」にチェックインし、さっそく名古屋の街へ向かったのでした。


さて、名古屋中心部に移動し、実に実に久々となった「東横INN」にチェックインして、荷物の整理をしたらすぐさま街に繰り出します。いつの間にか「東横INN」もスマートチェックイン・チェックアウトが導入されており、かなり快適に宿泊手続きができるようになっていて、これはとても助かります。

夕方近くになってきましたが、いまだ日差し自体はものすごく強く、それがまあまあ北国の人間には堪えるので、街に出ると、建物の影を探し、日差しを避けながら移動するようにしたのですが、さすが名古屋は大都会、高い建物がたくさんあるので日陰も同様にそこかしこにあって助かります。

とはいえ、日傘があるともっといいんだろうなあと思いつつ道行く人を見ると、意外と名古屋の女性も日傘を差さずに歩いています。まだまだ暑さも日差しも真夏のそれと比べると大したことないということで、日傘の出番はないのかなあなどと考えつつ歩を進めます。

まず、名古屋の酒場といえば伏見駅近くにある「大甚 本店」へ足を運んでみます。ご存知のとおり日本有数の名酒場ですので、人で一杯なんだろうなと暖簾をくぐると、予想どおり席は95%くらい埋まっています。

ネットで調べておいたルールに従い、入り口付近で立って店員から声がかかるのを待ちますが、店内大混雑。席もほぼほぼ一杯だからでしょうか、忙しく接客をしている店員からまったく声がかからないので、「これは仕方ないよね」と、5分ほど待ってから諦めて店を後にします。

後から知ったのですが、4月28日から5月8日まで改装のため休業しており、再開直後ということもあって、通常よりも混んでいたようでした。まあ、時計の針は16時半を回っていて、開店時間の15時45分を大幅に過ぎていますから、完全に出遅れだったのでしょう。

最高の佇まい

さて、次に足を運んだのは新栄駅から歩いて10分強のところにある「一品料理 田分一(たけいち)」です。地味にネット検索で探し出した、地元民しか足を運ばないような酒場です。

ランチにお邪魔した「肴屋」もそうですが、こういう、街とともに歴史を歩んできた店こそが、旅したときに訪れたい酒場です。

17時から店を開けているようで、わたしは17時15分ごろに入店。「大甚 本店」から歩いてきたので、汗をかいて喉がからっからです。

素晴らしすぎる店内

暖簾をくぐって店内へ進むと、先客はおらず、70代半ばぐらいのご主人が迎えてくれます。入り口から手前の方のカウンター席に腰を下ろし、瓶ビールを注文するとグラスとキリンクラシックラガー中瓶が、「どうぞ」と目の前に丁寧に置かれます。

そして、一瞬でわたしは思いました。「これはまた、なんと素晴らしい酒場オレに出会ってしまったのだ」と。

煤けた壁のメニュー短冊、よく使い込まれ拭き込まれたカウンター、真っ白い清潔なカバーで包まれた座席、二段カウンターに並べられた季節の食材で作られた料理たち、新鮮な刺身が入った保冷ケース、そしてこれらをずっと保ち続け、客をもてなし続けているご主人。

わたしの胸は静かに、少しずつ、高揚していきます。名古屋初日の夜は、最高のスタートが切れそうでした。

真鯛刺し

胸の高鳴りを落ち着けるため、そして喉の渇きを癒すため、ぐびぐびとビールを呑んでいるわたしに、「料理、何を差し上げましょうか」と、ご主人が声をかけてきます。素晴らしいタイミング、スピード感です。酒場にはこういう店と客の阿吽の呼吸で声を掛け合えることが重要です。

「さて、どうしようか」と思いつつ席を立ち、奥に伸びた店内の、二段カウンターの上にずらり並んだ料理を見てまわり、わたしも迷わず時間をかけず、「鯛刺し、タケノコ煮、そして、、、えーと、これは鶏モツ煮ですかね。とりあえず、この三品でお願いします」と注文します。

ありがとうございます、とご主人が小さく頭を下げながら言い、小鉢に料理を盛り付けていきます。保冷ケースには、真鯛のほかにマグロとカンパチが用意されており、注文するとすぐに提供してくれました。

で、この真鯛が見てのとおり分厚く切られており、そして白身魚ながらしっかり脂乗りしていて絶品の味わいでした。地元の醤油なのでしょうか、ほんのりと甘い醤油との相性も完璧でした。

たまらずご主人に「すみません、日本酒をください」と声をかけます。壁の古くなって文字が薄くて読みにくい短冊の日本酒は、420円となっているように見えましたが、果たしてどんな酒が供されるのか楽しみでした。

こんな酒場で銘柄や呑み方を偉そうに指定するのは野暮なので、もう完全に店のペースで物事を進め、それに合わせて自分のペースを作ろうと考えました。

鶏モツ煮

ご主人が熱燗の準備を始める前に、タケノコ煮と鶏モツ煮が供されます。なお、それぞれの大鉢・大皿の料理には、特に説明書きもなく(もちろん値段もわからず)、詳しくはご主人に尋ねるほかありません。手元にメニューもないし、壁の短冊は煤けてほぼ読めなくなっているので、こういう酒場に慣れない人にとっては、慣れるまでは難易度が高いかもしれません。

タケノコ煮は味の染み具合が絶妙、鶏モツ煮はキンカン(卵巣)、ハツ(心臓)、レバー(肝臓)が一緒に甘辛く煮付けられており、酒肴としては最高級です。

ご主人がつけた燗酒が、これまたちょっと熱めでキレが冴え、全体的に少し甘めの料理の味付けと絶妙な組み合わせです。

カウンターほぼ全景

店は何年やっているのだろうか、ご主人が一人でカウンターに立っているのだろうか、日本酒の銘柄は何を使っているのだろうかなどなど、いろいろ聞きたいことはありますが、なんといっても入店してまだ10分です。

落ち着いて落ち着いて、なるべく平静になるようにしながら料理と酒を楽しみます。

見事なまでに煤けて色褪せた短冊
箸袋にも品格をおぼえます

さて、素晴らしい酒場、素晴らしい酒と肴に酔いしれ、さらに呑み喰い進めたいところですが、実は次の予定が入っていました。

昼に一緒に食事した知人と、栄で呑む約束をしていたのでした。わたし自身は夜も本郷で良かったのですが、「わざわざ名古屋まで来て、さすがにそれはないですよ」と強く言われたので(後から、彼自身が本郷ではなく栄で呑みたかったのだ、と聞かされたわけですが)、彼の主張を取り入れ、行ってみたかった店をリクエストして、予約を入れてもらっていたのです。

ということで、そろそろ移動しなければなりませんので会計をすると、2,500円ぐらいだったでしょうか。新栄の老舗銘酒場は、懐にも優しい止まり木のようでした。

(つづきます。)

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