乳房全摘・乳房再建に決めた理由
非浸潤性乳管がんが判明した段階から、主治医から「切ります」といわれていた私。正直、超早期だといわれていたので、切らずにホルモン療法など飲み薬で治療ができると安易に考えていました。
前立腺がんだった父は、ホルモン剤などの飲み薬と注射での治療で完治。超早期の私はなおさら手術はないだろうと高を括っていました。超早期とえいども、手術が第一選択になる。また、がんの種類、患者の性別、体質、体力、病状などの条件によって様々な治療が存在する。それが、がんという病なのかと変に納得してしまいました。
私の場合は、手術で病巣を取ることが完治を目指せる最善の策のようでした。それならば、病巣をさっさと取っていただこうと手術という治療方法にすぐさま同意しました。
このとき、私は病巣の部分だけを取り除く手術だと勝手に想像。この段階では、まだ、楽観的に治療を考えていました。
ところが
造影MRIの検査後、先生から「全摘」という単語が発せられます。さすがに動揺します。胸を失うかもしれないという現実を突きつけられたのですから、誰でだって動揺します。
先生からは全摘と同時に乳房を再建すれば喪失感は少なくなるし、綺麗な胸を最近は作れるよといわれても、やはり胸を失うことにかわりはありません。数日間、悩みに悩みました。私にとって失敗が許されない大きな選択でしたから…。
そして
私は以下の4つ理由から乳房を全摘し、再建をするという選択をしました。
①完治をしたい
乳がんという病を完全に治すことを目指すための根本的な治療があるなら、それをして欲しかったからです。
私は、現在、膠原病の疑いで大学病院で治療を受けています。自分の出ている症状を解決してくれる病院や医師を全国探しました。そしてやっと辿り着いた大学病院。しかし、そこで下されたことは、「申し訳ないけど、現代の医学でおはらんさんの病気を治してあげることができないです。せっかくこの病院に来てくれたのに。」と完治が目指せないことを告げられました。
患者としてはとても辛いことです。現在は、症状が悪化しなように、そして、本格的な病にならないようにと主治医がサポートしてくれています。そのおかげで、日常生活に問題なく今を過ごすことが出来ています。しかし、ひとたび症状が出るとその辛さや不安感は極まりないです。
ですから、病は、根本から治療し、完全に治すことがとても大切だということを実感しています。だからこそ、完治を目指せる望みがあるのなら、そのチャンスは活かしたいと強く思ったからです。
②リスクは可能な限り減らしたい
局所再発
私の身体を脅かす可能性を否定できません。もちろん、それを避けるために、部分切除の場合は、手術のあと、放射線治療を受けるということを先生から伝えられています。
一方、全摘の場合は、とくに非浸潤性乳管がんでは、局所再発をほぼないということ。患部をごっそり取ってしまっているので、理論的には転移もない。再発、転移ということを考えると、私的には全摘に軍配が上がりました。
持病の悪化
前述したように、私は、膠原病の疑いがあるため、症状がでないように大学病院での治療を受けています。ところが、『患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版』には、活動性の全身エリトマトーデスと強皮症については放射線治療を避ける旨が記載されていました
確定診断はついていませんが、この2つの膠原病が強く疑われている状態。ガイドラインの文言が非常に気になりました。膠原病の発症は、現在の私にとって、がん以上に恐怖だからです。
がんを治すために、放射線を受け、膠原病が発症するのは可能であれば避けたい。主治医にもこのことについて尋ねました。すると、治療を受ける病院内の放射線科の医師はもちろん、ご自身の知り合いの放射線科の医師にも意見を仰いでくださりました。
放射線科の医師たちは、疑いがあるなら放射線の治療は避けたいかもという意見だということを伝えてくれました。だとすると、必然的に私に残されたがん治療の選択肢は、乳房全摘ということになります。
③動物として欠損部分があるのは嫌
乳房を全て摘出するということで、一番の課題は自分の体が大きく変形してしまうということです。変形した自分の体を私が受け入れらるかという問題です。私は、欠損した自分の体を到底受け入れ難かっただろうと予測しました。
女性が乳房を失うということは、女性としてのアイデンティティやセクシャル面で非常に精神的苦痛を伴うということが様々な書籍に書かれていました。その問題を少しでも解決する策として、乳房の再建という治療が存在しているようです。
最近では自家組織での再建だけではなく人工インプラントでの再建でも保険が適用されています。それほど、女性にとって乳房を失うということは、精神的ダメージが大きいとういことでしょう。
MRI検査の後、先生から部分切除にするか全摘にするかは、私の場合、心情の問題が大きいと言われました。心情の問題。それこそが、乳がん患者にとって大きな課題なのです。
私は、摘出施術というものを2回受けています。しかし、2回とも今回のように深く悩むことはありませんでした。それは何故か。恐らく、外見上は何も変化がなかったからです。乳房摘出は、外見が変わるのです。これは、私にとって大きな違いです。
乳房は女性の象徴、確かにそうかもしれません。でも、私が引っかかっている問題は、それだけではありませんでした。もっと底の深い、女性としてだけでなく人間として、むしろ生物としての問題です。
動物として、明らかにわかる欠損があるモノは、弱者となってしまいます。弱肉強食の自然界では、圧倒なハンディキャップを抱えたことになります。
外見で人を判断してはいけない。人は外見ではなく中身が大切なんてよく言われます。でも、やっぱり外見は大事です。
乳房全摘は、女性としての自身よりも人としての自身を失いそうで怖かったです。
失った乳房を完全に取り戻すことができなくても、限りなく元の状態に戻すことができる再建という医療技術。動物界にはなくても、人間界にはある優れた技術。
私は、この恩恵を受けたいと強く思いました。乳房全摘をし、再建をしたところで、自分らしさを取り戻せるかどうかは疑問でしたが、それでも取り戻せるチャンスがあるのならそれに縋ってみようと思い再建を望みました。
このような思考で全摘再建という治療を選びました。私にとって、全摘再建が正解なのかはわかりません。しかし、数日間、考え抜いた結論です。
治療後は、この選択が正しかったときっと思うだろうという自信はありました。
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