エキスパンダーで飛行機の旅
エキスパンダーへの注水も完了し、あとは左胸の拡張を待つばかり。乳房再建の手術は3月です。
乳房再建は、お腹を切って、さらに全摘の際に切った創をもう一度開けて、お腹の脂肪を入れるというかなり工程の多い手術。
乳腺外科の主治医の先生や形成外科の先生は、全摘の時より痛くないという患者さんが多いというけど、身体にはとても負担がかかりそうです。
全摘の手術後の体力の回復に、私は約1ヶ月を要しました。再建の手術は、もっとかかりそうな予感。
旅好きの私としては、エキスパンダーへの注水が終わり、体力も回復した今が旅のチャンスのような気がします。再建の手術後は、またしばらく旅に出られそうにない感じがします。
それに、乳がんが発覚してから、心底晴れやかな気分になったことがありません。大好きな飛行機に乗って、がんのことを忘れたいとい気持ちがいっぱいでした。
しかし、ここで問題があります。エキスパンダーには、注水口の目安となる金属がくっついています。
磁気共鳴装置であるMRIでの検査は、禁止です。エキスパンダーを左胸に入れた際、主治医の先生からMRI禁止というカードを渡さています。そして、常に持ち歩いていました。
飛行機には乗る際、保安検査場では金属探知機での検査があります。エキスパンダーを入れていたら乗れないのかが心配となりました。
形成外科の先生に尋ねてみると、飛行機に乗る場合には、エキスパンダーが入っている旨の書類を書くので、それを持って行くといいと答えてくれました。
さっそく、その書類とやらを書いてもらいました。
■空港カウンターでのやりとり
搭乗予定の航空会社の受付カウンターで、搭乗手続きをしました。その際、医師からエキスパンダーという医療器具が入っている旨の書類を書いてもらっているということを伝えました。
航空会社と保安検査場のスタッフは会社が別なので、詳しい対応が分からないので、直接、保安検査場のスタッフに書類を見せてくださいとの対応でした。
航空会社では、搭乗する便のスタッフに、エキスパンダーという医療器具が身体に入っている乗客がいるということを伝えてくれるということでした。
■保安検査場で
空港カウンターのスタッフさんに言われた通り、保安検査場のスタッフの方に書類をみせます。
すると、荷物類は通常通りにエックス線を通す機械に流してくれました。私の身は、待機です。
書類を確認した係の方が、「医療器具装着の方です。女性でお願いします。」と保安員の方を呼びました。
すぐさま、女性の保安員の方が来て、私を検査する場所まで誘導してくれました。検査する場所といっても、人が通って検査する機械の脇を通って、荷物を受け取る場所のすぐ側に移動しただけです。
■エキスパンダーはまだ認知に乏しいみたい
検査は、女性のスタッフさんによるボディタッチでした。
その際、確認として「胸に入っているものは、ペイスメーカーですか。」と質問されました。もちろん、ペイスメーカーではにないので「いいえ、違います。エキスパンダーという胸を拡張するための器具です。」と私は答えました。
しかし、女性のスタッフさんは、はてな顔。そして、「胸を拡張する器具ってどんなものですか。」と聞かれました。
どうやら、ペイスメーカーほど認知されていない医療器具のようでした。
私は「胸に水風船のようなものが入っています。」と説明。
すると、スタッフの方がさらに質問。「その中には、どんな薬品が入っていますか。」と確認されました。もちろん、私は「生理食塩水です。」と答えました。
エキスパンダーに液体を注入する際、形成外科の先生が「それじゃ、生理食塩水を入れていくね。」と診察のたびに伝えてくれたことに、このときは感謝でした。
もし、エキスパンダーに入れている液体を知らなかったら、なかなか面倒なことになりそうな雰囲気がありました。
エキスパンダーの説明を終えたあとは、検査です。
最初に、「胸の付近も触りますが、痛いところとかありますか。」という気遣いの言葉をかけてくれました。「特に、痛みはないので大丈夫です。」と答えると、さっそくボディっタッチでの検査開始です。
金属探知器が鳴ってしまった時のボディタッチでの検査よりも、かなり細かく身体を触りっていきます。細かく検査しているにもかかわらず、検査はとってもスピーディー。あっという間です。
終始、和やかな雰囲気で検査は終わりました。
■飛行機で飛び立つ
保安検査場での検査も無事に終わり、あとは搭乗して空の旅を楽しむばかりです。
と、一抹の不安が頭をよぎります。
風船みたいに膨らんだエキスパンダーが、上空に行ったらポテトチップスの袋のようにパンパンにふくらんでしまうのではという不安です。
もちろん、膨らむはずもなく、飛行中はいつもと変わりなく快適に過ごすことができました。
エキスパンダーを入れての空の旅。きっと、最初で最後になるであろう貴重な体験をすることができました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?