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左胸を失う前にやりたかったこと3つ

私は、手術によって左胸を失う前に、やっておきたいことがありました。告知日を含めて入院する日までの日数は22日。それは、私が自分の左胸と過ごせる期間を意味しています。だから、手術前に、癌封じのお寺参りと温泉と海に行きました。

告知日から入院までの22日間には、検査やインフォーム・ドコンセントがあったり、入院するにあたりやっておくべき仕事や家事、そして入院準備とやることがいっぱい。それでも、強引に予定を詰め込みました。それほど、3つのことは絶対にやっておきたかったのです。

①困った時の神頼み

乳房を失ってまで治療するのだから、必ずガンをやっつけたい。主治医の腕を信じてはいます。それでも、神様や仏様にも手助けをしてもらいたい。だから、ご利益を授かりにお寺をお参りしました。

◆長野県最強パワースポット「善光寺」

長野県で育った私にとって、善光寺は、折に触れて真っ先にお参りするお寺です。今回も、まずはじめにお参りしたお寺は、善光寺です。

善光寺の本堂前にある大香炉。大香炉から出るお線香の煙を身に焚き染めると、無病息災・病気平癒にご利益があると幼い頃から聞かされていました。左胸を中心に身体全体に、たっぷりと身体につけ、病気平癒することを願いました。

◆我が家にとって実績ありの「世界平和聖観世音菩薩」

長野県の山之内町には、「世界平和聖観世音菩薩」と観音様がおられます。山之内町は、長野県を代表する湯田中温泉のある町です。

数年前、湯田中温泉のお湯を楽しみに来た際、たまたま出会ったのが「世界平和聖観世音菩薩」様です。こちらの観音様のことを何も知らずにお参りをしたのですが、境内にある幟に”ガン封じ”と書かれたいのです。

実は、その頃、父がガンを患っていました。その幟を見た私の家族は、これは何かのご縁だと強く思い、父のガンを封じてもらえるよう手を合わせたのです。そして、5年後。父は完治の宣告を医師から受けました。

きっと、この観音様のおかげです。そんな思いから、私も乳がんの告知を受けてからずっと「世界平和聖観世音菩薩」に手を合わせたいと思っていたのです。

◆”ガン封じの寺”として全国的に知られている「無量寺」

無量寺は、愛知県の蒲郡市にあるお寺です。平安時代に創建された歴史あるお寺で、昔から、魔除け・ガン・難病封じのお寺として知られているそうです。

私は知らなかったのですが、家族が探してくれたお寺です。こういう時に、家族の優しさを感じるものです。

話しは戻って、無量寺は、ガンを封じてくれるご利益があると全国から沢山の方々が訪れようです。その証拠に、境内には、ガン封じの絵馬がぎっしりと掛けられていました。私も、絵馬を書きました。お寺の方のお話だと、絵馬はちゃんと炊き上げてくれるということです。ご利益がありそうです嬉しかったです。

②温泉

私は、温泉が大好きです。長野県内の温泉はもちろん、全国の温泉によく行っていました。源泉かけ流しのお湯に浸かるのが、ほんとうに好き。

ツルツルのお湯、サラサラのお湯、アワアワのお湯など。各地の温泉で、色んな泉質のお湯に浸かって温泉を楽しみながら、リラックスするのが幸せでした。露天風呂で、景色を楽しみながらの温泉も癒されて大好きでした。

でも、乳房を失ったら、私は温泉に行く勇気がありません。自分自身の身体の傷や変形した身体を晒すのは辛い。

人はそれほど他人のことは見ていないというけれど、違和感があるものは見てみぬふりをするだけで、やっぱり見ていると私は思うからです。私は、乳房の再建を希望していますが、再建をしたからといって、必ずしも以前のように温泉に行けるのかどうかは疑問です。

だから、私は、自前の胸があるうちに、温泉を存分に楽しみかったのです。

③海

海も温泉と同じ理由です。年齢的に、もう海遊びはいいでしょといわれるかもしれませんが、私は海が好き。海を見たら泳ぎたくなります。素敵な水着を見たら着てみたいとも思います。

乳房を再建しても、健側の胸と同じようにはなりません。水着を来た時に、左右のアンバランスがあるかもしれない。海中での胸の感じが今までとは違ってくるかもしれません。どんな胸が作り上げられるのかはわかりませんが、最後に自前の胸でのびのびと海で過ごしたかったのです。

乳房を失う前と後では、私の価値観がきっと大きく変わるでしょう。それは、乳房再建をししてもです。

元の身体でなくなってしまっても、温泉や海に以前と同じように行きたくなる価値観を築き上げられれば良いです。しかし、築き上げることが出来なかった場合、入院前に行った温泉や海が、私にとっての最後の温泉や海の思い出となります。だから、自前の胸があるうちにやっておきたと思ったのです。




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