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モータースポーツの取材で世界を駆け巡るようになって30年が過ぎた。レースの合間にいろんなところに出かける。今回は何年か前に書いた旅の話。

 タイトル「何度でも訪れたい場所」

 ヨーロッパ大陸の最西南端、ポルトガルのサグレスに来ている。今年になって2度目となる。先週、ポルティマオでスーパーバイクが開催された。レースウイークはサーキットに近いラゴスに宿泊したのだが、月曜日の朝、約40km離れたサグレスへと移動してきた。一年に2度も来られるなんて、なんて幸せ者なんだろうと思った。

 サグレスは、沢木耕太郎さんの「深夜特急」で、ヨーロッパ大陸の終着点として登場する。ユーラシア大陸をバスで移動するという旅を続けてきた沢木さん。ヨーロッパ大陸の端っこのサグレスにたどり着いて「もう、この旅を終わりにしよう」と思ったという、そんな場所である。

 サグレスを初めて訪れたのは、2001年のことだった。以来、こられなかった時期もあるが、年に一度は来るようにしている。そして、来る度に、海が見える丘の上に建つホテルに泊まる。いくら観光地だとはいっても、ポルトガルの田舎町としてはちょっと料金が高い。その理由は、泊まってみるとすぐにわかるのだが、部屋から見える景色が実に素晴らしいのだ。

 もう何回も泊まっているホテルなので、チェックインのときに、「えっと、西側の2階の・・・」と部屋まで指定する。人気のあるホテルでいつも満室のことが多いのだが、毎年のように訪れる日本人の僕には結構やさしくて、毎回リクエストに応えて、西側の2階の海の見える部屋にしてくれる。

 今日は午後の早い時間にホテルに到着したので、日の入りと翌朝の日の出の時間をチェック。日の入りは、午後7時半。日の出は、午前7時半だった。

 この数週間、ドイツ→オランダ→イタリア→ポルトガルと移動してきた。その間にクルマで走った距離は約5000kmに及ぶ。さすがに疲れてるなあと海を見ながらベランダでウトウト。最高に気持ちが良かった。元気が出たところで、クルマに乗って夕陽の撮影に出かけた。

 こんな生活をしていると、寄り道してでも行ってみたいと思う場所ができる。サグレスはそのひとつなのだが、来る度に来て良かったなあとつくづく思うのだ。

 思えば、「深夜特急」という本は、僕の人生に大きな影響を与えた。この本の中でサグレスは、沢木さんにとって旅の終着点になった場所だが、僕にとってのサグレスは、いまの仕事を始める出発点になったと言ってもいいからだ。この本を読み終えたときに僕は、こんな素晴らしい旅をしてみたい、こんな素晴らしい本を書いてみたいと思ったのだ。

 この写真は、サグレスの街から海に沿って北に少しだけ走った断崖絶壁の端っこから撮影した、ヨーロッパ最西南端のサン・ヴィセンテ岬と灯台である。明日の朝は早起きして、部屋のベランダから日の出を撮らなくちゃと思っているのだ。


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沢木耕太郎さんの「深夜特急」。大好きな本。僕の人生に大きな影響を与えた。

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