【関係人口は人を幸せにするか】「田園回帰する若者」の深層心理を読み解く〈前編〉
関係人口は人を幸せにするか?
みなさんは、「関係人口」をご存知だろうか?都会に住みながら地方とゆるくつながる「観光以上移住未満」の人たちの総称だ。地方創生の考え方として、じわじわと市民権を獲得している。今年に入り、ついに政府も関係人口を政策支援することを提言した。2018年の流行語といってもいいだろう。
「どうせ、ブームでしょ?」
という声も聞く。ブームとは何か。「一過性で終わるもの」だ。では、一過性で終わらないものとは何か。それはきっと「人を幸せにするもの」だ。だとすれば我々は、『人を幸せにする関係人口』について論じるべきだろう。
この記事では、『人を幸せにする関係人口』について、私たちTABETAIが活動を行う農業の分野で考えてみたい。
人を幸せにする関係人口
「人を幸せにする関係人口」といってもボヤっとしているので、もう少し具体的にしたい。「幸せ」なのだから、都市の人(若者)の願いと、地方の人(農家)の願いがうまくマッチしている状態のはずだ。
まず、都市の若者は、農村に何を求めているのか。
正直言って、若者の深層心理は、政策提言を行う大人には「読めない」。したがって、私たち自身が、「今を生きる若者はこういうニーズを持って、農村に向かっているんだ」ということを実感にもとづいて明らかする必要がある。
次に、農村は、都市の若者に何を求めているのか。
若者側が求めているものが明らかになったところで、農村側が求めているものとマッチングしなければ意味がない。そこで、私たち自身が若者のニーズに自覚的になった上で、実際に農家さんの意見を聞かせていただき、農村ごとのニーズを検証した。
以上の2点を考察することにより、「若者と農村のうまいマッチングとは?」を明らかにし、『人を幸せにする関係人口』をえがくのがこの記事のゴールである。
熊本県多良木町
私たちがフィールドワークで訪れたのは、熊本県の多良木町(たらぎまち)。同じ多良木町でも、文化のことなる2つのブロックに訪れた。それぞれどのようなブロックか。
まず、球磨川(くまがわ)の恵みを活かし大規模な稲作をおこなう「平野部」へ。
次に、古くから狩猟文化のある「山間部」として槻木集落(つきぎ)を訪れた。
2地域は、「人口減少」という点では共通している。多良木町全体は昭和20年代に2万人、槻木集落は昭和30年代に1,200人とそれぞれピークを迎えたが、現在は町全体で半分以下に減少【9,964人】し、槻木集落にいたっては10分の1【122人】に減少している(平成29年3月1日現在、熊本県多良木町役場「世帯数及び人口」より)。
「都市の若者は、農村に何を求めているのか?」
若者が農村を求めている。これは昨今言われていることだ。農村への移住情報を提供するふるさと回帰支援センターによれば、2017年、若年層を中心に移住相談が寄せられ、合計件数が開設以来初めて3万件を超えたという。10年前の13倍となった数字の裏には、どのような若者の心理があるのだろうか。嵩和雄さん(センター副事務局長)は次のように分析している。
農村回帰の根底には、「地域をなんとかしたい」という欲求とともに「自分自身が助けられたい」という若者の欲求があるのだと嵩さんは指摘する。地域の役に立ちたいという欲求はわかる気もするが、「自分自身が助けられたい」とはどういうことか。
失われた20年に生まれた私たちは、「自分とは何か」という問いに直面して生きる世代だ。「士農工商」というかたいライフコースがあった時代、「いい大学→いい会社→幸せな人生」というやわらかいライフコースがあった時代を経て、今日は、理想的なライフコースのない時代である。自分の存在の根っこが心もとなく、漠然とした不安を感じている。
そういう意味では、バックパックで海外に出る若者も、ジャージで農村に通う若者も、同じ気持ちかもしれない。都市で見つからない「自分」を、海外や農村に探しにいくのであり、自分の存在を支えてくれる居場所(コミュニティ)を見つけにいくのである。
つまり、若者がよく言う「地域の役に立ちたい」は、「私の役(生きる意味)を与えてください」と同じ意味なのだ。このような若者のニーズを押さえた上で、熊本県多良木町というフィールドを訪れ、農村の側が「都市の若者に何を求めているのか」をインタビューした。
【後編につづく】
※この記事は2018年6月に作成されたものです
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