ルーティン中の沈黙脳内多弁

ここ4〜5年ルーティン動画が人気とのこと。いろんなことを知らないまま過ごしている私でさえ、モーニングルーティン、ナイトルーティンなどがあることを知っている。
実際にYoutubeでルーティン動画を見たのは、13:51尺のローランドのモーニングルーティン | Morning Routine of ROLAND 。これは2020年3月20日にアップされ2022年9月現在1千万回再生に迫る勢いで914万回再生されている大人気動画で、確かに見応えがあった。
開始1:23、洗面所の白い戸棚から白く細長い包みを取り出すローランドに「それ何ですか?」と視聴者目線で尋ねるスタッフに対し、「これ歯ブラシです 使い捨てなんで」と即答。体型を確認するために毎日同じものを着用しているという黒Tシャツに黒い7分パンツ、おろした金髪スタイルで、使い捨てを使用している理由として「感覚的に前の日になめたキャンディ〜を次の日またなめるのって嫌じゃないですか?」と続ける。う〜ん、納得と違和感が絶妙に入り混じる比喩。すぐに惹き込まれる。これは見てしまう。
ローランドの場合はルーティンでなくとも惹きつけられる可能性があるけれど、〝他人が何をしているのか?〟を定点観察的な視点で眺めるルーティン動画はどこか覗き見的で、有名人に限らず面白いコンテンツなんだろう。

2018年に頭が断線した私は、水を飲む、少し食べる、寝る、起きている時間はずっと無言でネット麻雀とネット将棋をプレイ、それ以外、無(む)! というルーティンを約3年続けていた。このルーティン動画があったとして、どんな物好きがいたとしても視聴回数は伸びない。当初、私にこの最低のルーティンから抜けてほしいと願った家の者たちも、あまりの継続にやがて絶望したようで、そのうち私を母親とかそういう存在ではなく、ただ生きている人という存在として扱い、距離を置くようになっていった。責める気持ちは起こらない。可能なら一刻も早く脱するべきだっただろう。しかし私は意思では動けず、延々何もできなかった。
がしかし、2021年の11月になぜか食事を作れるようになるという変化が訪れ、いい意味でドミノが倒れるように小さな変化がパタパタ起き始めた。ずっと無言だった私は、頭の中でずいぶんとおしゃべりになった。今2022年、9月現在のモーニングルーティンと、合間の多弁をお知らせしてみたい。

起床は5時〜6時半、目覚ましなしで起きる。22歳の時に西荻窪にあるオーガニック食堂で1年バイトしていた...ぶりにwebで見つけた軽作業の短期バイトを始めたので、バイト現場へ向かうため7:40には家を出発。家から徒歩3分のバス停からバスに約8分乗車し駅へ向かう。駅前のバス停から駅が少し離れており、3分ほどの移動はなんとなく早歩き。京王線の最寄り駅には特急が止まる。駅の下りホームでレッドブルの巨峰味210円をSuicaで購入。特急下り電車に乗車、空いていて100%座れる。レッドブル巨峰味を補給しながら、出勤時間帯が近い友達の彼氏(親切で優しい)にsmsメールし朝の簡単な挨拶を交わす。私「おはようございます(太陽の絵文字)」、友達の彼氏「今日も無理せず頑張りましょう」、私「ありがとう! 頑張る。Nさんも無理せず〜」内容はほとんど毎日同じなのに相手を励ましたり、励まされたりするメールを交わすと、少し元気が出る。そして高幡不動駅で下車し、多摩モノレールに乗り換え。上北台方面行き多摩モノレールも空いていて100%座れる。最後列の席が空いていたら最後列の席に座って、レールをまたぐ型=跨座型(こざがた)のモノレールの走行軌道をじっと見る。ゆっくり進むジェットコースター、そんなものはないが、まっすぐ、やがてカーブ、車両が進んだ道筋が遮られず線で見える、この不思議な視界を他では何で味わえるのだろうか。楽しい。

とはいえ3分くらいでレール凝視には飽き。次は『東京郊外』ホンマタカシなフィルターで風景を眺める。モノレールの沿線に住んだことがないので、都市や緑の中、空中を進むような絵の物珍しさが、1週間くらいではまだ消えない。過ぎていくIKEA、ららぽーと、団地、全てを作りものみたいだな、まるで温度がないように見えるこのあたりの街にも人々の暮らしは...と耽っていると、降車駅に着いてしまう。え、もう!?もっと乗っていたかったのに〜(もっと耽っていたかったのに)と毎日思う。約20分があっちゅーま。ホンマタカシモードは朝から孤独な人間を酔わせる。

降車し、駅の通路を足早に突っ切る。駅直結のマクドナルドの垂れ幕の期間限定すき焼き月見バーガーを必ず一瞥し通過。きっと期待ほどは美味しくないから食べないけど目で食べる。駅から外に出ると、ロータリーをはさんでモスバーガーがある。9時オープンで、店員さんがガラス窓を拭いたりしている。お客がまだ誰もいない、もしくは先客1名くらいの静かなモスに入店し、アイスコーヒー240円を購入。「テイクアウトも出来るように、プラカップでお願いします」と伝えると、「ガムシロップとミルクどうされますか?」と質問され、「ガムシロップお願いします」と返事したら、「入れましょうか?」と言われ、入れるサービスあるんか?と内心思いながら、「じゃ、お願いします」と素直にそのサービスを受けることにしたら、ガムシロップとミルクと両方入れられて「ストローも差しておきますか?」って畳み掛けてきたので、「じゃ、お願いします」とアイスコーヒーにまつわる全てのサービスを享受しておく。もう店員というよりお母さんだし。この過剰を嫌がる人もいるかもしれないが、私にはモスが正解。

駅前からバイト先までの無料送迎バンが来るまでモス前で待機。9:20ごろバンが来ると、ほんの2〜3人がバンに乗り込む。9時始業の労働者に合わせた送迎車だともっと人は多いのだろう。乗車時、運転手さんに「おはようございます」と、大きめはっきりめの声でみんなが挨拶する。いい感じ。ふと、そういえば前に書いていた私のブログってどんな文章を書いていたっけと思い、自分の過去ブログをブックマークしていない新しいスマホでGoogle検索窓に「ばばかよ」と打ち込んだ。すると「ばばかよ 現在」「ばばかよ 離婚」と勝手に出てきた。なんと、誰かが私を検索してくれている。ありがたいと思った、という今この瞬間を多弁日記に記す意味もあるのかもしれない。

〝車内での飲食はお控えください〟の張り紙を横目に無視してそっとコーヒーを飲む。運転手さんは気付いていないのではなく大目にみてくれていると思うから、こぼすまいとだけ気をつけ、バイト先までの約20分、じっくりまた考えごとを始める。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?